最近、私は医師会の勉強会で講演を聞いてきました。講演で紹介されていた内容の文献を以下のように読みました。


(1)「認知症のリスク低減のガイドライン Guidelines of risk reduction of dementia」(世界保健機構 W.H.O.)のsummaryを読みました。
https://www.who.int/mental_health/neurology/dementia/guidelines_risk_reduction/en/

(次の12項目が、認知症のリスク要因として挙げられています)
・身体的活動
・タバコ
・栄養不良
・アルコール
・認知訓練
・社会的活動
・過体重
・高血圧
・糖尿病
・高脂血症
・うつ病
・難聴

(この12の要因を見ると、認知症はメタボ系の病気であると分かります。メタボ系の病気は、予防対策として、栄養と運動が重要です)

 

(2)「フランス厚生省の英断! 認知症治療薬を医療保険適用外に」という記事を読みました。
https://disajp.org/knowledge/1164/

(認知症の薬として4剤が使われていますが、最近フランスではこの4剤を保険の適応から外したとのことです。また日本でも4剤の添付文書に、次のように記載されているとのことです。「本剤がアルツハイマー型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない」。認知症の薬は、要するにコリン剤です。コリン剤は、食欲を改善させる場合があります。その分だけ良くなるのかもしれません)

 

(3)「脳の炎症を抑える薬は、認知症を改善させる Drugs that quell brain inflammation reverse dementia」(2019年12月4日)
https://news.berkeley.edu/2019/12/04/drugs-that-quell-brain-inflammation-reverse-dementia/
「脳に炎症のある老いたマウスに対して、その脳の炎症を治すと、数日以内に脳は若いマウスの脳のように機能し始める」
「70歳以後、およそ60%の人では、血液脳関門BBBの機能障害が起きる」

 

(血管に色素を注入すると、体の各臓器はその色素で染色されます。しかし脳は染色されません。血液脳関門Blood Brain Barrierがあって、色素を脳内に入れません。中枢神経系は特別の環境にあります。薬についても、血液脳関門BBBを通過する薬と通過しない薬があります)

 

(4)「血液脳関門BBBの機能障害が慢性炎症と神経変性を引き起こす Blood-Brain Barrier Dysfunction Causes Chronic Inflammation and Neurodegeneration」(2019年12月16日)
https://www.fightaging.org/archives/2019/12/blood-brain-barrier-dysfunction-causes-chronic-inflammation-and-neurodegeneration/
「血液脳関門の異常により脳に炎症が起きる」
「抗炎症剤を投与されたマウスは学習能力が改善される」

 

(脳の炎症を治す薬として、この文章中では「TGF-βレセプター・ブロッカー」が挙げられています。高血圧の薬として広く使用されているロサルタンは、その「TGF-βレセプター・ブロッカー」の一つです。認知症に対する効果はどうなのでしょうか)