(1) 「加齢と健康についての世界報告書World Report on Ageing and Health」、(世界保健機構World Health Organization 2015年)を読みました。
http://www.who.int/kobe_centre/mediacentre/world_report_on_ageing_and_health_eng.pdf

下記のように、WHOによれば、お年寄りの寿命は伸びたものの、お年寄りに対する予防医学はうまく行っていないとのことです。身体を動かさないお年寄りが多く、栄養不良のお年寄りが多いとのことです。また、お年寄りの自己決定権が尊重されず、お年寄りの学習など、生きがいを高めるような活動があまり行われていないとのことです。

「人口の高齢化に関して、現在の公衆衛生的な対応は、明らかにうまく行っていない」(p18)

「お年寄りへの長期的なケア・モデルは、不十分であり支持できない」(p18)

「WHOの世界健康調査によれば、70~79歳の3分の1と80歳以上の2分の1の人は、お年寄り向けのWHOによる身体的活動の基礎的ガイドラインを満たしていない」(p71)

「年齢と共に総エネルギーの必要量は減少するが、たいていの栄養素の必要量はあまり減少しない。それで、お年寄りの栄養不良は増加する傾向にある」(p72)

「栄養不良は、認知機能の低下を引き起こす」(p72)

「お年寄りの栄養不良は、しばしば見過ごされ、診断されていない」(p72)

「加齢により、ヒトの情報処理の速度は遅くなり、ワーキング・メモリーの働きが低下し、実行機能が低下し、注意や制止の働きが低下する。しかしながら、自動的な直観的な認識過程は、不変ないし若干改善する。また、加齢とともに、自己認識が深まり、自己コントロールの技術が上達し、長年かけた発展により社会的関係が安定化するので、お年寄りは年齢と共に社会的、精神的に成長するのである」(p174)

「(何かを学ぼうとするなど)自分の人生をコントロールできるということは、お年寄りの幸福にとって中心的な重要事項である」(p174)

「(お年寄りが)新しい知識を得たり新しい技術を身に着けたりすることは、自分の存在を意識し、自分のアイデンティティ(自己同一性)を意識し、自分の生きる意味を意識するのに役立つ」(p176)

「健康的な加齢の過程には、お年寄りが、自分の時間の使い方や、どんな治療を受けるかや、何を学ぶかや、どこに住むかなど、自分の人生に影響を及ぼす決定に参加することが必要である」(p177)

「過度に保護的な介護者は、お年寄りの転倒を恐れたり、お年寄りにかける手間を省くために、お年寄りが自由に動き回ることを禁じて、お年寄りの活動を減らすことがある」(p180)



(2) 「加齢と人生Ageing and life-course」、(Fact file: Misconceptions on ageing and health、世界保健機構World Health Organization) を読みました。
http://www.who.int/ageing/features/misconceptions/en/

・老人は一人一人異なっている
・介護を要する老人は、老人全体のうちの少数である
・人口が高齢化すると医療費が増大する。しかし思ったほどではない
     低所得の国では、お年寄りの医療費は若い人より少ない
     高所得の国では、一人当たりの医療費は70歳ごろよりかなり減る
・お年寄りにかけるお金はコストではなく投資である。
     お年寄りは納税する(社会経済に貢献する)
     お年寄りは消費する(社会経済に貢献する)
・老化はすべて遺伝によるものではない
     長寿の変動の25%は、遺伝によるものである
     長寿の変動の75%は、体と生活環境の相互作用によるものである
・定年は、若い人の雇用を生み出さない
     働く人の生産性を判断するためには、年齢は良い指標ではない
     この差別的な制度は廃止されるべきである


(3)「海の祭礼」(吉村昭)を読みました。
通訳の森山氏が、米国人のマクドナルド氏から英語を学ぶ話です。鳥飼先生の本で紹介されていました。

私はこれまでに「日本回想記」(マクドナルド著)を対訳で読んだことがあります。p227に、日本人はエルの音が発音できずに、子音の後に母音を付けるので、MacdonaldをMacdonardoと発音すると書かれています。