今週の進化医学

(1)「食物中の最終糖化産物と、その摂取量を減らすための実際的なガイドAdvanced Glycation End Products in Foods and a Practical Guide to Their Reduction in the Diet」(J Am Diet Assoc. 2010 Jun; 110(6): 911-16.e12.)を読みました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3704564/

最終糖化産物の量(食品100gあたり)
           揚げたベーコン   91577 kU
        揚げたフランクフルト 11270 kU
キューリ         31 kU
バナナ          9 kU

(2)「自然にある化合物による蛋白質糖化の予防Prevention of Protein Glycation by Natural Compounds」(Molecules 2015, 20(2), 3309-3334)を読みました。
http://www.mdpi.com/1420-3049/20/2/3309/htm

「ブドウ糖には環状型とアルデヒド型があって相互に移行するが、アルデヒド型として存在するのはわずか0.2%である。それで、ブドウ糖は、糖化を最も起こしにくい糖の一つである。進化がブドウ糖を共通の炭水化物のエネルギー運搬物質に選んだのは、おそらくそのためであろう」

「糖化産物が体内に蓄積するといろいろな病気に結び付く。例えば、糖尿病、糖尿病性腎症、微小血管症、動脈硬化症などである」

「糖尿病の患者さんに見られる収縮期血圧の上昇は、血管の硬化によって説明されると考えられている」

「マウスの食事中の最終糖化産物の量を減らすことは、酸化ストレスを減らし、マウスの寿命を長くする」

(3)「食べ物による蛋白質の非酵素的糖化の予防:糖尿病の合併症を減らす観点よりPrevention of non-enzymic glycation of proteins by dietary agents: prospects for alleviating diabetic complications」(British Journal of Nutrition, Volume 101, Issue 11, November 2008, pp. 1714-1721)を読みました。
https://www.cambridge.org/core/journals/british-journal-of-nutrition/article/div-classtitleprevention-of-non-enzymic-glycation-of-proteins-by-dietary-agents-prospects-for-alleviating-diabetic-complicationsdiv/E59309453782A77CEB5ECBF5A0740A6F/core-reader

蛍光型最終糖化産物AGEの減少率
ショウガ 93%
緑茶   86%
リンゴ  43%
オレンジ 29%

(4)「いろいろな果物の抗糖化作用の強さAnti-glycation Activity of Various Fruits」(Anti-Aging Medicine, Aug. 31. 2013)を読みました。
http://www.anti-aging.gr.jp/english/pdf/2013/10(4)7076.pdf

「ヒト血清アルブミンとブドウ糖の糖化反応、コラーゲンとブドウ糖の糖化反応を、各種の果物がどの程度防ぐかを調べたところ、ザクロ、マンゴスチン、リンゴで抗糖化作用が強かった。リンゴの皮は、実よりも、コラーゲンモデルで12倍、ヒト血清アルブミンモデルで17倍の抗糖化作用があった」

(5)「人間の進化の年表Human Evolution Timetable Interactive」(スミソニアン研究所)を読みました。
http://humanorigins.si.edu/evidence/human-evolution-timeline-interactive

600万年前‥‥二足歩行の最も古い証拠
400万年前‥‥開けたところと森林の両方に住んでいた
260万年前‥‥最も古い道具(簡単な石器)
 80万年前‥‥火のコントロール
 20-80万年前‥脳の大きさの拡大
 1.2万年前‥‥植物の栽培、動物の飼育

(6)「進化生物学と人間の健康Evolutionary Biology and Human Health」(BioScience (2007) 57 (9): 729-734)を読みました。
https://academic.oup.com/bioscience/article/57/9/729/233568/Evolutionary-Biology-and-Human-Health

「2007年に行われたAIBS(生物科学のアメリカ研究所)の年次会合は、進化生物の重要性に焦点があてられた。ワシントンD.C.で行われた会議では、生物学者や医者らは、進化生物学と人間の健康との結びつきに注意を払った」

「ヒトの体やその免疫系やその他の系は、我々の早期の祖先から基本的に変わっていない」

(7)「西洋の食事の起源とその進化:21世紀の健康への意義Origins and evolution of the Western Diet: health implications for the 21st century」(Am J Clin Nutr February 2005, vol. 81  no. 2  341-354)の食塩の部分を読みました。
http://ajcn.nutrition.org/content/81/2/341.full.pdf

「新石器時代や産業時代に、食塩を食物に加えたことにより、ナトリウムの摂取は4倍に増加し、カリウムの摂取は4分の1に減少した」

「ナトリウムが多くカリウムが少ない食事は、多くの病気と関連する。例えば、高血圧、脳卒中、腎結石、骨粗鬆症、消化管がん、気管支喘息、運動誘発性気管支喘息、飛行機酔い、不眠、高山病、メニエール病などである」

(8)「食塩と高血圧:なぜ今もまだ議論があるのかSalt and hypertension: why is there still debate?」(Kidney Int Suppl (2011). 2013 Dec; 3(4): 316-320)を読みました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4089608/

「狩猟採集生活では1日の塩分摂取量は0.25gほどである。このような社会では高血圧は全く起こらない」

「最近、世界的規模の連合『食塩と健康への世界行動WASH』が始められている」
http://www.worldactiononsalt.com/

(9)「尿酸、人間の進化、食塩感受性の病因論Uric Acid, Homioid Evolution, and the Pathogenesis of Salt-Sensitivity」(Hypertension. 2002;40:355-360)を読みました。
http://hyper.ahajournals.org/content/40/3/355.long

「たいていの哺乳類では血清尿酸値は0.5~1.5mg/dLほどである。しかし、サルやヒトでは血清尿酸値はもっと高い」

「尿酸は、ナトリウムが少ない環境下でも、血圧を維持する」

「高尿酸血症は、ラットの食塩感受性を引き起こす」

「尿酸は、平滑筋細胞の増殖を刺激する」

「尿酸は、産業化社会で、高血圧や心血管疾患を引き起こす潜在的原因になっている」