週刊ポスト(H27年3月13日号)には、「コレステロール250mg/dlでも健康体だった」という記事があります。そして、その根拠として、(1)米国心臓病協会の新ガイドライン(2013年)、(2)厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2015年)、(3)「米国人のための食生活ガイドライン」(2015年)の作成に向けた諮問委員会の見解が挙げられています。
本当にそうであるのかをチェックしてみました。
(1)アメリカ心臓病協会AHAの新しいガイドライン(2013年)については、例えば次のような文書がありました。
http://circ.ahajournals.org/content/early/2013/11/11/01.cir.0000437738.63853.7a
コレステロールを低下させる薬「スタチン」を飲むかどうかの判別 (p15)
22歳以上の大人に対して
1. 動脈硬化性心血管疾患があるかどうか
→あれば、スタチンを飲む
2. 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が190mg/dl以上か
→190以上ならスタチンを飲む
3. 40歳から75歳までの人で、糖尿病があるか
→あれば、スタチンを飲む
4. 40歳から75歳までの人で、動脈硬化性心血管疾患になるリスクが10年間に7.5%以上か
→7.5%以上なら、スタチンを飲む
→あれば、スタチンを飲む
2. 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が190mg/dl以上か
→190以上ならスタチンを飲む
3. 40歳から75歳までの人で、糖尿病があるか
→あれば、スタチンを飲む
4. 40歳から75歳までの人で、動脈硬化性心血管疾患になるリスクが10年間に7.5%以上か
→7.5%以上なら、スタチンを飲む
いずれにも当てはまらない人は、スタチンを飲まない
(この文書によれば、スタチンを飲む場合でも、悪玉コレステロール値を50%以上低下させるようにしっかり服薬する場合と、悪玉コレステロール値を30%から50%ほど低下させるだけで良い場合とがあります)。
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の正常値は、日本では通常は「120まで」または「140まで」です。日本のある学会は、「178まで」としています。このアメリカ心臓病協会AHAの新しいガイドラインによれば、健康診断で悪玉コレステロールの値だけが引っかかって、他には心疾患のリスクが無いような場合には、190までは、薬を飲まなくて良いとのことです。
(なお上記は、体格も食事も日本人とは異なるアメリカ人についての話です。コレステロールを下げる薬の服用については、主治医の先生とよく相談して下さい)。
アメリカ心臓病協会AHAのCEOのNancy Brown氏は、次のように述べておられます(2013年)。
アメリカ心臓病協会AHAのCEOのNancy Brown氏は、次のように述べておられます(2013年)。
「アメリカ心臓病協会AHAの新しいガイドラインでは、患者さんがコレステロールの値を目標とすることを、もはやお勧めしていない」。
http://www.huffingtonpost.com/nancy-brown/cholesterol-guidelines_b_4363121.html
http://www.huffingtonpost.com/nancy-brown/cholesterol-guidelines_b_4363121.html
(2)日本人の食事摂取基準について、「2010年版にはあったコレステロールの基準は、2015年版では消えている」という指摘は、その通りです。以下のように消えています。
2010年版
2015年版において、コレステロールが消えた理由は見当たりませんでした。
(3)米国の国立医学図書館は、2015年2月10日に、次のように述べています。
「『米国人のための食生活ガイドライン』(2015年)の作成に向けた諮問委員会は、今後は、人々に対して、卵や貝やその他のコレステロールを多く含む食品の摂取を控えるようには警告しないことを計画している」。
http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/news/fullstory_150870.html
同諮問委員会の2015年1月28日の文書です。食塩を減らし、飽和脂肪を減らし、砂糖を減らすように勧めています。サマリー(要旨)の中には、コレステロールを減らす勧めは、見当たりませんでした。
http://www.health.gov/dietaryguidelines/2015-scientific-report/PDFs/Scientific-Report-of-the-2015-Dietary-Guidelines-Advisory-Committee.pdf
http://www.health.gov/dietaryguidelines/2015-scientific-report/PDFs/Scientific-Report-of-the-2015-Dietary-Guidelines-Advisory-Committee.pdf
なお、この文書のp460、D6、698-848行目には、砂糖の摂取と、心血管疾患、肥満、2型糖尿病、虫歯との関係が検討されています。いずれも、関係があるとのことです。