次のような文章を書きました。


第13章 うつ病

軽症のうつ病は、メタボ系の要素が大きい病気であると考えられます(Ilardi氏)。生活習慣の影響が大きい病気です。

加えられた砂糖を多く消費するとうつ病にかかりやすくなります。また日光不足などビタミンDの不足があるとうつ病にかかりやすくなります。体を動かすことが少ないとうつ病にかかりやすくなります。糖尿病やメタボリック症候群はうつ病のリスクとなり、うつ病になるとそれらの病気のリスクが高くなります(功刀氏)。うつ病は、平等な社会では少なく、過酷な社会では多く発生します。競争的で、脅威があり、個人が孤立する社会には、うつ病が多く発生します(Hidaka氏)。

未開の地には、うつ病の人はわずかしかいません。未開の社会は、平等で助け合う社会です。パプアニューギニアのカルーリKaluliの人々の中には、2000人の中に1人だけ、境界域のうつ病の人がいました(Ilardi氏)。

小さい魚を大きい魚とともに買うと、小さい魚は食べられないように逃げ回りますが、その状態が長引くと、やがてうつ病のような症状を呈します(NHK)。

お年寄りの方の軽症のうつ病は内科医が診療することが可能です。しかし、持続的な体重減少や死にたい気持ちがある場合には、精神科受診が必要となります(日本老年学会)。死にたい気持ちがある患者さんに、私は精神科受診の紹介状を書いて受診をお勧めしています。

進化生物学からすれば、生物は自分の遺伝子を広めようとする存在です。自殺すれば、自分の遺伝子は消滅しますから、自殺はありえないことになります。

自分が犠牲になって、他の人々を助けることはあり得ます。映画「ザ・デー・アフター・トゥモロウ」では、1人の人が犠牲になって他の2人を助けました。自己犠牲的行動は、通常は血縁の近い者のために行われます。自分の遺伝子を犠牲にしても、血縁度がn分の1の人を、n人以上助ければ、自分の遺伝子は増えることになります。

また、「自殺をする人は本当は自殺未遂をするつもりであったが、誤って自殺してしまった」という説もあります。つまり自殺ではなくて事故であるという説です。このほか、自殺は合目的的な現象ではなく、病的現象である可能性もあります。多くの自殺は、精神の病的状態で起きます。病気であるのなら、治すことも可能です。

個人レベルの対策としては、生活習慣の改善が重要です(井原氏)。食事を改善し、体を動かすことです。うつ病に対して運動は効果があります(レイティー氏)。

その他、ストレス対策としてハーバード大は次のことを勧めています。交渉できる事は交渉して改善させ、睡眠を十分に取り、ポジティブに考え、親しい人と楽しい時間を過ごし、趣味など自分の楽しい時間を過ごすことです。

実際、日本では年間3万人以上が自殺する年が続きましたが、最近では予防対策が行われており、現在では年間2万人ほどに減少しています。世界保健機構WHOは、「日本は自殺予防に舵を切った」と述べています。