(1)痛みの悪循環の図に「心理的悪循環」、「生理的悪循環」の語を付け加えました。日本語版Wikipediaの図を更新しました。

(2)英語版Wikipedia「不安-回避モデル」の概要の部分を以下のように訳して、日本語版Wikipedia「腰痛」に加筆しました。

不安-回避モデル fear-avoidance model

不安-回避モデルは、精神過程のモデルであり、人が不安に基づいて回避的行動を行うことにより、慢性的な筋骨格の痛みが生じることを説明するモデルである。1983年に、Lethemらによって主張された。腰部に痛みを生じるような病変が無いのに、腰部に激しい痛みを感じる状況を説明する[24]

人が腰部に急性の不快感や痛みを感じて、回避的行動によりその不快感や痛みを一時的に止めたとする。得られた無痛状態は、この回避行動を強化する。そして、腰部の異常に敏感になり、正のフィードバックがかかり、痛みを感じるレベルは引き下げられ、不快な刺激を除去するための回避行動は強化される。もし、人が痛みを不安なものではないととらえたり、一時的なものに過ぎないととらえるならば、痛みの状況は正しく把握され、痛みは軽快する[25]

回避的行動は、本来は健全なものであり、人が傷つくことを防ぐためのものである。しかし、急性の局所病変が治癒した後にも、人の活動を妨げるのであれば、それは有害なものになる。腰部に敏感になって体の動きが制限されると、組織の正常な機能が障害され、身体や精神に悪影響が及ぶ。もし、回避行動が強化されなくなれば、人は正のフィードバックによる悪循環を脱することができる。まずこの仕組みの存在に気づき、次に自分の不安に直面し、不安と回避行動に打ち勝つように、練習することが必要である[26]。「体を動かしても大丈夫。腰痛は怖くない」と何度も確認する必要がある。

1993年にWaddellらは、「不安-回避の思い込み質問紙」を作成した。この質問紙を用いた研究によれば、体を動かすことについての不安-回避の思い込みの有無は、労働喪失と強く相関している[27]