次のような文書を読みました。
(1)「甘いもの好きの進化 Evolution's Sweet Tooth」
http://www.nytimes.com/2012/06/06/opinion/evolutions-sweet-tooth.html
「食品産業が財を築いた理由は、我々が石器時代のままの体を維持して甘い物を求めるが、砂糖が安くて豊富にある宇宙時代に住んでいるからである」
「我々は、甘い物を求める我々の体を利用して金を稼ごうとする側ではなく、我々の側に立つ政府を必要としている」
(2)「長期的な果糖の消費は、オスのラットにおいて、糖化を促進させ、加齢に関係するいくつかの変数を促進させる Long-Term Fructose Consumption Accelerates Glycation and Several Age-Related Variables in Male Rats」
http://jn.nutrition.org/content/128/9/1442.full
「果糖は、ブドウ糖よりも糖化を促進させ、最終糖化産物を10倍も多く生成する」
「血中のビタミンDの濃度が20ng/ml以下の人は、乳がん、前立腺がん、結腸がん(大腸がんの一つ)のリスクが30~50%高くなる」(p120)
「ビタミンDは免疫システムを向上させて細胞の分裂を阻害したり、転移を防いだりと、がん細胞の活動をさまざまなレベルで抑えている」(p121)
「祖先たちは、エネルギー摂取量の三分の二を野生の果物や野菜から摂取し、残りの三分の一は狩りで得た脂肪の少ない野生の動物の肉や卵である」(p132)
「老化という現象は、どんな細胞の環境も、その制御能力も、衰えていくことを意味している。(中略)。細胞の成長と増殖も、あまりうまく制御されなくなってくる。(中略)。私たちが備えている癌制御の機構その他の重要な機能は、80歳の老人を生かすために進化したのではない」(p268)
「発がん遺伝子ras-val12遺伝子を導入すると、通常細胞の細胞増殖が停止することが観察された。(中略)。発がん遺伝子による老化誘導現象は、生体のもつ防御機構の一つであるという仮説を彼らが提唱した」(p74)
「がんは無秩序な突然変異と自然選択により発生するので、個々のがんは遺伝的には独特である」(p71)
「突然変異のうちの少数だけががんの発育に必要であるが、たいていのがん細胞は数百~数千もの突然変異を起こしている」(p71)
「大腸の大きな腺腫が、がんに進展するには、17年ほどの時間がかかる」(p74)
「80歳になると、多くの男性は前立腺に、がんに見えるようなものができる。この腫瘍のうちの多くは、顕微鏡的なサイズに留まり、臨床上の問題を起こさない」(p74)
(7)「進化的医学の原理 Principles of Evolutionary Medicine」(Gluckmanら、2009年)の11章6節「進化的観点とがん Evolutionary perspectives and cancer」を読みました。
「リチャード・ドーキンスは、『自然選択は遺伝子の生存率の差に対して働くので、個々の個体は、遺伝子の一時的な連合体に過ぎない』と述べた。(中略)。彼の考えは『利己的な遺伝子』という言葉に要約されている。(中略)。しかし、他の進化的生物学者は、個体を重視している。なぜなら、機能的な自然選択や、生殖の成功の多寡は、あくまで個体を単位として起きるからである」(p268)
「群淘汰は、極めて限られた状況でしか起こらない」(p268)
(8)「がん:進化の遺産」(グリーブス、水谷訳、2002年)
「がんは我々が進化の歴史の中で課せられたペナルティーのようなものである。(中略)。DNAの複製、管理および修復の不完全さであり、そこから遺伝子の変異が起こりうる。遺伝子は神聖不可侵なものではない。もしそうだとしたら進化そのものが不可能であった。ある程度間違いやすいということが進化に必要であった」(p22)