「脳卒中治療ガイドライン2009年」を再度読みました。すでに、2015年版がありますので、これは古い版です。
Ⅶ章.リハビリテーション
体をうごかすことに関して
・有酸素運動トレーニングもしくは、有酸素運動と下肢筋肉強化を組み合わせたトレーニングは、有酸素性能力、歩行能力、身体活動性、QOL、耐糖能を改善するので強く勧められる
・起立‐着席訓練や歩行訓練などの下肢訓練の量を多くすることは、歩行能力の改善のために強く勧められる。
・麻痺側下肢の筋力トレーニングは、下肢筋力を増加させ、身体機能を改善させるので勧められる。
・運動やレジャーは、脳卒中後のうつの発生を減少させるので勧められる。
・脳卒中片麻痺で、内反尖足がある患者に、歩行の改善のために短下肢装具を用いることが勧められる。
情報を提供することに関して
・患者・家族に対し、健康増進や再発予防、障害を持ってからのライフスタイル、現在の治療、リハビリテーションの内容、介護方法やホームプログラム、利用可能な福祉資源などについて、早期からチームにより、情報提供に加えて、教育を行うことが勧められる。
・脳卒中後は、失語・失行・失読・失認・半側空間無視・注意障害・記憶障害・遂行機能障害・知能障害・情緒行動障害(うつ状態を含む)などの認知障害の有無とその内容、程度を評価することが望ましい。また、評価結果は家族に伝えることが望ましい。
その他
・ファシリテーション(神経促通手技)は、行っても良いが、伝統的なリハビリテーションより有効であるという科学的根拠はない。
米国版のガイドラインを読みました。下記は、そのごく一部分です。
「大人の脳卒中のリハビリとケアの管理Management of Adult Stroke Rehabilitation Care」、AHA/ASA-Endorsed Practice Guidelines、2005年、Stroke. 2005;36:2049-2056
(1)全ての患者さんが、抑うつ、運動、感覚、認知、コミュニケーション、嚥下などの問題について、適切に訓練を受けた臨床医によって、標準化された正当なスクリーニングテストを用いて評価されることを推奨する。
(2)患者さんや家族やケアをする人と、評価された所見が共有され、リハビリ後に期待される状態について話し合われることを推奨する。
(3)可能な限り早期から、リハビリの過程の全ての期間を通じて、脳卒中の患者さんの家族やケアをする人が、、意思決定や治療計画の決定に参加することを推奨する。
(4)患者さんや家族やケアをする人に対する教育は、相互交流的に、紙に書いた内容で行うことを推奨する。
(5)家族とのカンファレンスは、情報伝達を行うには良い場である。
(6)患者さんと家族への教育の内容は、患者記録の中に文書化しておくことを推奨する。それにより、異なった職種の人が、同じ内容を伝えたり、相反する内容を伝えたりするのを避けることができる。
(7)脳卒中再発の予防を行うことは、生涯必要であるが、リハビリの内容としても重要なものである。特に、高血圧の治療、心房細動に対するワーファリンの使用、脳虚血に対する抗血小板薬の使用について、必要性を明確に示すデータがある。虚血性あるいは非虚血性の脳卒中の患者さんのリスクは、冠動脈疾患の患者さんのリスクと同じであるため、冠動脈疾患の予防を行うことも、重要なものである。高血圧の管理、ACE阻害薬の使用を考慮すること、LDLコレステロールが正常値であってもコレステロール値を下げる治療を考慮すること、運動、禁煙について、必要性を明確に示すデータがある。
(8)全ての患者さんが、入所後できるだけ早期に、栄養状態と水分摂取の評価を受けることを推奨する。食物と水分の摂取は、すべての患者さんについて毎日モニターされなければならない。また体重が定期的に測定されなければならない。
(9)自立して地域の生活に戻ることを計画している全ての患者さんは、退所前に、道具的ADLについて評価を受けることを推奨する。
(道具的ADLの評価とは、以下のようなことについての評価であるとのことです)
買い物、食事のプラン作り、食事の準備、掃除、洗濯、子どもの世話、お金の管理、公共交通機関の利用、車の運転、レクリエーション施設を利用、服薬管理、健康リスクを知ること、受診の予約、火災の危険を認識、119番に電話をかけること、煙感知器の作動に対応できること、危険な状況を認識できること
(10)患者さんは退所後も常に、家で有酸素運動や筋肉トレーニングのプログラムを行うか、地域で患者さんの病的状態や機能制限を考慮したプログラムに参加することを推奨する。
(11)もし、膝や足関節の安定が必要であるのなら、患者さんの歩行を改善し転倒を予防するために、下肢の矯正器具の使用を考慮することを推奨する。