新プロジェクト ④

テーマ:

電装系は1PUなのでスイッチもなくシンプルそのもの。なのでピックアップのリード線もジャックに伸びる線もヴィンテージスタイルのクロスワイヤーに交換して結線しました。

プレートを閉じると、その特異な配置が明らかとなります。

ピックガードも装着し…

カップ型ジャックプレートも装着

サドルの位置に注目してください。余裕ができてノーマルなテレよりオクターブ調整の可動範囲が広くなっています。そしてサドルがリアピックアップに近づいた分、よりトレブリーな音色になっています。

 

実はこのテレキャスター

正確にはまだ「テレキャスター」という名称も無い頃の製品ですが、その2ndプロトタイプとされているギターです。最初のプロトタイプは先日紹介した通称「スネークヘッド」で、次に製作されたのがコレで、初の片側6連ペグヘッド採用のプロトタイプです。

現在明らかになっているテレの歴史では、1950年のディーラー向けチラシに掲載されている黒い「エスクワイア」が最初の公式なお披露目であったとされています。ということは、このプロトタイプは「スネークヘッド」共々1940年代末の製作と考えられ、日本にはまだあちこち空襲による焼け野原が残っていたような時代です。

 

今回私がレプリカした2ndプロトタイプの現物は、FENDER本社ではなく個人所有のようであまり知られてはおらず、FENDERはおろか個人製作家からも復刻されていません。雑誌の記事によると、現オーナーはレオ・フェンダーの右腕として後年まで行動を共にしたジョージ・フラートンから受け取ったそうで、フラートン自身も昔この楽器を実際にプレイしていたミュージシャンの妻から受け取ったとされており、それまで40年近くベッドの下に置いたままになっていたそうです。

あくまで技術屋であって自らは演奏しなかったレオは、製品開発に当たってLA界隈のミュージシャン達に試作品を現場で使ってもらい、その意見を製品開発にフィードバックしていたことが知られています。おそらくこのギターも、そんな試作品の中の1本だったと思われます。

 

雑誌では、スネークヘッドに続く40年代末の2ndプロトタイプと紹介されており、伝統的な3:3ペグ配置をあらためて、初めて6連ペグヘッドを採用したモデルと説明されています。

スネークヘッドと異なるヘッドデザインに加えて、コントロールの配置が大きく変更されており、そのプレートには、ほぼ同時期に開発が進められていたOPBのプレートが使われています。

いや、むしろOPBの発表が1953年と後で、少し開きがあるところから、この2ndプロトのデザインがほぼ決定して部品の発注がなされたものの、土壇場でトーンセレクターを含む現行のコントロール配置に変更になり、不要になったプレートをOPBに流用したのではないかと私は推測します。

このプレートの形状をよく見ると、尖った側はボディーエッジに沿うようにデザインされているように見え、OPBではこんな形状にする必然性がないように思われます。

現在では詳細は不明ですが、ストラトキャスターも最終的な仕様が確定して最初のロットが工場から出てきた時点でシンクロブリッジに重大な欠陥が発見され、急遽仕様変更の後に出荷されたことが知られています。それにミュージックランダーに代表されるような余剰パーツの他モデルへの流用も、FENDER社ではよくあることです。

 

弾いてみると、思い切りコードストロークやカッティングをしても干渉しない点では弾き易く感じます。全ての人が今のテレの形をテレとして認識してきたので、この配置には違和感を覚えますが、これはこれでアリかなとも思います。ちなみに判断に迷いましたが上がボリュームで下がトーンにしました。

 

それから研究・製作の過程で不可解な点もいくつか散見されるので、ここで私見を述べておきたいと思います。

 

まずはストリングガイド

2ndプロトタイプの画像を拡大すると、丸ボタン型ストリングガイドではなく、1956年に採用された羽根型ストリングガイドがマイナスネジで止めてあります。しかし最初期のエスクワイアを含めて、ブロードキャスターとして出荷された初期のロットは、パインボディー、NOトラスロッドネック、NOストリングガイドとされており、その後NOトラスロッドネックが回収されてトラスロッド入りネックに交換された際にストリングガイドも一緒に追加されたらしいです。

 

実際、左ページ下にあるジョイントプレート付近の画像を見ると、ネック裏にはスカンクストライプが確認できます。これはオリジナルのNOトラスロッドネックではなく、50年代初頭に交換されたワンピースネックか、他のギターの写真が紛れ込んだ可能性があります。

羽根型ストリングガイドについては正直分かりません。羽根型は56年に入ってからの仕様変更ですが、拡大するとマイナスネジで止められており、その頃にはネジは全てプラスになっているからです。

また、ワンピースネックについても、スカンクストライプはあるのに(正面画像では)ヘッド側には通称「ブラウンエッグ」と呼ばれるプラグがありません

ロッドを仕込む工程に違いがあるのかもしれませんが、やはりジョイントプレート付近の画像は別のギターの画像が紛れ込んだ物という気がします。というのは、横にある解説文が片側6連ペグに関する説明文になっていて画像とマッチしていません。編集が変です!!

大きい画像ではブラウンエッグが無いことに加え、スネークヘッドのペグと同じプラスチックつまみなので、これがオリジナルのNOトラスロッドネックくさいですね。これに56年以降にストリングガイドを付けた可能性が高いです。

 

とにかくこのギターは個人所有のせいでテレの歴史本の類でも取り上げられることがなく、鮮明な画像もないのでこれ以上のことは分からないです。

こういう文化遺産は製造元のFENDER社に寄贈して、カスタムショップで詳細な分析と復刻を願います。

・・・いや、復刻はいりません。私がCUSTOMネタに使いますから・・・てへぺろ

 

【ヤフーBOX公開画像】

https://box.yahoo.co.jp/guest/viewer?sid=box-l-lginqtc7pcaftckpulsaiy3toe-1001&uniqid=5ca92392-d8ce-44d1-867a-15a8bbc669b1