スタンフォード式人生を変える運動の科学」(マクゴニガル、神崎訳、2020年)の参考文献中に挙げられていた論文です

(1)「運動のパラドックス The Exercise Paradox」(Scientific American、2017年2月)
https://exss.unc.edu/files/2018/09/Exercise-paradox-Pontzer-2017.pdf
「多くの人は、運動をすると消費カロリーが増加すると考えている。しかし、1日中活動をしている未開の人々とコンビニを利用する現代人とで消費するカロリーは同じである。大型の類人猿との比較で明らかになったのは、ヒトの身体の特徴によって消費カロリーが左右されていることである」

(ヒトには毛がないので多くの熱を失います。少ない熱量は、多くの仕事量に匹敵します(熱の仕事当量)。また、脳は多くの血流を必要とします。こうしたことから、少々運動したぐらいではカロリー消費は少なく、体重はあまり減りません)

(2)「なぜ我々は走るのが好きか Why we love to run」(The Guardian、5 Feb 2013)
https://www.theguardian.com/lifeandstyle/the-running-blog/2013/feb/05/why-we-love-to-run
「楽しいから走るのである。英国では200万人以上の人が週に1回以上走っている。タイムは目の前にぶらさげたニンジンに過ぎない。健康のために走るというより、走ることができるように体の手入れをするのである。走ると精神が高揚する。走ると孤立するが同時に結びつく。自分自身に結びつく。日本の比叡山の僧侶は、1000日間に1000回のマラソンを行って、精神的な悟りを得る。ロンドンマラソンを見学したところ、走者はしかめつらをしているが、ゴールに到達すると安堵の表情がひろがる。感動して泣き出す者もいる。こうした強烈な感覚を味わうために、我々は何度も何度も走るのである」

(3)「身体的活動性と、日常生活における不快な感情 Physical Activity and Negative Affective Reactivity in Daily Life」(Health Psychology 2017, Vol. 36, No. 12, 1186 –1194)
http://www.midus.wisc.edu/findings/pdfs/1724.pdf
「日常生活のストレスによって引き起こされた不快な感情は、運動をよくする者では漸減する。重要なのは、あまり運動をしない者でも、ストレスの後で運動をすれば、不快な感情が減るという点である。運動をよくする者では、不快な感情は、1日中少ない」

(運動には、即効性もあるようです)

(4)「意図的運動と、線条体におけるショ糖摂取によるカンナビノイドCB1受容体の感受性亢進との関係 Voluntary Exercise and Sucrose Consumption Enhance Cannabinoid CB1 Receptor Sensitivity in the Striatum」(Neuropsychopharmacology. 2010 Jan;35(2):374-87)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19776732/
「齧歯類の動物にとって、回転車を回すことやショ糖を消費することは、報酬や強化因子としての意味がある。カンナビノイドCB1受容体が媒介する、線条体の抑制性の後シナプス伝達への前シナプス性のコントロールは、回転車やショ糖により著明に活性化される。回転車やショ糖をやめると、カンナビノイド受容体が媒介する反応の鋭敏化は、ゆっくり元に戻る」

(回転車のような運動や、ショ糖のような依存性薬物は、報酬系を鋭敏にして活性化します)


(5)「一般的な不安障害をおそらく持っている若い女性において、運動が心配や不安や活力・疲労の感覚に及ぼす短期的な影響 Acute exercise effects on worry, state anxiety, and feelings of energy and fatigue among young women with probable Generalized Anxiety Disorder: A pilot study.」(Psychology of Sport and Exercise, Volume 33, November 2017, Pages 31-36)
https://psycnet.apa.org/record/2017-43987-006
「ペンシルバニア州立大学の不安質問紙のスコアが45点以上の17人の若い女性が、約30分間のトレッドミルによるジョギングを行って心拍数を65-85%HRRにしたところ、心配、不安、活力・疲労の感覚などが改善した」

(短時間の運動でも有効です)

(6)「毎週のダンス教室が、パーキンソン病を持つ人の移動機能や生活の質に及ぼす影響 Impacts of a Weekly Dance Class on the Functional Mobility and on the Quality of Life of Individuals with Parkinson’s Disease」(Front Aging Neurosci. 2011; 3: 14.)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3189543/
「11人のパーキンソン病の患者さんが、週に1回のダンス教室に参加したところ、短期的効果として身体活動スコアが改善した。特に筋肉の硬さが改善した。また、社会生活、健康、可動性、日常生活能力などの点が改善した。ダンスは、患者さん本人のQOLと、介護者のQOLを改善させた」

 

(楽しいということが何よりです。楽しくてついやってしまうような活動がベストです)