今週の進化医学
一夫一婦制について、次の文章を読みました。
(1)「生涯連れ添うことが常に良いというわけではないのはなぜか Why pairing up for life is hardly ever a good idea」(英国国営放送BBC、2016.2.13)
http://www.bbc.co.uk/earth/story/20160213-why-pairing-up-for-life-is-hardly-ever-a-good-idea
一夫一婦制の「擬態毒ガエル」が紹介されています。両生類のうち一夫一婦制であることが初めて判明したのが、このカエルであるそうです。このカエルは、貧栄養の小さな水たまりに産卵して、夫婦ともにオタマジャクシにエサを運びます。父親から見て、自分の子どもであることが確実であり、しかも育児に手間がかかります。一夫一婦制が成立する条件がそろっています。
また「アホウドリ」が紹介されています。アホウドリは一生涯のつがいとなります。しかし、アホウドリのヒナの14~24%は、つがいの外に父親がいます。アホウドリは、社会的一夫一婦制ではあっても、必ずしも性的一夫一婦制ではありません。
ケンブリッジ大学動物学のClutton-Brock氏の研究が紹介されています。同氏は2500種の哺乳類を調査して、「メスが得にくい場合には、オスは、特定のメスを確保するために一夫一婦制を行う」と結論しました。
また大学ロンドンのKit Opie氏による霊長類の研究が紹介されています。同氏は「霊長類では、血縁の無い子どもは、他の雄によって殺される。ヒトの雄は、自分の子どもを殺されないために一夫一婦制を行う」と結論しました。
(2)「死が二人を分かつまで: 一夫一婦制の進化 Til Death Us Do Part: The Evolution of Monogamy」(Medical Daily、2015.11.25)
http://www.medicaldaily.com/til-death-do-us-part-evolution-monogamy-362942
「5000種の動物のうち、性的に一夫一婦制であるのは、わずかに3~5%である。進化論的に言えば、雄が自分の遺伝子を広めるためには、複数の雌と付き合った方が利点が多いのである」
「『不倫者の高揚 cheeter's high』があるので不倫をする人がいる」
自分の子どもを他人に育ててもらうのが一番楽です。子育ての苦労が不要です。托卵も同じです。「一盗二卑三妾四妓五妻」という言葉もあります。
(3)「一夫一婦制とヒトの進化 Monogamy and Human Evolution」(The New York Times、2013.8.2)
http://www.nytimes.com/2013/08/02/science/monogamys-boost-to-human-evolution.html
「リバプール大学のEmma Nelson氏は、古代のヒトの化石について、その指の骨を調べた。そして440万年前では、一人の男が、多くの女とつがい形成を行っていたことが明らかになった。また、350万年前では、一夫一婦制の方向に移行していたことが明らかになった」
(一夫一婦制では雄と雌の体格はあまり変わりませんが、一夫多妻ではゴリラやオットセイのように雄が雌よりかなり大きくなります)
「一夫一婦制になれば、父親による子どもへのケアが容易に行える」
「父親が、母親や子どもと一緒にいるようになれば、父親は、子どもが生存する確率を高めることが可能になる。父親は子どもを運び、毛づくろいをし、外敵から守る」
「ヒトは、狩りをする能力を獲得し、肉食動物が食べ残した死肉を食べるようになった。父親はそれを子どもにも食べさせた。(中略)。タンパク質やカロリーを特別に補うことにより、我々の脳は、他の哺乳類より格段に大きくなった」
「Opie氏は、『一夫一婦制により、我々の脳は格段に大きくなった』と述べた」
なお、このOpie氏(大学ロンドン)は、BBCの番組に登場しています。
https://www.youtube.com/watch?v=LJ_LIqIT_Iw
https://www.youtube.com/watch?v=LJ_LIqIT_Iw
(4)「我々は進化して一夫一婦制になったのか Did We Evolve to Be Monogamous?」(Psychology Today、2016.10.31)
https://www.psychologytoday.com/blog/culture-mind-and-brain/201610/did-we-evolve-be-monogamous
「ヒトは、非常に長い子ども時代を過ごす。子どもは、弱く、傷つきやすく、ゆっくり学ぶので、基本的な欲求を満たすためには、誰かを頼らなければならない」