(1)「個人の健康行動を改善するカギとなる事:悪い行動を生み出す環境を改善せよ The Key to Changing Individual Health Behaviors: Change the Environments That Give Rise to Them」(ハーバード大学、2014年)
http://harvardpublichealthreview.org/the-key-to-changing-individual-health-behaviors-change-the-environments-that-give-rise-to-them/
(要点)
「個人の行動や選択の問題は小さい。むしろ環境の問題が大きい。自由な選択であるように見えても、実際には環境の影響が大きい。マーケッティング(販売促進活動)は、このことを良く知っていて、環境対策をしっかり行っている(安価にする。大きくする。オプションでなくデフォルトにする。その都度快感を与える。精神的な逃げ道を作る)」

「セイラー教授のナッジ(軽く押すこと)は、自由な選択は残すが、人々を健康的な選択に導く」

「健康的な食事をすると、費用が平均1人1日1.5ドル増える」

 

(1ドル100円とすれば、1人1日150円増えることになります。1日150円は、健康への投資です。将来の病気の費用が削減されるでしょう。さらに、お菓子代、タバコ代、コーヒー代、アルコール代などを削減できるかもしれません)

 

(2)損得の表を作る(N.I.H.)
   ダーウィンの損得の表

 

(3)私は、以前タバコを吸っていた時に、タバコの害について勉強したが、それだけでは禁煙できませんでした。そうした知識だけでは行動の改善に結びつきませんでした。

 

(4)食事と運動の改善により、病気の多くを無くすることができる


   国がするか、企業がするか

   企業が本気で取り組めば、食事改善ができて、病気が減るであろう
      生産性が向上する
   40年働くよりも、50年働く方が良い。熟練する
     (認知症の予防を行うことが必要)
   定年‥‥健康なら辞めなくて良い。認知症が無ければ知識や技術は蓄積する
      暦年でなく健康年齢で定年を判定する

   収入源
      たばこ会社は、本気で禁煙運動をするか。するわけない
      アルコール会社は、本気で禁酒運動をするか。するわけない
      砂糖産業は、本気で栄養改善運動をするか。するわけない
      医者は、本気で病気予防をするか?  わからない
   
(5)産業として成立するビジネスであれば、一般的に『供給者の論理』が支配的になる (「超」英語法 野口 2004年)

 

(「企業の論理」は、企業がしっかりと利益をあげるための論理です。たばこ会社のように、お客さんの利益にならなくても、会社は成り立ちます。「供給者の論理」でも同様に、供給者の利益が追求されます)


(6)「教育による行動改善の提言  Advocating for Behavior Change With Education」(Am J Lifestyle Med. 2018 Mar-Apr; 12(2): 113–116.)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6124997/

「教育とは、一般的な知識を得る過程の他に、個人的な認識や、技術の訓練を含む概念である。教育は、行動の改善に必要な一つの要因である」
「一般的な知識を多く獲得するだけで行動の改善に結びつくことは少ない。行動を改善するためには、なぜその行動をしてはいけないのかを知っている必要がある。また、改善するための方法を知っている必要がある」

 

(確かに一般的な知識を伝えるだけでは行動の改善に結び付くとは限りません。しかし、片田先生も全く知識を伝達されなかったわけではありません。片田先生は、教育を通じて、一つの積極的な態度(自分で判断して率先して避難する)を伝えられました)

 

(7)「行動改善を妨げる5つの障害5 Barriers to Behavior Change」(ATD、2016年9月8日)
https://www.td.org/insights/5-barriers-to-behavior-change
(これは、個人の感想文です。著者は行動の改善が困難である理由を次のように考察しておられます。一理あります)

   1.フィードバックの欠如 (良い行動を行っても、特にフィードバックは無い)
   2.すぐに結果が出ない (良い行動を行っても、何も起こらない)
   3.環境の支援がない (良い行動をしても、環境からの支援は無い)
   4.社会の証明がない (良い行動をしても、社会から認められない)
   5.主体性の欠落 (良い行動をするように命じられただけ)

 

(8)ユニセフの動画集
https://www.youtube.com/watch?v=tEjVaY9RQZM&list=UUZceliiH71OLw4t4HcvKKjw&index=178
4000の動画があります。子どもの安全を訴える動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=kzewULVzVhI

 

(9)医師会の勉強会の時、ある講師の先生は、医学の現状として、次の図を示しておられました。
http://www.adumconsulting.com/trabajar-mejor/ (2つ目の図です)


(二人の医者が、床にこぼれた水をモップで拭き取っています。しかし、水道の蛇口からは水が出たままであり、容器からあふれて、床に流れ込んでいます。先に水道を止めてから、床を拭くべきですが、この状態は医者の良い収入になるのです)

 

(10)「次の世代に悪影響を及ぼすアルコール依存症。しらふのアルコール依存症である子ども:脳と行動リスクと関与と影響 Intergenerational Effects of Alcoholism, Children of Sober Alcoholics: Brain and Behavioral Risks, Interventions, and Implications」(ハーバード大学)
http://harvardpublichealthreview.org/the-key-to-changing-individual-health-behaviors-change-the-environments-that-give-rise-to-them/www.cbsnews.com/news/walking-meetings-make-work-healthier-happier/
「アメリカ合衆国には、アルコール依存症の人の子どもが1800万人いる。アルコール依存症の人の子どもは、アルコール依存症になるリスクがより高い。子どもの性格、子どもがお酒を飲み始める年齢が、アルコール依存症になる割合に影響する」

 

(11)「ナッジの仕方 How to Nudge」(ハーバード大学)
https://blogs.harvard.edu/nudge/how-to-nudge/
(ナッジというのは、軽く押すということです)
「ナッジを使うべき時
   選択肢を提供して、行動の改善への参加・関与を促す」

 

(次の本の表紙には、母ゾウが子ゾウを軽く押す図があります)
実践行動経済学 Nudge」(セイラー、遠藤訳、Thaler)

 

(12)「ナッジのごく簡単なガイド Nudging: A Very Short Guide」(ハーバード大学)
https://dash.harvard.edu/bitstream/handle/1/16205305/shortguide9_22.pdf?sequence=4
ナッジは、企業や政府で広く利用されている
ナッジは、選択肢を用意する(強制や命令ではない)
   ・デフォルトを作る(自動的に組み込む)
   ・単純にする
   ・社会的標準を利用する(他の多くの人は、こうしている)
   ・便利にする
   ・情報開示する
   ・警告を図で示す(米国のタバコの外箱の例)
   ・以前の行動を生かす(禁煙を試みたことがある場合)
   ・(必要な行動を必要な時に)思い出させる
   ・行動の予定を聞く
   ・過去の選択の結果を伝える

 

(私がスマホを購入する際には、月に500円くらいのサービスが8つくらい、デフォルトで付いていました。1週間以内に個々のサービスを解約すればお金はかからないとのことでした。購入後にオンラインで解約を試みましたが、操作法が複雑で良く分かりませんでした。購入した店に行く時間もなく、使わないサービスのお金を毎月払っています。スマホの契約は2年ごとに同じ条件で繰り返されます。違約金を払わずに解約するには、2年後の決められた期間内に手続きを行う必要がありますが、それがいつなのか私の記憶はあいまいです)

 

(13)「ナッジ Nudge theory」(Wikipedia英語版)
https://en.wikipedia.org/wiki/Nudge_theory
カーネマン
   判断の第一のシステム: 速い。自動的。環境の影響を強く受ける  
   判断の第二のシステム: 遅い。よく考える。目標や意図を考慮する
時間が無かったリ、状況が複雑だったりすると、判断の第一のシステムが優勢になる

 

(14)assume(アシューム、仮定する) assumption(アサンプション、仮定)
ラジオ英会話(R1.10.17)の大西先生によれば、assumeのイメージはtake(受け入れる)であるそうです。
文献(6)には、次のような文がありました。大西先生の言われるように理解すると、意味が分かりやすくなりました。
A common assumption inaccurately made in behavior change is that general knowledge and information drive behavior. 
「行動の改善に関して広く誤って受け入れられているのは、一般的な知識や情報が行動を規定しているということである」