次のような文書を読みました。
(1)「低糖質食、地中海食、低脂質食による体重減少 Weight Loss with a Low-carbohydrate, Mediterranean, or Low-Fat Diet」
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0708681
この文書は、低糖質食を勧める人々がよく引用する文書です。この研究では、3つの栄養法を比較しています。この研究によれば、3つの栄養法のうち、初期の体重減少が最も大きかったのが、糖質制限食でした。
この糖質制限の栄養法では、アトキンス・ダイエット法に従うこと以外に、脂肪やタンパク質については、植物性のものを摂取するように勧告が行われています。もしこの勧告が徹底されたのなら、低糖質食+菜食主義ダイエットということになります。菜食主義ダイエットでは摂取カロリーが減る傾向にあります。一般的には、植物性食品の方がカロリーが少ないからです。糖質制限食ではなく、菜食主義ダイエットの影響を見ている可能性があります。
この本も、タウベス氏の「良いカロリー悪いカロリー」と同じように、低糖質食を勧める本です。この本には、良い点も多くありますが、低糖質食を勧めているという点で、世界保健機構や、米国の政府機関の見解とは異なっています。また、アルコール摂取を勧めており、摂取量に特に制限を加えていません。
(3)「消化管の本能 Gut Instinct」(Science)
http://humanfoodproject.com/wp-content/uploads/2014/01/Science_NewsFocus_Leach.pdf
(エール大学の人類学者のWood氏の発言)
「事故やマラリアや結核などによって、ハッザの人々の平均寿命は、わずか34歳である。若くして死亡するので、がんや心臓病によって命を落とす年齢まで生きることは少ない」
「事故やマラリアや結核などによって、ハッザの人々の平均寿命は、わずか34歳である。若くして死亡するので、がんや心臓病によって命を落とす年齢まで生きることは少ない」
(未開の人々の平均寿命を大きく押し下げている原因は、0歳から5歳までの子どもの死亡です。未開の地で行われた健診の結果では、肥満の人、虫歯の人、コレステロールの高い人、高血圧の人などは、ほとんど見つかっていません)
(4)「イヌイット:北極からの教訓 The Inuit: Lessons from the Arctic」
http://wholehealthsource.blogspot.jp/2008/07/inuit-lessons-from-arctic.html
「(イヌイットの)Kuskokwimの72人は、昔からの食物だけを摂取しているが、その歯2138本を調べたところ、虫歯は2本(全体の0.09%)であった。この地方で、現代の食物をかなり摂取しているKuskokwimの81人の歯2254本を調べたところ、虫歯は394本(全体の13%)であった」
「現代のイヌイットの人は、肥満や糖尿病をもつ割合が高い」
(こうした証拠はたくさんあります。次回の当ブログで証拠を列挙します)
著者のプレデセン氏によれば、アルツハイマー病の原因は36あるとのことです。そして、それは患者さんによって異なるとのことです。その原因に対して正しく対応すれば、アルツハイマー病の進行を止めて、改善させることも可能であるとのことです。
この本の監修者である白澤教授は、次のような内容の発言をしておられます。「日本人の場合、ビタミンD不足、ホモシステイン高値がアルツハイマー病の要因であることが多い。後者は、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12で治療できる」(p409)
また、著者のプレデセン氏は、パレオダイエット(旧石器時代の狩猟採集生活者の食事法)を推奨しておられます。
(低糖質食を推奨するトウブス氏の本「良いカロリー悪いカロリー」が検討されています)
「(トウブス氏が)異なった細部から構築した物語のすべてが、彼がすでに形成した偏見の影響を受けている可能性が高い」(p53)
(トウブス氏は、自分の考えに有利な証拠だけを集め、不利な証拠を無視したのです。我々も、同じような過ちを犯す可能性があります)
(7)「ダーウィン自伝」(ダーウィン、八杉訳、2000年)を再度読みました。
(我らがダーウィンは、どう対処したのでしょうか)
「熟達した育種家や園芸家から話を聞くことにより、また広く書物を読むことによって事実を集めた。いろいろの雑誌や会報の全巻をふくめ、私が読んで抜粋をつくったあらゆる種類の書物の目録を見るとき、私は自分が勤勉であったことに驚く」(p149)
「私はどんな仮説でも、たとえそれがとても気に入ったものでも、事実がそれに反するということが証明されれば、すぐにそれを放棄するために、いつでも変わらずそれを放棄するために、自分の心を自由にしておくように努めてきた」(p175)
「私は、長年にわたって、つぎの鉄則を遵守してきた。それは、公表された事実であれ、新しい観察や考えであれ、なんでも私の一般的な結論に反するものに気がついたときには、それを漏れなく、すくに覚え書きにしておくということである。というのは、このような事実や考えは、都合の良い事実や考えよりもずっと記憶から逃げてしまいやすいということを、私は経験で知っていたからである」(p155)
(ダーウィンは、参考になります。お手本になります)