(1)垂水病院副院長の麻生克郎先生の「アルコール問題に世界はどう取り組んでいるか」という小冊子を読みました。A5で40ページあります。

これは、神戸市と神戸市断酒協議会が主催した神戸市民酒害セミナー(平成28年1月11日)で、麻生先生が話された内容です。
http://www.city.kobe.lg.jp/life/community/handicap/img/27_24syugaisemina.pdf

麻生先生は、世界保健機構WHOの「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」(2010年)について解説しておられます。

また、日本でも「アルコール健康対策基本法」(2013年)が成立したことを紹介しておられます。

麻生先生によれば、外国ではアルコール飲料のCMが禁止されている場合が多いが、日本ではほぼ自由にCMを行うことができるとのことです。

また、麻生先生は、米国カリフォルニア州の法律を紹介しておられます。「習慣的、常習的飲酒者や、明らかに酩酊している人に、何らかのアルコール飲料を販売、提供、供与することは犯罪である」とのことです。そして、この犯罪を犯した人は、「その飲酒者の身体や財産の損害について、民事賠償責任を有する」とのことです。

麻生先生を見習って、私もWHOのアルコールのページを見ました。麻生先生はWHOの10項目の戦略を紹介しておられましたが、私は別の文書で、7項目の戦略を見つけました。

・アルコール飲料の販売促進活動を規制する(特に若い人に対する販売促進活動を規制する)
・アルコールの入手を規制して制限する
・飲酒したら車を運転しない政策を立法化する
・課税や価格政策を通じてアルコールの需要を減らす
・アルコールの害の多い飲み方によって引き起こされる公衆衛生上の問題に対して、人々の注意を喚起する。効果的なアルコール政策への支援を行う
・アルコールの飲用に問題のある人に対して、利用可能で費用負担可能な治療を提供する 
・健康サービスでスクリーニングを行い、害の多い飲み方をする人に対して、簡便な介入プログラムを実施する
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs349/en/

また、国民一人当たりのアルコール消費量を示すグラフを見ました。日本はアジアの一員としては平均的なアルコール消費量ですが、ヨーロッパ諸国より少なく、イスラム教の国より多いというところです。
http://gamapserver.who.int/mapLibrary/Files/Maps/Global_consumption_percapita_2010.png

(2)ミュージシャンのプリンスという人が亡くなりました。腰痛に対する鎮痛剤を過剰に服薬していたそうです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160509-00000068-san-n_ame

ニューヨークタイムズによれば、米国において、歯痛や腰痛手術後にPercocetやVicodinというオピオイドが数日間投与されることがあるそうです。しかし、これらの鎮痛剤は長期に服用するほど、依存性が強くなるとのことです。
http://www.nytimes.com/2016/05/06/health/prince-opioid-addiction.html?_r=0

ネットによれば、前者Percocetは、オキシコドンというオピオイドと、アセトアミノフェンとの合剤で、後者Vicodinは、ハイドロコドンというオピオイドと、アセトアミノフェンの合剤であるとのことです。

日本にも類似のコンセプトの薬があります。

トラムセットは、トラマドールというオピオイドと、アセトアミノフェンの合剤です。やはり、長期投与で依存性が強くなるとされています。このトラムセットは、麻薬の扱いにはなっておらず、一般薬の扱いになっています。

マイケル・ジャクソンも寝るための薬により死亡しています。いずれのケースもイアトロジェニック(医原性)であると考えられます。

(3)韓国で加湿器の殺菌剤により死者が出たとのことです。加湿器に殺菌剤が混ぜられて、主に、乳幼児が死亡したとのことです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160505/k10010509691000.html

日本の厚生労働省は、平成23年の韓国における加湿器用除菌剤の回収について、情報提供を行っています。この文書の中で、厚生労働省は次のように述べています。「加湿器には水道水以外をしないようにするなど正しく使用しましょう。除菌剤や薬理作用のある化学薬品の加湿器への使用は、その成分やばく露状況によって健康に影響を与えるおそれがあるので、使用しないようにしましょう」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z31f-att/2r9852000001z44g.pdf

NNNニュースに出演された大谷義夫先生は「加湿器の水のプールの中に殺菌剤 消毒剤を入れることはありえない。考えられない」と述べておられます。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160506-00000066-nnn-int

そもそも殺菌剤は、濃度の管理が重要です。正しい濃度で使わないと、効果が無くて、害だけが出ます。加湿器に混ぜると、細かい水滴から水分が急速に蒸発して、高濃度になります。それを吸い込むと肺の細胞に損傷を与えます。乳幼児など、弱くて傷つきやすい人にダメージが与えられます。

加湿用殺菌剤が有害であっても、その有害性が証明されるまでには、今回のように、かなりの時間がかかります。

厚生労働省が定めた加湿の仕方を守るのがお勧めです。加湿器には、水道水以外は使わないということです。また殺菌剤や消毒剤を使用する場合には、厚生労働省が定めた用法(特に濃度)を守ることが重要です。