砂糖と高血圧について、いくつかの文章を読みました。
 
(1)「スプーン1杯の砂糖は、血圧の上昇を容易にするJust a spoonful of sugar helps the blood pressure go up」 Expert Rev. Cardiovasc. Ther. 8(11),1497-1499(2010)
http://christinecronau.com/wp-content/uploads/2011/10/SSB-and-BP-1.pdf
この文章の題は、映画メリーポピンズに出てくる歌「スプーン1杯の砂糖は、薬の服用を容易にする」のもじりです。カリフォルニア大学小児科のStephanie Nguyen医師らは次のように述べています。
 
「果糖は、肥満をもたらすことにより二次的に高血圧をもたらす。果糖が一時的に高血圧をもたらす仕組みがある。動物実験で、動物に果糖を多く食べさせると、動物は高血圧となり、腎血管にダメージを受ける。これを引き起こし得るメカニズムは、交感神経が刺激されること、尿からのナトリウム排泄が減少すること、消化管からのナトリウム吸収が増加すること、尿酸が産生されて血管拡張作用のある一酸化窒素が減ることなどである」。
 
「米国の『全国健康と栄養の試験調査NHANES』のデータベースにおいて、我々は次のことを見いだした。砂糖で甘くした飲料を飲む人は、BMIや食事の要因を調整して比較しても、血清尿酸値が0.18mg/dl高く(p=0.01)、収縮期血圧のZスコアが0.27高い(p=0.03)」。
 
「フラミンガム調査やフラミンガム次世代調査では、砂糖で甘くした飲料を飲む量が増えても、高血圧となるリスクの統計的に有意な上昇は、認められなかった。しかし、より人数の多い『看護師健康調査』においては、砂糖で甘くした飲料と、ダイエット・ソーダは、高血圧となるリスクを増大させた」。
 
「Perez Pozoらによれば、実験動物を2週間、果糖の多い餌で飼育したところ、尿酸値と血圧の両方が、かなり上昇したとのことである」。
 
(2)「Reducing Consumption of Sugar-Sweetened Beverages Is Associated with Reduced Blood Pressure: A Prospective Study among U.S.Adults」 Liwei Chen、Circulation 121(22):2398-2406、2010年6月8日
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2892032/
ルイジアナ州立大学のLiwei Chen氏らは次のように述べています。
 
「PREMIER研究に参加した大人810人を対象として、18ヶ月間、前向きに観察したところ、砂糖で甘くした飲料を、1日1杯減らした人では、収縮期血圧が1.8mmHg低下し、拡張期血圧が1.1mmHg低下した」。
 
「砂糖や砂糖で甘くした飲料の消費を減らすことは、血圧を下げる重要な手段になるであろう」。
 
(3)「Fructose Likely Does Have a Role in Hypertension」、Magdalena Madero、Hypertension. 2012;59:e54
http://hyper.ahajournals.org/content/59/6/e54.full
メキシコ国立心臓病研究所のMagdalena Madero氏は、次のように述べています。
 
果糖は、人の血圧を上げるが、ブドウ糖は、上げない。この仕組みは、一つには果糖が、細胞内や血清の尿酸濃度を上げることから来ている。時間が経てば、果糖は、尿酸の新合成を増加させる。それで、大量の果糖は、空腹時の尿酸値や空腹時の血圧を上げる。アロプリノールにより治療すれば、果糖がもたらす高血圧は改善される。疫学的研究によれば、砂糖の摂取を減らすと血圧は低下する。実験動物に果糖を投与すると、腎臓の微小血管構造が変化し、食塩感受性のある高血圧がもたらされる。
 
(4)「American Heart association Comment on the World Health Organization's "Guideline: Sugar intake for adults and children"」、America Heart Association、2014年3月31日
http://www.heart.org/idc/groups/ahaecc-public/@wcm/@adv/documents/downloadable/ucm_463487.pdf
アメリカ心臓病協会は、次のように述べています。
 
「世界保健機構WHOは、遊離砂糖の摂取を、総エネルギーの10%以下にすること、場合によっては5%以下にすることを、強く勧めている。1日に2000キロカロリー消費する人では、1日25gか50gまでの砂糖消費ということになる」。
 
「WHOによる定義によれば、遊離砂糖とは、『食物に加えられた単糖類と二糖類、糖が初めから存在するハチミツ、シロップ、果物ジュース、濃縮ジュース』のことである」。
 
「アメリカ心臓病協会は、このWHOのガイドラインを歓迎し、強く支持する」。
 
「加えられた砂糖は、肥満、中性脂肪増加などの脂質異常、慢性炎症、高血圧など、心臓に関連する疾患の主要なリスク要因になっている」。
 
(5)「Your Guide to Lowering Your Blood Pressure With DASH」、NIH
http://www.nhlbi.nih.gov/health/resources/heart/hbp-dash-how-to.html
米国国立健康研究所NIHの国立心臓肺血液研究所は、高血圧の人にダッシュDASHダイエットを勧めています。食塩を減らし、果物や野菜をしっかり摂るダイエットです。このDASHダイエットの説明文には、「お菓子、加えられた砂糖」の項目があり、週に5単位以下となっています。1単位は、例えば小さじ1杯(4g)の砂糖です。毎日、小さじ1杯より少ない砂糖に制限するということです。これは、非常に厳しい制限です。お菓子をほとんど食べられなくなります。
 
(6)「Increased Fructose Associates with Elevated Blood Pressure」、Diana Jalal、J Am Soc Nephrol 21:1543-1549,2010
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3013529/
コロラド大学のDiana Jalal准教授は、次のように述べています。
 
米国の『全国健康と栄養の試験調査NHANES 2003 to 2006』に参加した高血圧の無い大人4528人からデータを得た。年齢分布、余病、活動度、カロリー摂取量、栄養摂取の細目(炭水化物、アルコール、食塩、ビタミンCなどの摂取量)を調整して比較した。1日に74g以上の果糖を摂取する人は、血圧の高い人の中に占める割合が多かった。果糖を1日に74g以上摂取する人は、血圧が≧135/85、≧140/90、≧160/100のグループの、それぞれ、26、30、77%を占めた。
 
(7)「Sugar, not just salt, linked to high blood pressure」CNN、2010年6月1日
http://edition.cnn.com/2010/HEALTH/07/01/glucose.blood.pressure/
CNNは、食塩と同じように、砂糖を多く消費すると血圧が上昇するというコロラド大学の論文を紹介しています。そして、動物実験でも、果糖の消費は、血圧上昇を招いたと述べています。また学術雑誌Circulationの論文が、「砂糖で甘くした飲料を減らすと、血圧は下がるであろう」と述べたことを紹介しています。
 
(8)「Sugary soft drinks linked to high blood pressure」BBC、2011年3月1日
http://www.bbc.co.uk/news/health-12597970
英国国営放送BBCは次のように述べています。
 
専門家は次のように警告している。『甘い飲料を多く飲みすぎると、高血圧のリスクを上昇させるようだ』。アメリカ心臓病協会は、『人々は週に355mlのソーダ缶を1本以上飲んではならない』と述べている。インペリアル・カレッジ・ロンドンのPaul Eliott教授は、次のように述べている。『食塩を多く摂ると高血圧になりやすいことは広く知られている。我々の研究結果が示しているのは、人々は自分の消費する砂糖の量にも気をつけるべきであるということだ。』
 
(9)「果糖、取り過ぎ要注意 脂肪肝など生活習慣病にも」MSN産経ニュース、2013年12月3日
http://sankei.jp.msn.com/life/news/131203/bdy13120310110003-n1.htm
MSN産経ニュースは、次のように述べています(3/3ページ)。
 
「ラットに果糖を多く含む食事を10週間与えたところ、対照群に比べて高血圧や脂質異常、高尿酸血症が多かった」。

(10)「Role of advanced glycation end products in hypertension and atherosclerosis: therapeutic implications.」
Vasdev Sら、Cell Biochem Biophys. 2007;49(1):48-63.