(1)「種の起源」(長谷川、100分de名著、2015年)を読みました。

「変異は環境とは無関係にランダムに生じます。現れた変異がたまたま環境に適していて、生存や繁殖のうえで有利となる場合に自然淘汰が働き、その変異が継承されるのです」(p51)

「1人の女性が死ぬまで子を産み続けるのではなく、途中で自分が産むのはやめにして、まだ残っている体力と、それまでに蓄えた知識と次の世代の子育てに向けた方が、より多くの孫が残った、という事態が生じたのではないでしょうか?」(p91)


(2)「進化と医学 Evolution & Medicine」(Pearlman、2013年)の第11章3項「食塩摂取と高血圧 Salt intake and hypertension」を読みました。

「脊椎動物は、海水から淡水へ、さらには陸地へ移動した。それは食塩の多い所から食塩の少ないところへの移動であった」

「哺乳類は、食塩を含む食物を感知しそれを美味しいと感じる味覚器を発達させた」

「(ヒトはサバンナへの移動に際して)発汗する能力を大きく進化させた。しかしヒトは、発汗により、熱を失うと同時に、水分と食塩も失った」

「平均のナトリウム摂取量が50mmol/日以下となる現代人は数少ないが、そうした人では、高血圧は事実上生じない」(食塩なら1日2.8g以下)


(3)「高血圧の病因論におけるナトリウムとカリウム Sodium and Potassium in the Pathogenesis of Hypertension」 (N Engl J Med. 2007 May 10;356(19):1966-78.)
https://www.researchgate.net/profile/Horacio_Adrogue/publication/6336904_Sodium_and_Potassium_in_the_Pathogenesis_of_Hypertension/links/5400773d0cf29dd7cb526bbc/Sodium-and-Potassium-in-the-Pathogenesis-of-Hypertension.pdf

「ある画期的な実験的研究によれば、チンパンジーに、1日15gの食塩を食餌に混ぜて与えたところ、収縮期血圧は33㎜Hg上がり、拡張期血圧は10mmHg上がった。食塩の添加をやめると、上昇した血圧は元に戻った」

「2枚のハム(57g)には、32mmolのナトリウムが含まれ、4mmolのカリウムが含まれる」

「1カップのゆでた豆には、0.3mmolのナトリウムが含まれ、9.8mmolのカリウムが含まれる」

「ナトリウムを多く含む食餌により高血圧となったラットに、カリウムを多く与えると、血圧は低下する」

「ヒトの腎臓は、ナトリウムを体に保持してカリウムを体から排出するように働く。有史前のヒトは、ナトリウムが少なくカリウムが多い食事を摂っていたので、この仕組みがうまく機能していた」

「食事に由来する食塩のうち、わずか12%ほどが食材に元から含まれる食塩であり、約80%ほどは食品の加工の際に添加された食塩である」


(4)「インターソルト:電解質の排出と高血圧に関する国際的研究 Intersalt: an international study of electrolyte excretion and blood pressure. Results for 24 hour urinary sodium and potassium excretion」 (BMJ. 1988;297:319–328)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1834069/pdf/bmj00297-0019.pdf

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(5)「進化医学:蔓延する高血圧症 Evolutionary medicine: The hypertension pandemic」(スライド)(スイスのローザンヌ大学名誉教授の Bernard Rossier先生によるスライド )
https://www.theisn.org/education/education-topics/hypertension/item/2310-evolutionary-medicine-the-hypertension-pandemic

スライド28/56‥‥食塩摂取が多いと血圧が上がることを示しています

(6)「進化から見た食塩、高血圧、ヒトの遺伝的変動 An Evolutionary Perspective on Salt, Hypertension, and Human Genetic Variability」 (Hypertension. 1991 Jan;17(1 Suppl):I129-32. )
http://hyper.ahajournals.org/content/hypertensionaha/17/1_Suppl/I129.full.pdf

「ヒトの進化の歴史を通じて、電解質を体によく保持できることが、生存に必須の条件であった。しかし最近の現状では、食事から多くの食塩を摂取しており、食塩の過剰摂取の可能性を引き起こしている」


(7)「進化と高血圧 Evolution and Hypertension」 (Alan Weder、Hypertension. 2007;49:260-265)
http://hyper.ahajournals.org/content/hypertensionaha/early/2006/12/26/01.HYP.0000255165.84684.9d.full.pdf

「Barkerらは、出生時体重と、大人になってからの心血管疾患の罹患率には、負の相関があると述べた。そしてさらに、出生時体重と、大人になってからの心血管疾患(高血圧を含む)の有病率との間には、同じように負の相関があると報告した」

「母体の栄養状態が良好であれば、子どもに高血圧が生じるのを予防したり、遅らせたりすることが、ある程度は可能であるかもしれない」