(1)「ダーウィン」(ステフォフ、西田訳、2007年)を読みました。

(ダーウィンの伝記です。簡潔ですが、重要事項は記載されています。ダーウィンが朝、昼、夕に散歩したこと、科学的な事実を多く集めたことなどです)

(2)「ライフ・シフト」(グラットン、池村訳、2016年)を再度読みました。

(寿命が100年を超える時代になって、若い時に技術を身につけて60歳で引退するモデルは破綻するとのことです。ステップアップのための適切な準備や行動により、長く働くことが必要になるとのことです)

「経済的な価値を生むのは、製造ではなく、イノベーションなのである」(p110)

「みずからの価値観や希望に沿った生き方ができるようになれば、それ以上の『長寿の贈り物はおそらくないだろう』(p358)

(3)「遺伝子(下)」(ムカジー、仲野訳、2018年)を読みました。

「同意書のどこにも、治療が引き起こす可能性のある害について示唆している箇所はなかった。絶対に勝てるギャンブルみたいに書かれていたんです。利点ばかりでマイナス面はない、というように」(p259)

(4)「心を動かす話し方」(カーネギー、田中訳、2006年)を読みました。

「われわれは、その論文を書いた、影のような人物には興味ありません。その人は、今ここにいません。われわれはその人を見ることができません。しかし、われわれはあなたとあなたの考えには興味があります。ほかのだれかが言ったことでなく、あなた自身が考えていることを本人のあなたの口から話してください」(p58)

(了解しました)

(5)「はじめに」を書きました。

はじめに

生活習慣病の多くの病気は予防できます。高血圧、2型糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、虫歯、肥満、アルツハイマー病、脳梗塞、心筋梗塞などは予防できます。そういう病気にならないようにすることが可能です。

アフリカの奥地やアマゾンの奥地で狩猟採集をする未開の人々は、こうした生活習慣病にはかかりません。アメリカの大学などが未開の地で健康診断を行うと、虫歯の人はほとんど見当たりません。血圧の高い人もいません。肥満した人もいません。血糖値の高い人も見当たらないのです。しかし、そうした人々が、狩猟採集生活を捨てて、町へ出てきて現代の社会生活を始めると、とたんに生活習慣病が多発します。現代の社会生活に嫌気がさして元の狩猟採集生活に戻ったりすると、また元の健康状態を取り戻すことが報告されています。

自然食品を食べて運動量が確保されれば、生活習慣病にはならないのです。ただし、治療はまた別の問題です。高血糖が長く続くと、糖化反応が起きて血管が固くなって、簡単には元へ戻りません。悪い油を長く摂っていると、動脈硬化が進行します。しかし、その場合でも、治療にあたって、まず食事を改善し、運動量を増やすことは、多いに考えられることです。

ヒトの体は精巧にできていますが、太古の昔から今の形で変わらずに存在しているわけではありません。原始的な単細胞生物から数十億年かけて進化して今の形になったのです。進化には時間がかかるので、我々の体(遺伝子)は旧石器時代とほとんど変わっていません。しかし、特に現代社会において、我々の住む環境は激変しています。ヒトの体は、旧石器時代の環境には適応していますが、約1万年前に農業が行われるようになって以後の環境には、必ずしも適応していません。特に最近100年間の食事の変化や運動量の減少には適応していません。

ヒトの体を変えることは困難であるので、食事をある程度取捨選択して、運動量を増やすことが必要です。
ヒトの健康を実現するうえで、進化の視点は重要です。生存する生物には、淘汰の強い圧力がかかっています。ヒトの体の機能は万能ではなく、コストを減らすための制約を受けています。旧石器時代には最善の方策であったものが、現在には最善ではないことがあります。進化の仕組みと健康との関係を理解することは必要なことです。

生物進化は、偶然(形質の突然変異による変動)を必然(適者生存による繁殖)にする仕組みです。学問もまた偶然(世界のどこかでの出来事やある人の考え)を、必然(人類共通の知識、実践)に変えるための仕組みです。

進化生物学については、長谷川真理子先生の一連の著作より分かりやすく学ぶことができます。また、進化医学については井村裕夫先生の著作を教科書として学ぶことができます。進化生物学や進化医学によって明らかにされた知識を、予防医学へ応用し、実践して行きたいと考えます。

なお、特定の人の治療や予防については、この本ではなく主治医の先生の指示に従って下さい。例えば、食餌中の食塩を減らすことは、一般的には良いことですが、薬として食塩の服用が必要な方もおられます。例えば、私の勤務先では100人のうち2人が食塩を服用しておられます。脳卒中や認知症の場合に脳下垂体の働きが低下して低Na血症となることがあり(SIADH)、その場合に軽症だと食塩摂取にて治療します。このように、食塩を減らしてはいけない場合があります。