サビだらけに見えたジャックですが、実を言うと3種類のコンパウンドを使って磨いてみた結果、問題なく音が出ました
・・・とはいえ高価なパーツではないので、先を見越してこの際交換することにしましょう。
POTやスイッチもほとんどガリがありません。そもそもフレットにも減りが見られず、40年の間ほとんど弾かれることがなかったように思います。
【修理や改造の痕跡もありません】
ただし、40年という時間の流れは、見えない所でこのベースを蝕んでいました
このブリッジ、弦を支えるサドル部分は削り出しの金属ではなく、なんと薄いアルミ板のプレス加工品でした
これではまともなサスティンは得られなかったはずですが、この時代ではまだベースにサスティンは必要とされていなかった60年代の思想が生きていたのでしょう(60年代のベースにはミュート機構なんてついてました)。
右側の高さ調整機構はボルトとベースプレートがサビでくっついて回りませんでした
その上ベースプレートをボディーに固定している5本のネジのうち、左側の2本はあっさり折れました 回った3本を見ても先の方までサビが回っているので、2本で済んで良かったと考えましょう。古いGRECOやTOKAIでも何度もネジ折れの経験はあります。
傷口を広げずに折れたネジ先を取り出すのは難しい作業ですが、順を追って説明しましょう
ネジ径は3.5mmほどありますが、まずはボール盤に1.5mm径のかなり細い鉄鋼用ビットを装着し、回転数を最大に上げて折れたネジの中央にゆっくり当てて時間をかけて貫通させます。
ハンドドリルだとビットを中央に保つことができず、必ず外れて失敗します。また、強く抑えつけても外れるどころかビットを折ることになります
1.5mmが貫通したら、あとはハンドドリルでもOKです。ビットの径を2.0⇒2.2⇒2.5と徐々に大きくし、ネジの金属を全てかき出してしまいます。
傷口を広げることなく、木くずではなく、金属粉が表面に吹き出してくるようであれば万事上手くいっている証拠です。最後は穴に強力磁石をくっつけて、金属粉を吸いつけてください。
運がよければ早い段階でビットの先に穴の開いたネジ先がくっついた状態でゴソっと取れます。
この2本を取り出すのに、なんだかんだで1時間以上かかってしまいました
ネックジョイントネジは、やけに短い物が使われていますが、これはジョイント部の構造を見ればこれしか使えないという理屈が分かります。ピックアップの裏側に当たってしまうのです
【薄いネックポケットにはクラックが入ってしまっています】
ネックエンドギリギリの位置にフロントピックアップがあるせいで、ネック側のテノンがとても薄く、同じように薄いネックポケットと合わせた長さのネジしか使えないのです。
これは、本物のGINSONレスポールJrダブルカッタウェイ(※ギター)も同じ問題を抱えており、1960年のモデルチェンジの際、フロントピックアップの位置がリア側に移動させられています
【左が初期型で右が後期型】
ネックジョイント部の強度を増すための設計変更だと思いますが、おかげでフロントとリアの音色の差は小さくなってしまったと思われます。
ちなみにブライアン・メイのレッドスペシャルも、ショートスケールなのに24フレットと欲張り、その上3ピックアップという強欲の故、リアPUはブリッジにくっつき、フロントPUはネックエンドにくっつくというお粗末なルックスになっています。しかしブライアンの立派なところは、これではジョイント部の強度が足りないと気付き、ネック側のテノンをボディー中央まで伸ばす超ディープジョイント構造とし、それをさらにボルト止めしているところです。やはり彼は非凡ですね