(1)「高齢者心理学」(権藤恭之編、2008年)を読みました。

この本によれば、記憶には次のような種類があり、年齢の影響を顕著に受けるのは2、3であり、年齢の影響をほとんど受けないのが1、4、5であるそうです。
1.短期記憶‥‥‥‥‥(例えば、数秒から数分間覚えておく)
2.作動記憶‥‥‥‥‥(例えば、1-4-6-7を逆に言う)
3.エピソード記憶‥‥‥(例えば、昨日何をしたかを答える)
4.意味記憶‥‥‥‥‥(例えば、交通信号の赤はどういう意味かを答える)
5.手続き記憶‥‥‥‥(例えば、スポーツをする)
6.展望的記憶‥‥‥‥(例えば、約束の時間に人と会う)

(このように、高齢になったからといって、すべての記憶が低下するわけではないようです。例えば、ピアニストのルービンシュタインは、80歳を超えても演奏活動を続けました。(88歳の時の演奏)。また彼は、86歳の時に、主に記憶だけに頼って分厚い自伝を書き上げました。高齢になっても、こうした記憶力はあまり低下していないようです)

(2)「関節炎Arthritis」 ハーバード大学hHarvard Health Publications)を読みました。以下のような文がありました。運動は、有効な治療の一つであるようです。
http://www.health.harvard.edu/topics/arthritis

「関節炎の痛みにより、日常活動が妨げられることがある。関節炎のうち、変形性関節症とリウマチ性関節炎は、最もありふれたタイプの関節炎である」

「関節炎の痛みに対処するために最も良い方法の一つは、運動である。恒常的に運動することは、関節の機能を保つのに役立つだけでなく、関節の硬さを取り、痛みや疲労を鎮める。運動以外の方法としては、服薬、理学療法、関節置換手術、代替医療などがある」

(このように、ハーバード大学は、関節炎の痛みに対して、運動を勧めています)

 (3)「運動は、関節炎に悪いのではない。良いのである Exercise is good, not bad, for arthritis」(ハーバード大学Harvard Health Publications)
http://www.health.harvard.edu/blog/exercise-is-good-not-bad-for-arthritis-201305086202

「股関節や膝関節や足関節やその他の関節に痛みがある場合には、多くの人は運動を避ける。しかしそれは、益より害が大きい」

「週のうち大半の日に歩くことは、実際に、関節炎の痛みを減らし、他の症状を改善させる。変形性関節症を持つ人では、歩行以外に、筋肉トレーニング、水を用いた運動、バランス運動も、痛みを減らし、機能を改善させる。股関節や膝関節に関節炎を持つ人には、水泳や自転車乗りがより良い」

(4)「関節炎のための身体的活動Physical Activity for Arthritis」 米国疾病予防センターCenters for Disease Control and Prevention
http://www.cdc.gov/arthritis/basics/physical-activity-overview.html

「医療機関が、関節炎を持つ人に安静を指示したのは、ずっと昔のことである。変形性関節症、リウマチ性関節炎、結合組織炎、狼瘡などを含む大半の関節炎では、身体的な活動は、痛みを減らし、関節の機能、動き、気分、生活の質を改善させる」

「関節炎を持つたいていの人は、一人用の身体活動プログラムを安全に行うことができる。また、地域において、効果が証明された身体活動プログラムの一つを行うことができる。「関節の痛みを減らすヴィデオ」を見ると、身体的活動の効用と、関節炎を持つ人に役立つ運動の種類と分量について学ぶことができる」

(このように、米国の政府機関は、関節炎の痛みに対して、運動を勧めています)

(5)「変形性関節症のための米国の公衆衛生に関する行動計画、2010年A National Public Health Agenda for Osteoarthritis 2010」 リウマチ基金Arthritis Foundation, 米国疾病予防センターCenters for Disease Control and Prevention
http://www.cdc.gov/arthritis/state_programs/pdf/oaagenda.pdf

「関節炎は、障害の最も多い原因である。変形性関節症は、関節炎のうちの最もありふれたタイプである」

「股関節や膝関節に変形性関節症を持つ成人に対して、衝撃が少なく中等度の強度の有酸素運動と筋肉強化運動が、健康への公衆衛生的な介入として、広く推奨されなければならない」

「変形性関節症の予防と治療のために、体重の管理が奨励されなければならない。変形性関節症を持つ成人は、一般国民向けの、栄養とダイエットの国のガイドラインを守るべきである。そうすれば、必要なカロリーを摂取しながら、質の高いダイエットを行うことができる」

(6)「変形性関節症のケアと管理Osteoarthritis: care and management」英国国立医療技術評価機構NICE
https://www.nice.org.uk/guidance/cg177/chapter/1-Recommendations

「変形性関節症を持つ人に対して、年齢、併存する疾患、痛みの重症度、障害の重さに関係なく、治療の中心として運動を行うようにアドヴァイスすべきである。運動には次の2つが含まれなければならない。
   ・局所的な筋肉の強化
   ・全身的な有酸素運動」

(その他、温めること、冷やすこと、体重の管理、薬物療法、関節内注射、関節手術などについて言及があります。例えば関節内注射については、「変形性関節症による中等度から重症の痛みがある場合に、ステロイドの関節内注射を、中心的治療に対する付加的治療として考慮すべきだ。また、変形性関節症の管理として、ヒアルロン酸の関節内注射を行ってはならない」と述べています)。

(このように、英国の政府機関は、関節炎に対して、運動を勧めています)

(7)「膝の変形性関節症に対する証拠に基づいた対処法:リウマチに対するヨーロッパ連合EULARによる2003年の推奨」EULAR Recommendations 2003: an evidence based approach to the management of knee osteoarthritis
http://ard.bmj.com/content/62/12/1145.long

運動療法について、次のように述べています。
「複数のランダム化比較試験によれば、関節に対する特異的な運動は、変形性関節症の痛みを減らし、機能を改善させる」

膝の変形性関節症の治療については、次のように述べています。
・薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行う
・治療は一人ずつ別々に、患部の状態や患者さんの状態に合わせて、最適な治療を行う
・非薬物療法には、患者教育、運動、補助器具の使用、体重の減量などがある
・薬物療法には、NSAID、アセトアミノフェン、選択的COX-2阻害剤、オピオイドなどがある
・長期作用型のステロイドの関節内注射が適応となることがある
・関節置換術が考慮されることがある

(8)「ガイドラインは、医師が変形性関節症の最も良い治療を選択するのを助ける Guidelines Can Help Doctors Choose the Best OA Treatment」関節炎基金Arthritis Foundation
http://www.arthritis.org/about-arthritis/types/osteoarthritis/articles/acr-treatment-recommendations-oa.php

「(変形性関節症の非薬物療法として)運動と体重減少は、特に重要である。リウマチに対するヨーロッパ連合EULARと米国整形外科学会は、変形性関節症の治療のガイドラインを作成しているが、いずれも、変形性関節症に対してまず行うべき治療として、運動と体重減少が重要であることを強調している」



(以上のように、関節炎に対して上記のどの機関も運動療法の有効性を強調しています。関節炎に対しては、運動療法がお勧めです。運動療法の内容と分量については、主治医にお尋ねして下さい。骨折など、運動をしてはいけない状態もあります。運動療法を始める場合は、1日に5分間ほどのごく少量から始めて、少しずつ運動量を増やして下さい。また、痛みの強い日は、運動を休んで下さい。軽症の人で、最終的な目標となるのは、1日に30分間、または週に150分間、速足で歩くくらいの運動量です)。