「進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命」(井村著、2008年)を再度読みました。
(1)「体細胞に生じた突然変異はその個体だけのものであるが、生殖細胞に生じた突然変異は子孫に伝えられる」(p20)
発がん遺伝子のスイッチが入ったり、がん抑制遺伝子のスイッチが切れたりするような変異が、計5、6個に積み重なるとがんになります。自分の体細胞にそうした変異が4個できても大丈夫です。しかし、自分の生殖細胞に変異が1個でもできると、それは自分の子どもや孫に代々引き継がれて行きます。生殖細胞のがん予防は、体細胞のがん予防より、厳重に行う必要があります。
(2)「還元糖のアルデヒド基がタンパク質のアミノ基と結合し、アマドリ転移を経て、非可逆的な後期反応生成物となる。これが老化現象や血管合併症の一つの原因となっている」(p89)
サイダーとグルタミン酸をまぜて熱すると、糖化反応(メイラード反応)が起きて、茶色の物質ができます。こうした糖化反応の起こりやすさは、糖によって異なります。ブドウ糖より果糖の方が、糖化反応を起こしやすいとする主張があります。
(3)「一つの疑問は、もし内因性オピオイドが関与しているのなら、脂肪食や蔗糖の摂取で依存性が起こるのではないかということである。動物実験の結果は、どうもそうらしい」(p132)
砂糖をやめられない人がいるかもしれません。その場合には砂糖依存症として治療する必要があります。砂糖の摂取を徐々に減らすのではなく、きっぱりやめる方がうまく行く場合があります。
(4)「脂質の中でも長鎖不飽和脂肪酸は必須脂肪酸と呼ばれ、体外からの摂取が不可欠であるが、それが不足すると認知機能や行動に異常がでることが知られている」(p141)
油分を単に減らせばよいということではなく、よい油を摂る必要があります。良い油とは、魚の油や植物油です(パーム油を除く)。
(5)「アメリカ原住民では一般に糖尿病の頻度は高いが、とくにピマ・インディアンで高く。成人全体を通して有病率が30%以上、60歳以上の女性では80%を超えている」(p150)
米国政府は、インディアンに対して、保護地域を設け、生活の支援を行っているとのことです。それにより、急速な生活の西欧化に伴って、肥満と糖尿病が著明に増加したそうです。
(6)「(沖縄の伝統の)食事は、さつまいも、野菜、昆布、大豆、魚、豚肉で、多価不飽和脂肪酸の摂取が多い」(p202)
沖縄の長寿村では、100歳になっても農業や漁業を続けているそうです。自然食品を摂って、健康が維持されます。そのような状態なら、老人問題は存在しないことになります。
(7)「体温調節の視点から見ると、陸棲の哺乳類ではほとんどヒトにのみが体毛を失っており、これは耐久走によって生産される熱の発散に有利であったためではないかと考えられている」(p221)
ヒトは、動物を長時間追い続けることによって手に入れたとのことです。体毛のある動物は、長時間走ることができません。
(8)「耐久走力と体毛の喪失、肉食、脳の発達、集団行動と社会性が、相伴って進化し、それがいっそう進んで今日の現生人へとつながったものと考えられる」(p222)
(9)「われわれの体は、石器時代の環境に適応したように作られている」(p224)
ヒトは、毎日かなりの距離を移動し、自然な食品を食べるとうまく行くように作られています。