私のカスタムは、自分が趣味でやる分にはいくら失敗しても自己責任ですし、ダメにしてしまった楽器はゴメンナサイして使える部品だけ別なコンポーネントに再利用すればいいだけです。そういう訳で、とても人様の楽器を弄る資格などないのですが、そんな素人の私になぜかカスタムの相談ごとが絶えません
できればやりたくないのですが、頼まれ事を断わるのが苦手な私は、安物に限っては稀にお引き受けすることがあります。あくまで高級品はお断わり プロに頼んでください
逆に2000~3000円で落札できるCHINA製ギターを、プロ工房に持ち込んでお金をかけてフルカスタムという人はいないでしょうし、無茶なカスタムを依頼すると、プロの職人には眉をひそめるだけで取り合ってもらえないことも容易に想像できます
たとえば…私の作品でいえば、先日紹介した「なんちゃってゼマイティス」
SELDERのテレボディーとMAISONのレスポールネックをプロ工房に持ち込んで、
「これを合体させてゼマイティス風に組んでください!」
と言ってみたとしましょう
プロのリペアマンさんは、しばし沈黙のあと、
「おっしゃっている事の意味がよく分かりませんが…」
となるでしょうね
…という訳で、新しいプロジェクトの開始です。
今回依頼を受けたのは、これまで無数の楽器を見てきた私も初めて見る逸品です
DIAMOND製のレスポールJr型ベース
「DIAMOND」とは後の「ARIA PROⅡ」へと発展する荒井貿易のブランドで、「ARIA DIAMOND」という表記が一般的ですが、エレキのヘッドは面積が小さいのでARIAかDIAMONDのどちらか一方だけというのがよく見る仕様です。私はARIA表記のみの12弦アコギを昔持っていました。「貿易」の名の通り60年代から海外への輸出も手がけていたブランドです。
このベースはジョイントプレートのシリアル刻印が「A761067」なのでおそらく1976年製でしょう。
【古い国産によく見られる、ひと回り小さなプレートです】
知り合いから譲り受けた時点でまったく音が出ず、使用できていないそうです。
【それもそのはず、完全にサビでいっちゃってます】
まあ、私の場合は新品だろうがジャンク品だろうが、音出し確認をする前に全てバラバラにしてしまうので音が出ようが出まいが関係ありません。特に今回は「木」にしか用はなさそうですし…
依頼されたカスタム内容は
①フロントピックアップをEB用の大きなハムバッカーに換装
【これは見た目もレトロでパワーもあまりありません】
②リアピックアップは何にするか有無も含めて相談
③チューナーを三つ葉タイプに換装
【ヘッド面積が狭いのでクルーソンのベースプレートは入りそうにありません】
④ブリッジを現代的なヘビーデューティーな物に換装
【オクターブ調整すらできないオリジナル:バラすともっとショボかった】
⑤電装系を新しい物に一新
【このレトロなツマミやトグルスイッチは絶滅種ですね】
⑥ボディーとネック全体をチェリーレッドのハードレリック仕様にオールリフィニッシュ
【ジョイント部の補強も必要ですね】
要するに私がいつもやっているような、「木部本体のみを残してフルカスタム」ということです
プロの工房だと、たとえ引き受けるところがあったとしても、専門家としての見地から「あ~だこ~だ」助言という名の忠告を受けることでしょう
素人である私にはセオリーもなければタブーもないので、クライアントが夢見るように仕上げてやります
いや、もっとエゲツなくやってやりますよ
楽しみ~
【音が出ないだけで状態はすこぶる良好です】