次のような文書を書きました。
第9.5章 骨粗鬆症
骨は、主にコラーゲン(骨基質)とカルシウム(骨塩)から成ります。骨粗鬆症は、骨量が減少する疾患です。すなわち、骨粗鬆症では、コラーゲンとカルシウムの両方が減少します。これに対して骨軟化症では、カルシウム(骨塩)だけが減少します。多くの場合には、骨粗鬆症と骨軟化症の両方が混在します。
未開の地や、旧石器時代には、骨粗鬆症は見当たりません。骨粗鬆症は産業革命以降に現れた病気です。他のメタボ系の病気と同じように、戦後急速に増加しています。
最近、骨粗鬆症が増えている原因は、紫外線に当たる量が減ったこと、カルシウムの摂取量が減ったこと、ビタミンDの摂取が減ったこと、野菜の摂取量が減ったこと、お年寄りの方は運動不足や栄養不良になりやすいことなどであると考えられます。昔、子どもは学校が終わると屋外で遊びましたが、今の子どもは屋内で遊びます。ガラスは、紫外線Bをほとんど通しません。現在、お年寄りの方ではビタミンD欠乏症の人が半数以上もいます。
糖尿病の人には骨折が多く起こります。コラーゲンが、糖化反応により変性してもろくなるからです。また、飽和脂肪は、カルシウムの吸収を悪化させます。このように、骨粗鬆症は、メタボ系の病気(生活習慣病)です。
私が勤務する老人施設では、時として骨折する方がおられます。転倒予防などの対策を行っています。また、薬物治療も行っています。
もし、活性型ビタミンD3を使用するのであれば、血清カルシウム濃度を定期的に測定する必要があります。活性型ビタミンD3では、十分な量のビタミンDを服用しているかどうかが不明です。それで、活性型ビタミンD3ではなく、天然型ビタミンD3を使用しています。ビタミンD(25(OH)ビタミンD)の血中濃度は、20μg/l以上が正常で、それ以下が欠乏症です。私が勤務する施設では、当初は、7μg/lほどでしたが、現在は32μg/lほどに改善しています。時々、日光浴をして頂いています。曇りの日でも、6割ほどの紫外線が届きます。
私はかつて自分自身の紫外線予防を、厳重に行ったことがあります。長袖シャツ、長ズボンに、帽子をかぶり、サンスクリーンを塗布しました。紫外線によるビタミンDの生成は、少なかったはずです。その頃私は、毎日魚を食べていました。朝は、ちりめんじゃこ、昼は魚の缶詰、夜は魚の煮物またはお刺身という日が多くありました。鍋料理のときには、キクラゲをよく使いました。魚もキクラゲも、ビタミンDを多く含んでいます。
ビタミンDは、カルシウムの代謝以外にも我々に関わっています。
ビタミンDは、がんを減らすという統計があります。乳がん、大腸がん、肺がんは、紫外線に多く当たる南の地方では罹患率は低くなります。北の地方でも、ビタミンDを補うと、それらのがんの罹患率は低下します。
ビタミンDは、脳のシナプス生成と維持に不可欠であり、欠乏すると認知症を引き起こすという意見があります。さらに、日本人では認知症の発生に、ビタミンDが特に重要であるという意見があります。