次のような文書を読みました。

(1)「ハッザから学ぶこと:不健康な食事は、肥満や糖尿病を防ぐ努力を無駄にする Lessons from the Hadza: poor diets wreck efforts to prevent obesity and diabetes」
http://pages.nycep.org/pontzer/Papers/2012_Diabetes%20Voice.pdf

「既開発国に多い高血圧や他の慢性疾患は、ハッザでは見当たらない」

「世界中で増加する肥満と戦うのであれば、まず我々の食事を変えることから始める必要がある」

(2)「ヒトの身体的活動性についての進化的な一つの見方:健康との関連 An evolutionary perspective on human physical activity: implications for health」
https://paleotraining.com/wp-content/uploads/An-evolutionary-perspective-on-human-physical-activity.pdf

(要旨)
(1日の運動の必要量について、米国の衛生総監は1日に150~200kcalと述べ、世界保健機構WHOは、1日に490kcalと述べたが、この研究により、後者が正しいと考えられた)

(3)「オーストラリア中部に住んで、伝統文化から離れて長い時間を経たアボリジニの社会における肥満、糖尿病、高脂血症 Obesity, Diabetes, and Hyperlipidemia in a Central Australian Aboriginal Community With a Long History of Acculturation」
https://www.researchgate.net/profile/Kathy_Traianedes/publication/14840397_Obesity_Diabetes_and_Hyperlipidemia_in_a_Central_Australian_Aboriginal_Community_With_a_Long_History_of_Acculturation/links/56550d7208ae4988a7b091e4.pdf

「オーストラリアのアボリジニ族では、伝統的な狩猟採集生活から西洋風の生活スタイルに移行した後では、世界の他の多くの同様の人々と同じように、肥満やインスリン非依存性糖尿病や心血管疾患の罹患率が高くなる」

(4)「旧石器時代の遺伝子とは異なる栄養や生活習慣によって生じる心血管病:21世紀の狩猟採集生活者になる方法 Cardiovascular Disease Resulting From a Diet and Lifestyle at Odds With Our Paleolithic Genome: How to Become a 21st-Century Hunter-Gatherer」
http://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196(11)63262-X/fulltext

「歴史的、人類学的研究によれば、狩猟採集生活をする人々は、一般的に健康であり、環境に適応しており、近代社会に多い退行性の心血管疾患に罹患していない」

「最近の研究によれば、グリセミック・ロード(糖負荷)の高い食事は、HDL値を下げる最も重要な要因である」

(5)「狩猟採集生活者の中の長寿者:いくつかの文化での調査 Longevity Among Hunter-Gatherers: A Cross-Cultural Examination」
http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.737.7899&rep=rep1&type=pdf

(図1より)
(狩猟採集生活をする5つの部族の生存曲線が図で示されている。どの部族も生後5年以内の死亡が多い。例えばハッザ族では、70歳の時点で、生まれた者の20%が生存している)

(表4より)
(死亡の最頻値は、ハッザ族で76歳、2002年の米国で85歳)

(6)「人間の寿命と加齢による病気の進化:感染、炎症、栄養の役割 Evolution of the human lifespan and diseases of aging: Roles of infection, inflammation, and nutrition」
http://www.pnas.org/content/107/suppl_1/1718

「アルツハイマー病の遺伝子を導入したマウスにカロリー制限を行うと、脳のアミロイドの蓄積やグリア細胞の反応が減少する。同様に、動物モデルにカロリー制限を行うと、動脈硬化症、糖尿病、新生物が減少する」

「料理も、非酵素的糖酸化を促進させて最終糖化産物AGEsを生成し、それは、動物モデルや臨床研究で示されるように、糖尿病を作り出し、動脈硬化症を作り出す」

(7)「アルツハイマー病による記憶障害が初めて改善した Memory loss associated with Alzheimer's reversed for first time」
http://newsroom.ucla.edu/releases/memory-loss-associated-with-alzheimers-reversed-for-first-time

(要旨)
(「アルツハイマー病 真実と終焉」という本の著者が、実際にアルツハイマー病の患者さん10人にその方法を試したところ、病状が進んだ1人を除いて効果があった)

(私が、ネットで検索しても、効果があったとする報告は、今のところあまり見当たりません)

(8)「我々は怠けていると早死するLaziness will send us to an early grave」(BBC)
http://www.bbc.com/news/health-11442101

「市場の圧力は、主に製薬産業からのものであるが、体を動かさない生活に由来する個々の症状や兆候を「医学的な」病気に仕立て上げる。底にある真の原因を放置したままで、症状の火消しに何億円を投じても、意味は無い」

(9)「なぜ我々はこんなに怠けるのか:ヒトは、エネルギを温存し、疲労困憊を避けるように進化したと、専門家は言う Why we are so lazy: Humans have evolved to conserve energy and avoid exertion, says expert」(Mail Online)
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-3765311/Why-lazy-Humans-evolved-conserve-energy-avoid-exertion-says-expert.html

「(対策の)第一は、学校や職場やその他の環境で、体を動かす活動をもっと楽しめるものにすることである。(対策の)第二は、体の活動をもっと必要とするように、我々の環境を再構築することである」

(10)「このハーバード大の教授は、なぜ我々が疲労困憊を避けるように生まれたかを説明する This Harvard Professor explains why we were born to resist working out」(The Washington Post)
https://www.washingtonpost.com/news/inspired-life/wp/2016/09/15/this-harvard-professor-knows-why-you-skipped-the-gym-this-morning-it-is-natural-and-normal-to-be-physically-lazy/?utm_term=.0c2046787b17

(リーバーマン教授の説明)

「身体的に怠惰であるのは、自然であり正常である」

「旧石器時代のヒトは、可能な時にはエネルギーを温存しておく必要があった。現代のヒトが運動をして疲労困憊しても、失ったカロリーを埋め合わせる心配をしなくて済む」

「我々の本能は、常にエネルギー消費を節約するように働く」

(11)「健康と病気における進化 Evolution in Health & Disease」という本の続きを読みました。
https://www.amazon.co.jp/Evolution-Health-Disease-Stephen-Stearns/dp/0198504454

「寄生虫の毒力と宿主の抵抗力は、共に進化するが、いずれのコストも高くつくので、無制限にエスカレートするのではなく、ある中庸の地点に落ち着くことが多い」(p11)

・自然淘汰において選択される形質は、常に、生殖の成功をもたらす形質である
・自然淘汰は、詳細な適応を形作るのに大きな力がある
・自然淘汰が常に適応をもたらすとは限らない。進化的な競争があれば、当事者が共に
 損をすることがあり得る
・利己的な突然変異が侵入するので、種の利益のために個体の形質が進化するという議論は、
 たいてい誤りである(p15)

「血縁者の相互支援があれば、慢性的な貧困の下でも、死亡率や罹患率が低下する」(p100)

(12) 「遺伝子(上) (下)」(ムカジー、仲野訳、2018年)を読みました。

(この本には、遺伝学の歴史が書かれています。木村資生博士や山中教授も出てきます。この本と「がん―4000年の歴史(上)(下)」は、同じ著者によるものです。黒木教授は『がん研究は、それまでの多神教から、遺伝子の一神教になった』と述べておられます。私は、特に狩猟採集生活者のがんと現代人のがんとの比較において、遺伝子以外の要素もあると考えます。遺伝子があまり違わないのに、がんの分布がかなり異なるからです)

(12)「恩讐のかなたに」(菊池)を読みました。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000083/files/496_19866.html

(殺人の多かった旧石器時代と比較すれば、文明の発達により、人類は良い方向へ向かっていると考えられます)