うっかり生地着色前に行ったネックのフィッティング作業を飛ばしていました
20本ほどあるテレネックの在庫の中から、このボディーにぴったり合う物を選択し、なおかつジョイント部を微調整して完璧なフィッティングを目指します。
【わずかな隙間も開かないようにキッチリ調整します】
さらに今回のテレには、通常のテレとは異なる新機軸を盛り込んでいます。それは「つば無し」22フレットネックの採用です。
FENDERオリジナルは言わずもがなの21フレットネックですが、中国製ギターの多くは、ネックジョイント部のピックガードのフィッティングの雑さを隠す目的だと思いますが、つば出し22フレットを採用しています。本来ここをキッチリ仕上げるには細かい微調整を繰り返す必要がありますが、工作機械から上がってきたパーツをネジ止めする以上のことはやらない大量生産品は、そういった職人仕事とは無縁です。
つば出し22フレットネック、古くはブラッド・ギルスが赤いSSHストラトに指板を追加して22フレットにしていましたが、日本人クラフトマンが製作したスティーブ・ルカサーの赤いストラトに導入したのがつば出し22フレットの元祖だとされています。
今回のネックはそれとも違い、「つば無し」の22フレットネックです。これは指板だけではなくてネック全長が22フレットになっているもので、国産では80年前後フェルナンデスのfanctionシリーズなども採用していたものです(プレシジョン・ジャズベースも1フレット多い21フレット)。
(22フレットの)レスポールで演奏された曲をストラトで無理なく弾くことができることが売りでしたが、ベースの場合はブリッジの搭載位置が1cm近くピックアップに接近することになり、ジャズベースの場合は特にリアピックアップの音が70年代ジャズベよりもさらに硬質になる傾向があります。
私はテレキャスターにこそ、この「つば無し」22フレットネックの導入が有効と考えており、メーカーに関係なく「つば無し」22フレットネックの出物があれば多少値が張っても入手しておくことにしています。理由は以前記事にしたことがありますが、ノーマルテレのブリッジを見ると、5・6弦サドルはオクターブ調整後、ほぼスプリングの限界までネジを締め上げた状態になるのが常で、バックローディングの場合はテンションがきつめになります。プレベやジャズベの場合はブリッジプレートの位置を若干後方にずらすことでテンションの調整をしているプレイヤーもいますが、バックローディングブリッジのテレはそういう訳にもいきません。
そこで「つば無し」22フレットネックの出番ということになるのですが、これを組み合わせることでサドルの位置に余裕を持たせ、オクターブの調整範囲を広げることが可能になるのです。
さらに副産物として、サドルがリアピックアップに近づくことで先のジャズベのように、よりトレブリーな音色にシフトすることになります。
それから、もう何度も取り上げたので画像は省略しますが、ボディーとネック双方のネジ穴を一度埋めてから再度、垂直ドリルガイドを用いて高精度で組み直します。面倒でもここで手を抜くと、どんなに見た目が良くても駄作となってしまいます。
垂直ドリルガイドを使い、まずはブリッジ取りつけ用のネジ穴を開けますが、深さはネジ全長よりやや浅くなる位置に目印のテープを巻き、余計な空気が入らないようにします。
さらにネジ穴には、滑りを良くし、錆の発生を防ぐためのカーワックスを少量封入します。
以前記事にしたように、誰が担当するか分かりませんが、数十年後にメンテナンスする人のためです。
それから、同じく垂直ドリルガイドを用い、弦裏通し用の穴を正確な位置に開けます。
【まずは貫通させる3mmからスタート】
一度に広い穴を開けようとすると木目の影響でドリルビットの先端が流れ、位置がずれるので、面倒でも少しずつビット径を大きくしながらブッシュ径に近づけていきます。
今回使用するハードウェアーを用意します。
ブラスサドルを装備したオーソドックスなテレキャスター用ブリッジと・・・
こちらは今回採用するコントロールプレート
分かる人はひと目で分かると思いますが、これはOPB(オリジナルプレシジョンベース)用のコントロールプレートです
【ブリッジ共々、軽くエイジド加工を施しておきます】
いったい何を作ろうとしているのか・・・次第に明かになっていきます