(1)「なぜ人は走るのか」(ランニングの人類史)(トル・ゴタス、楡井訳、2011年)を読みました。ハインリッチ先生の「人はなぜ走るか」とは別の本です。

「走ることで人類は人間になった」(p33)

「長距離走にもアルコール依存や麻薬依存と同様、有害な副作用がある。トレーニングとレースを続けるために、怪我や痛みを度外視するというようなことだ」(p280)

(2)「人体600万年史」(上下、リーバーマン教授、kindle版、2015年)を読みました。

「人間は長い距離をらくらくと走れる数少ない哺乳類の一つなのであり、暑いなかでもマラソンを走れる唯一の哺乳類なのである」(p1952)

「大きな脳があったほうが賢くはなるかもしれないが、そのつけは大きく、多くの問題が発生する。ホモ・エレクトスが最初に進化してからずっと脳が大きくなりつづけてきたということは、それに必要なエネルギーを旧人類が十分に得られていたというだけでなく、賢くなることによる便益が費用を上回っていたということだ」(p2399)

「数は少ないが質の高い子に多くのエネルギーを投資して、彼らの脳が大きく成長できるように発達期間を引き延ばすのだ。脳が大きくなれば、学習能力は高まり、言葉や協力といった複雑な認知行動や社会行動も可能になる」(p2660)

(3)「走るために生まれたBorn to Run」(マクドゥーガル、近藤訳、2010年)を再度読みました。これは、真に偉大な本です。

「愛する能力と走ることを愛する能力にはなんらかの関係がある。(中略)。愛がなかったらわれわれは生きていない。走らなければ生存できなかった」(p140)

(4)「脳を鍛えるには運動しかない」(ハーバード大学准教授レイティRatey先生、野中訳、2009年)を再度読みました。

「生まれたばかりのニューロンは、使われなければ死んでいくのだ。(中略)。ニューロンは運動によって生まれ、環境から刺激を受けて生き残っていくのだ」(p62)

(運動と勉強の両者が必要であるようです)

(5)「ランナーズ・ハイは、人間の進化にある役割を果たした'Runner's High' Played a Role in Human Revolution」(アリゾナ大学、2012年3月22日)を読みました。
https://sbs.arizona.edu/news/runners-high-played-role-human-evolution

「ヒトやイヌのような長距離を走る動物では、有酸素運動は、脳内の報酬系の引き金を引くが、毛長イタチのような長距離を走らない動物では引き金を引かない」

(6)「ランナーズ・ハイの進化:持久走はどのように脳を変革するかThe Evolution Of The Runner's High: How Endurance Exercise Changes Your Brain」(Medical Daily、2015年2月27日)を読みました。
http://www.medicaldaily.com/evolution-runners-high-how-endurance-exercise-changes-your-brain-323734

「エンドルフィンの分子は大きいが、エンドカンナビノイドの分子は小さい」
(それで、前者は血液脳関門を通過しないが、後者は通過するとのことです)

(7)英語版Wikipedia「身体的運動の神経生物学的効果Neurobiological effects of physical exercise」を読みました。
https://en.wikipedia.org/wiki/Neurobiological_effects_of_physical_exercise

「運動は、認知のコントロールや記憶の機能に関して、そのいろいろな側面を改善させる。継続して行われる有酸素運動は、特に、注意力、情報処理速度、認知の柔軟さ、抑制コントロール、ワーキング・メモリーの更新とその容量、説明的記憶力、空間的記憶力などを改善させる」

(8)「薬物依存に対する新しい治療としての運動:神経生物学的、段階従属的な一つの仮説Exercise as a Novel Treatment for Drug Addiction: A Neurobiological and Stage-Dependent Hypothesis」を読みました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3788047/

「薬物依存が形成される時期や、再発する時期に、自発的な運動を行えば、効果的な反応が引き起こされる。しかし、そうした時期に、強制された運動を多く行うと、有害な反応が引き起こされる」

(9)「運動:脳を若く保つための万能薬Exercise: Perfect Elixer to Keep the Brain Young」(ハーバード大学助教授レイティRatey先生のスライド)を見ました。これはレイティ先生が作成された楽しいスライドです。
http://www.altermedresearch.org/slides2016/ExerciseAndBrain.pdf

スライド16:立って学ぶ教室が紹介されています
スライド40:ヒポクラテス「気分がすぐれないときには散歩をしなさい」
スライド57:アインシュタイン「自転車に乗っていて相対性理論を思いついた」
スライド68:日常生活のお勧めが列挙されています
「ブドウ糖を毒物と考えよ」とのことですが、果糖も毒物と考えるべきです。つまり、砂糖は毒物です。

(10)「伝統としての走りRunning as tradition」(ハーバード新聞Harvard Gazette、2016年4月14日)を読みました。
http://news.harvard.edu/gazette/story/2016/04/running-as-tradition/

「ボストンマラソンではランナーたちは数百万ドル(数億円)の寄付金を集める。『なぜ人々は42.195㎞を慈善のために走るのか』という問いに、リーバーマン教授は次のように答えた。『我々は、これまで互いを助けるために走ってきたのです。大昔の人々は、狩猟のため、安全のため、雨を避けるため、儀式のために走りました。しかし、走ることは、互いを助けようとするコミュニティー活動の一つなのです。その点で現代のマラソンも何ら変わりはないと思います』」

(狩猟採集生活をするヒトは、獲物を数時間走って追跡して手に入れます。入手した肉は部族内で均等に分配されます)