(1)「よくわかる認知症の教科書」(長谷川和夫、朝日新書、2013年)を読みました。

長谷川先生は、パーソン・センタード・ケア(個人を中心とするケア)について、次のように説明しておられます。

「認知症の人に高みから同情し、かわいそうだと思って保護するのではなく、その人の内的体験の中に分け入って、その人に共感すること」(p135)。

また、長谷川先生によれば、「(認知症の)リハビリの成果は、目に見える能力の向上というより、豊かな表情や笑いの数に置くことが重要です」とのことです(p91)。

(2)「人を中心とするケアPerson-centred care」、(英国国立医療技術評価機構NICE, cg42)を読みました。
https://www.nice.org.uk/guidance/cg42/chapter/person-centred-care

人を中心とするケアについて、次のような説明がありました。

「人を中心とするケアでは、認知症を持つ人の年齢や認知の重症度には関係なく、その人の人間的価値を重視する」

「人を中心とするケアでは、認知症を持つ人の独特な個性を重視する」

(3)「認知症ケアにおける人を中心とする方法Person Centred Approach in Dementia Care」 (香港)(ポジティブな加齢のための騎手クラブセンターJockey Club Centre for Positive Ageing)を読みました。これは、 イラストが多くて楽しい文書です。
http://ssweb.cityu.edu.hk/conferences/swconf/ppt/Workshop4/Person%20Centre%20Care%20-%20print.pdf

次のように、「問題を中心とするケア」と「人を中心とするケア」を比較しています。

「問題を中心とするケア」‥‥問題行動は、脳の病変によって生じたものであり、薬物などにより、直ちに充分に治療することが必要である。

「人を中心とするケア」‥‥問題行動は、満たされないニーズによるコミュニケーションの試みと受け取るべきである。ケアする者は、コミュニケーションの意味を把握し、ニーズに注意を向ける必要がある。

(4)認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)(概要)(厚生労働省)を読みました。
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=302841&name=file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1_1.pdf

「行動・心理症状(BPSD)が見られた場合にも、的確なアセスメントを行い、薬によらない対応を第一選択とすることを原則とします」

(5)「ケアのためのガイドライン:ケア・ホームで生活する認知症の方のための、人を中心とするケアGuidelines for Care: Person-centred care of people with dementia living in care homes」、(アルツハイマー協会Alzheimer Society 2011年)を読みました。
http://www.alzheimer.ca/~/media/Files/national/Culture-change/culture_change_framework_e.pdf

「全てのガイドライン、合意文書、系統的総説では、アルツハイマー病を持つ人の次のようなニースに焦点が当てられている」

「アルツハイマー病の人は、その人の個人的な好みに合致した、意味のある人間関係、社会的交流、素敵な儀式的行動、落ち着いた環境、刺激物が少なくリラックスできる雰囲気、個々の人の独特なニーズに合致するケアのスケジュールを必要としている」

(6)「年長の患者さんの認知機能低下の評価:プライマリーケアの医師のための簡便なガイドAssessing Cognitive Impairment in Older Patients: A Quick Guide for Primary Care Physicians」、(米国国立健康研究所NIH、Alzheimer's Disease Education and Referral Center)を読みました。
https://www.nia.nih.gov/alzheimers/publication/assessing-cognitive-impairment-older-patients

「(診断や治療を受けないと)多くのケースでは、認知のトラブルは、時間の経過とともに悪化する」

「次のような患者さんは、認知機能のスクリーニング・テストを受けるべきである。
・本人、家族、その他の人が、本人の記憶や考え方の変化を心配する場合
・医師が、本人に記憶や考え方の変化やトラブルがあることを認める場合
・本人が80歳以上である場合」

(7)「記憶力低下を理解するためにUnderstanding Memory Loss」、(米国国立加齢研究所National Institute of Aging)を読みました。この文書は、非常に役に立つ文書です。
https://www.nia.nih.gov/alzheimers/publication/understanding-memory-loss/serious-memory-problems-causes-and-treatments

「我々は、人の名前を忘れたり、カギをどこかへ置き忘れたり、入口のドアをロックしてしまったりする。このように、時々忘れることは正常である。しかし、お金の崩し方、電話の使い方、家へ帰る方法を忘れたとすれば、それは重大な記憶障害の徴候かもしれない」

「重大な記憶障害では、次のような徴候が現れるかもしれない。
・同じ質問を何度も何度も繰り返す
・よく知っている場所で迷子になる
・指示に従えなくなる
・時間、人、場所について混乱する
・自分の世話ができなくなる(あまり食べなくなる。風呂に入らなくなる。危ないことをする)」

「記憶の役に立ついくつかの方法
・新しいことを学ぶこと
・地域や学校や教会で、ボランティア活動をすること
・友人や家族と時間を過ごすこと
・大きいカレンダー、すべきことのリスト、自分用のノートなどの記憶補助手段を使うこと
・自分の財布、カギ、メガネを毎日同じ場所に置くこと
・十分に休むこと
・運動をしてよく食べること
・アルコールをあまり多く飲まないこと
・何週間もうつ状態になっている場合は、助けを求めること」

(8)「イギリスの認知症ケア動向Ⅵ」(認知症国家戦略の開発)、(ひもときネット、認知症介護研究・研修センター)を読みました。
http://www.dcnet.gr.jp/retrieve/kaigai/pdf/uk09_care_06.pdf

この文書によれば、英国政府は、認知症国家戦略を作成したとのことです。その戦略の目標の一つは、「認知症について国民および専門家の意識と理解の向上を図る」ことであり、それにより啓発キャンペーンが行われました。その啓発キャンペーンで伝えられた内容の一つは、例えば次のようなものであったとのことです。

「健康的な食事、禁煙、定期的な運動、飲酒の制限、頭部のけがの予防など、私たちが健康全般に気をつければ、認知症リスクを低下させることができる」

(9)「運動、身体的活動:国立加齢研究所からあなたへの毎日のガイドExercise, Physical Activity: Your Everyday Guide from the National Institute of Aging」、( 米国国立加齢研究所National Institute of Aging)を読みました。
https://www.nia.nih.gov/health/publication/exercise-physical-activity/introduction

「恒常的に運動を行って、体を活動的に保つことは、老人を含むほとんど全ての人にとって、身体と精神の健康を保つ上で重要である」