長寿医学では、寿命を延ばすための研究が行われています。長寿医学でよくとりあげられるのが、カロリー・リストリクションCalorie Restrictionという言葉です。これは、摂取カロリーを減らすと寿命が延びるということです。このこと自体は、不思議なことではありません。腹八分目が勧められています。また、戦時中などの食糧難の時に、糖尿病などの慢性疾患が減ることはよく知られています。また、飢餓の時に、活動量を落として細く長く生きようとするのは、理屈に合っています。しかし、実際にはどうなのでしょうか。
また長寿医学では、レスベラトロールResveratrolという言葉もよく取り上げらます。このレスベラトロールは、赤ブドウの皮に含まれる成分です。これを摂取すると慢性疾患が減るということです。地中海食は、良い食事であり、慢性的な病気を減らします。だから、赤ブドウの成分が、病気を減らしても不思議はありません。しかし、実際にはどうなのでしょうか。
これについて、以下の文章を読んでみました。
(1)「老化を予防することは可能かCan We Prevent Aging?」 米国国立加齢研究所NIA
https://www.nia.nih.gov/health/publication/can-we-prevent-aging
https://www.nia.nih.gov/health/publication/can-we-prevent-aging
この文章は、カロリー・リストリクションについて、次のように述べています。
・いくつかの生物では成り立つが、いくつかの生物では成り立たない
・人間における研究は少ない
・現在、人間についての研究が行われているところである
・過体重の人が摂取カロリーを20~30%減らすと慢性的な疾患が減る
・人間における研究は少ない
・現在、人間についての研究が行われているところである
・過体重の人が摂取カロリーを20~30%減らすと慢性的な疾患が減る
このように、まだ研究中であって、明確な結論は出ていないようです。実験動物は、ストレスがあり、運動不足ですから、過食してメタボになっているかもしれません。メタボの動物が餌の量を減らせば、良い効果はあって当然です。また、肥満傾向の人が食べる量を適切に減らせば、良い影響は当然あるでしょう。
元の食べている量が問題になります。また、どこまで減らすかも問題です。我々が、カロリー・リストリクションを行う場合に、具体的に何キロカロリー食べればよいのでしょうか。長寿医学のいくつかの本には、具体的には書いてありません。厚生労働省などの栄養摂取基準は、必要量に安全率をかけたものです。それを3割~4割も減らすのは危険です。
またこの文章は、レスベラトロールについては、次のように述べています。
・レスベラトロールが、人間の健康や寿命にどのような影響を及ぼすかの結論を出すにはまだ早すぎる
・レスベラトロールが、人間の健康や寿命にどのような影響を及ぼすかの結論を出すにはまだ早すぎる
(2)「赤ワイン、抗酸化剤、レスベラトロール:心臓に良いかRed wine , antioxidants and resveratrol: Good for your heart?」 メイヨー・クリニックMayo Clinic
http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/heart-disease/in-depth/red-wine/art-20048281
この文章はレスベラトロールに関して次のように述べています。
・赤ワインが、他のアルコールより優れているという明らかな証拠は無い
・レスベラトロールについての研究は、大半が動物に対するものである
・マウスでは、肥満や糖尿病を防ぐ効果があるようであるが、人間に当てはめると1日に赤ワインを
・レスベラトロールについての研究は、大半が動物に対するものである
・マウスでは、肥満や糖尿病を防ぐ効果があるようであるが、人間に当てはめると1日に赤ワインを
1000リットル飲むほどの量である
・アメリカ心臓病協会AHA、米国国立心臓肺血液研究所NHLBIは、心臓病を予防する目的でアルコール
・アメリカ心臓病協会AHA、米国国立心臓肺血液研究所NHLBIは、心臓病を予防する目的でアルコール
を摂取することを勧めていない
・単にブドウを食べたり、ブドウ・ジュースを飲んだりすれば良い。ピーナッツやブルーベリーにも含まれる
・単にブドウを食べたり、ブドウ・ジュースを飲んだりすれば良い。ピーナッツやブルーベリーにも含まれる
このように、この文章は、レスベラトロールのサプリメントを、あまり勧めていないようです。アルコールも勧めていません。(いくつかの長寿医学の本は、アルコールの害には触れていません)。