子どもがいると親の寿命は延びるか


(1)「払い戻しを受ける時期? 子どもを持つことが老年期の死亡率に及ぼす影響 Payback time? Influence of having children on mortality in old age」(Journal of Epidemiology and Community Health、Volume 71, Issue 5、2017年)
https://jech.bmj.com/content/71/5/424
「子どもがいる人の方が、子どものいない人より死亡率が低い」
「60歳の時点で、子どものいる男性は平均余命が2年長い。子どものいる女性は1.5年長い」
「成人した子どもが、年老いた親を援助することが効果を持つのであろう」

(2)「子どもを持つと長生きするか Have kids, live longer?」(ハーバード大、2017年)
https://www.health.harvard.edu/blog/have-kids-live-longer-2017042411562
「研究者らは、1911年~1925年に生まれたスウェーデン人について調べた。60歳の時点で子どもを持つ人は、持たない人より、男では2年、女では1.5年寿命が長かった。この効果は、子どもの性には関係なく、親が結婚しているかどうかには関係なく認められた」
「いろいろな理由が考えられる。子どもを持つ人は社会的なつながりが多いとか、子どもがいれば親が高齢になった時に援助してくれるとか、子どもがいると健康的な生活習慣を行うとかである」

(3)「両親が子どもと共に免疫を得るという仮説:観察的な競合リスク分析The parental co-immunization hypothesis: An observational competing risks analysis」(Scientific Reports volume 9, Article number: 2493 (2019年) )
https://www.nature.com/articles/s41598-019-39124-2
「子どもを持つと親は、より健康になり死亡率が下がる」
「子どもと同時に免疫力を増強させるのであろう」

(4)「子どもの性別が親の死亡率に与える影響 The impact of children’s sex composition on parents’ mortality」(BMC Public Health. 2014; 14: 989.)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4179844/
「1935年以後に生まれた全ノルウェー人の1980~2008年の死亡について調べた。結婚している人の死亡率は結婚していない人の死亡率より低かった。子を持つ人の死亡率は子を持たない人の死亡率より低かった。1人目の子どもが男でも女でも、各親の死亡率は同様に低下した。子どもの数が1人より2人以上の方が、死亡率は低かった。ノルウェーなど北欧諸国は、児童手当が多い」

(5)「子どものある人は、子どものいない人より長生きする傾向がある。それはなぜか Parents Tend to Live Longer than Childless Individuals – Why is That?」(Population Europe)
https://population-europe.eu/pop-digest/parents-tend-live-longer-childless-individuals-why
「子どものいない人には健康でない人の割合が多い。子どものいない女性には乳がんが多い。子どものいない人には、事故などの外因死が多い」

(6)「子どもがいない人は長生きするか Do the Child-Free Live Longer?」(Time、2017年2月16日)
https://time.com/4673035/do-the-child-free-live-longer/
「研究によれば、子どもの数が増えるにつれて寿命は伸びる。子どもがいれば、一緒に暮らしていなくても、精神的に豊かになる。豊かになれば、寿命は延びる」

(7)「なぜ子どものある人は、子どもの無い人より長生きか Why Do Parents Live Longer Than Childless People?」(IFL-Science)
https://www.iflscience.com/health-and-medicine/why-do-parents-live-longer-than-childless-people/
「成人した子どもが年老いた親に援助を行うからであると考えられる」

(8)「子どもはどのようにして親の平均余命に影響を及ぼすか How children influence the life expectancy of their parents」(Max-Planck-Gesellschaft、OCTOBER 23, 2019)
https://www.mpg.de/14064449/children-influence-parents-life-expectancy
「子を持つ親は、寿命が延びる。この効果は実子だけでなく養子でも認められる。当研究所の研究によれば、子どもを1人養子にもらうと、親の寿命は3年伸びる。また、子どもを2人ないし3人養子にもらうと、親の寿命は5年延びる」
「親の教育程度や職業を同じにして比較すると、実子を1人持つ寿命の延びは消えてしまう。実子を5人持つと寿命はわずかに短くなる」
「家族の数を増やすことのできるような余裕がある人が、子どもを持つのである」

(別の研究は、親の教育程度を同じにして比較しても、子どもを持つ寿命の延びは認められたと報告しています)
(養子を認められるカップルは条件が良い可能性があります)
(9)「我々は、我々の祖先より本当に長生きしているのか Do we really live longer than our ancestors?」(BBC、2018年10月3日)
https://www.bbc.com/future/article/20181002-how-long-did-ancient-people-live-life-span-versus-longevity
「我々の先祖と比較して、平均寿命は延びたが、生きられる時間はあまり変わっていない」
「0歳で亡くなる人1人と70歳で亡くなる人1人がいる場合に、平均寿命は35歳になる。出生後の危険な時期を過ぎた人を比較すると、現代人の寿命は、大昔の人々と比較して、あまり変わっていない。古代の指導者の寿命は、現代人とあまり変わらない」

(10)「哺乳類の研究の一つが、なぜメスはオスより長生きかを説明する Mammal study explains 'why females live longer'」(BBC、2020年3月24日)
https://www.bbc.com/news/science-environment-52007780
「野生の哺乳類では、メスはオスより平均して18.6%だけ長く生きる。ヒトでは8%ほどである」
「環境が豊かであるほど差は少ない。環境が厳しいと差が大きい」
「ある研究は、メスの二つ目のX染色体が、有害な突然変異から体を守っていると説明している」

(11)「長生きする生物ほど子どもの数は少ない Those who live longer have fewer children」(Phys.org、2019年6月13日)
https://phys.org/news/2019-06-longer-children.html
「短い生涯の動物は、産む子どもの数が多い。一生が長い動物は、産む子どもの数が少ない」
「ネズミの寿命は2年であるが、生後数週で大人になり、1回の出産で3~8匹の子どもを産み、年に8回出産する。アフリカゾウは80年くらい生きるが、生涯の子どもの数はせいぜい10匹である」
「長寿と多産は、両立しない。トレードオフの関係にある」
「加齢の研究は、寿命が短い生物を用いて行われる。そうした加齢の研究は、繁殖活動を過大評価し、長寿の意義を過小評価する可能性がある」

(12)「動物の生存期間 Life-span: animals」(Encyclopedia Britannica)
https://www.britannica.com/science/life-span/Animals
「変温動物は、気温が下がると代謝が低下し寿命が延びる」
「恒温動物は、エサが少ないと代謝を低下させて寿命が延びることがある」
「危険な環境では寿命は短い」


(子どもを持つリスクもあります。例えば妊娠期間中は高血圧や糖尿病が現れやすくなります。また出産に伴うリスクもあります。例えば胎盤早期剥離や産褥熱などです)

(ヒトは少産少死戦略(K戦略)を行なっています。少ない子どもを手厚く育てます。親は、なるべく長生きして子に必要な情報を提供するのが得策です。生存競争には情報が重要です。おばあさん仮説では、自分の繁殖を犠牲にして、子孫へ労力提供や情報提供を行います。生物が生きる目的は、自分の遺伝子を子孫を通じて増やすことです。子どもがいない場合は、リスクを冒してでも、子どもを得るための努力をするでしょう)