最近、「もうゆるしてください」と述べた5歳の女の子が、母の再婚相手の男によって殺されました。子どもを何としても助けようとするのは、本当の父親だけです。

拙著「子連れの離婚をする前に」の第6章「連れ去りは子どもにずっと悪い影響を与える」のうち、「連れ去りが子どもに与える悪影響」を再び読みました。また、文献5を再び読みました。

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「連れ去りが子どもに与える悪影響」

「連れ去りにより、子どもは片親を失う。子どもは、玩具、ペット、友人、先生、学校、慣れ親しんだ遊び場、行きつけの店を失う[1]。また、日々の日課、安全の感覚を失う。祖父母やいとこや、片親の文化を失う。会いたい親に会わせてもらえないことにより、同居親との信頼関係も失う[2]。子どもは、自分を最も愛してくれる人を失って、嘆き悲しむ。連れ去られた子どもは、その後、人から見捨てられる不安を持つ。また、人間関係を信頼することが困難になる。また、抑うつ症状、孤独感、過度の恐れ、惨めさ、怒りを持つ場合がある。連れ去りによってしばしば子どもに引き起こされる精神的障害は、分離不安、ADHD、PTSD、摂食障害、学習障害、行動障害などである[3]。

連れ去った親は、子どもをかくまい、隠匿する。小さい子どもは、会えない時間が長くなると、残された親のことを次第に思い出せなくなる[4]。たいていの場合、子どもは、連れ去った親により、一人の意思を持った人間として尊重されるのではなく、交渉を有利に進めるための道具、仕返しのための道具として使われる[1]。子どもを他の親から引き離すのは、子どもの利益を第一に考えるからではなく、怒って仕返しをするためであることが多い[5]。

子どもから見て、連れ去った親は、唯一の情報源である。しかし、子どもは、連れ去った親に「父親は死んだ」とか「母親はもうお前のことを愛していない」とか、嘘をつかれることが多い[6]。子どもは、片親に会う機会を奪われるだけでなく、唯一の扶養者である立場を利用したマインド・コントロールにより、他の親への精神的なつながりも消去される[1]。

子どもを連れ去った後に、子どもへの虐待が多く行われる[5]。連れ去った後で23%の親が、子どもへの身体的虐待をしていたという調査がある[7]。連れ去った親にとって、就職や新しいパートナー探しをする上で、子どもの存在が邪魔になることがある。公的統計や病院の集計において、虐待者である比率が最も高いのは、同居の母親である。連れ去った親にできた新しいパートナーは、子どもに多くのお金が出費されることに賛成しない場合がある。いくつかの動物では、新しいオスにより子殺しが行われる。

子どもは、連れ去りにより、誰の目も届かない状況に置かれる[8]。子どもは、誰の助けも無い状態で、自分を連れ去った親や、その新しいパートナーと対峙しなければならない。連れ去った親が、子どもを他の親に会わせないのは、子どもを大切にしていないなど、会わせられるような状況ではない場合がある。子どもはお金を持っていないので、子どもの権利を守ろうとする人は少ない。

子どもは同居親に対して、強い怒りを覚えることがある。しかし怒りは、別の親に向かうこともある。子どもの目から見れば、非同居親は、会いに来てくれず、自分を探してくれないのであり、見捨てられたように見える。また、怒りは子ども自身に向かうこともある。子どもは、離婚は自分のせいで起きたと誤って思い込んでいることが多い。連れ去られた子どもの抑うつ症状や自殺は、まれなことではない[2]。連れ去られた子どもの心に与えられた打撃は、長く子どもの心に残る[9]。

連れ去りは、最も悪質な児童虐待であるとされており[2][5][8]、多くの国で、重罪として処罰されている。

[1] Parental Kidnapping: A New Form of Child Abuse、Dorothy Huntington
[2] Parental Child Snatching: An Overview 米国政府文書
[3] Parental Child Abductions, Victims of Violence カナダ政府が出資している機関
[4]  Psychological Impact of Abduction Parental Abduction: A Review of the Literature 米国政府文書
[5] The Kid is With A Parent, How Bad Can It Be?": The Crisis of Family Abduction 「家族による誘拐という危機」(ハワイ州政府内の文書)
[6] Parental Kidnapping: Prevention and Remedies 米国弁護士会の文書
[7] When Parents Kidnap、Geoffrey Greif著 1993年
[8] Parental Child Abduction is Child Abuse、Nancy Faulkner、国連に提出した文書
[9] The Crime of Family Abduction 米国法務省の文書
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