砂糖の害に関して、以下のような本を読みました。
「ヒトはなぜ太るのか」 Gary Taubes 太田訳、2013年
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%92%E3%83%88%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%9C%E5%A4%AA%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B-%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%99%E3%82%B9/dp/4895893987
「ヒトはなぜ太るのか」 Gary Taubes 太田訳、2013年
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%92%E3%83%88%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%9C%E5%A4%AA%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B-%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%99%E3%82%B9/dp/4895893987
Gary Taubes氏は、優秀な科学ジャーナリストであり、研究者です。ネイチャー、サイエンス、ニューヨークタイムズに寄稿しています。
http://www.nature.com/news/treat-obesity-as-physiology-not-physics-1.12014
http://www.nature.com/scientificamerican/journal/v309/n3/full/scientificamerican0913-60.html
http://www.nytimes.com/2011/04/17/magazine/mag-17Sugar-t.html
http://www.nature.com/news/treat-obesity-as-physiology-not-physics-1.12014
http://www.nature.com/scientificamerican/journal/v309/n3/full/scientificamerican0913-60.html
http://www.nytimes.com/2011/04/17/magazine/mag-17Sugar-t.html
この本は、前作「Good Calories, Bad Calories」を短く分かりやすく書き直したものです。その邦訳です。
著者の結論は、「炭水化物が肥満を作る」ということです。著者は、全粒穀物を摂らないように勧めています。また、牛乳(乳糖を含む)を飲まないように勧めています。この点は江部康二先生と同じです。
しかし残念ながら、Taubes氏の結論は、誤りです。炭水化物は肥満の原因ではありません。それは、糖尿病の大家のジョスリン氏の言う通りです。日本人は炭水化物を多く摂りますが、肥満の人は人口の4%しかいません。日本の厚生労働省の栄養所要量では、「糖質の摂取量は総エネルギーの少なくとも50%以上であることが望ましい」とされています。また「食物繊維の摂取量は成人で20~25gとすることが望ましい」とされています。学校給食とか、施設の食事では、この栄養所要量に基づいて、食事が提供されています。BMIが30を超える人は、日本には多くいません。
また、WHOによる、肥満や体重増加を来たす要因には「炭水化物の摂取」は挙げられていません。ただし「砂糖で甘くしたソフト・ドリンクや果物ジュースを多く飲むこと」は挙げられています。
http://www.fao.org/docrep/005/ac911e/ac911e00.HTM
http://www.fao.org/docrep/005/ac911e/ac911e00.HTM
WHOやNIHは、科学的証拠に基づいて判断しています。WHOやNIHは、炭水化物を摂らないことを勧めていません。
低糖質食の一番の問題点は、その安全性です。短期的には成績が良くても、長期に安全であるというデータが見当たらないことです。この本の中でも、「いまだ長期的な臨床試験は実施されていない」(p225)と書かれています。岡田正彦先生も、低炭水化物食の安全性に疑問を持っておられます。「この栄養法は昔からあって、心筋梗塞などをかえって増やすので、学会などでも警告されている栄養法なのである」とのことです(「医者とクスリの選び方」p209)。メイヨークリニックも低炭水化物食を勧めていません。坪野先生も勧めていません。
確かにTaubes氏の言う通り、炭水化物は必須の栄養素ではありません。しかしこれは「エネルギー源として何が最も安全か」という問題なのです。肥満は、人々の唯一の問題ではありません。食塩や発がん物質の問題もあります。「健康で長生きするには何を選択するか」という問題なのです。また「必要な栄養素を全て必要なだけ摂るにはどうすればよいか」という問題です。
Taubes氏が勧める朝食の例は、ベーコンと卵です(p248)。Taubes氏が書いた記事(サイエンス紙)には、フライパンでちょっと焦げたベーコンが見えます。その隣にも焦げた食品が見えます。ベーコンは糖化終末産物AGEsを非常に多く含む食品です。またベーコンは食塩を3~4%含む食品です。焦げた食品には、ヘテロサイクリックアミンなどの発がん物質ができます。また加工肉は、WHOによれば、大腸がんを来たす確実な要因です。新鮮な肉を熱湯に入れて火を通して食べるのがお勧めです。
Taubes氏は、「好きなだけ食べてよい。運動は不要」と述べています。腹八分目(カロリー・リストラクション)は肥満対策ですが、アンチ・エイジング(老化対策)でもあります。またWHOによれば、身体的活動性は、肥満のリスクを減らす確実な要因です。運動は、肥満対策だけでなく、ストレス対策、うつ対策、薬物依存症対策であり、神経成長因子を働かせるためのものです。
Taubes氏は、非常に優秀な人で、よく勉強しておられるけれど、物理学科の出身で、生物学の教育を受けていないようです。生物には、非常に多くの要因が関与しており、どの要因が強くてどうなるかの予測は、経験的に知ることができるだけです。理屈ではありません。
スタンフォード大学の研究者が、ダイエット法をいくつか比較して、低炭水化物食(アトキンス・ダイエット)の成績が最も良かったとしても、それは、短期の話です。長期ではどうなるか分かりません。低炭水化物食に反対する一番の理由は、長期の安全性が不明であることです。
WHOの言うように、果糖、ショ糖、精製デンプンを制限して、運動を行って、全粒穀物や食物繊維などの炭水化物をしっかり摂るのがお勧めです。
「The Sugar Fix」Richard Johnson、2008年
http://www.amazon.co.jp/The-Sugar-Richard-Johnson-M-D/dp/143910168X
コロラド大学のRichard Johnson教授は、この本の中で、次のように述べておられます。
http://www.amazon.co.jp/The-Sugar-Richard-Johnson-M-D/dp/143910168X
コロラド大学のRichard Johnson教授は、この本の中で、次のように述べておられます。
(1)果糖の多い食事をすると、体重が速やかに増加する。果糖の多い食事をしても、満腹にならない。果糖の多い食事は、食べ物全体に対する食欲をコントロールするシステムに障害を与える(p8)。
(2)実験動物に果糖を与えると、尿酸値が上昇する。そして体重が増加し、インスリン抵抗性が生じ、メタボリック症候群のその他の症状が現れる(p98)。
(3)他の糖とは異なって、果糖は、食欲をコントロールするホルモンが脳へ到達して情報を伝える引き金を引かない。別の言い方をすれば、果糖を多く含む食事をたくさん摂っても、満腹にはならない(p103)。
(4)果糖は、活性酸素の産生を促す。それは、酸化ストレスによる細胞障害を引き起こす。酸化ストレスは、がんを作る原因の一つとされている(p140)。
著者のRichard Johnson教授は、果糖の少ない食事を勧めておられます。