残念ながら、北ダコタ州の住民投票では、共同養育の法案( measure 6 )は否決されました。賛成が38%、反対が62%でした。
北ダコタ州の運動の方向性は是認できます。立法に働きかけて、主権者である住民の判断を求めています。
ドイツの最高裁判所は、単独親権は違憲であると判断しましたが、このようなことまれです。司法(弁護士や裁判官)は、子どもの奪い合いにより、経済的な利益を受けます。だから、司法を動かすことは、なかなか困難です。
また行政は、裁判官や弁護士の経済的利益を図ることで、司法と一体となる権力機構を形成しています。もし司法を敵にまわせば、行政の施策は、ことごとく判決で否定されるでしょう。
残るは立法しかありません。実際、外国における共同養育運動の成果の多くは「共同養育法案」の成立という形で得られています。
しかし、今回の北ダコタ州の共同養育法案の文章は、やや過激でした。親の権利も半分ずつ、子どもとの時間も半分ずつと述べて、細部への配慮があまりありませんでした。
(1)共同養育が行われているウィスコンシン州では、非同居親と過ごす時間が、子どもの時間の24%までは、養育費は減らされません。またオーストラリアでは、子どもの時間の30%までは、養育費は減らされません(Wikipedia 「共同親権」を参照)。母親からすれば、時間の30%くらいまでは、子どもを非同居親に任せた方が、生活はむしろ楽になります。共同養育になっても、養育費があまり減らされないことを保証する必要があります。法律の改正には、女性の支持が必要です。
(離婚すると出費が増えて生活が苦しくなります。住む所が2ヶ所必要になります。水光熱費の基本料金を2回払います。子どもが往復する運賃が必要です。子どもの机やイスが2組必要になります。弁護士費用や裁判費用が必要です。ベビーシッターの費用も増えます。勉強時間を確保しようとして、残業や日曜出勤を減らすと、収入も減ります)。
(2)反対派の「離婚のことは、裁判所に任せる」という態度にも説得力があります。一般の人は、「裁判所は、家庭や離婚のことをよく知っており、当事者の利益になるように決めてくれる」と信頼しています。法律案を現実的に変更して「子どもに両親は是非必要である。子どもはそれぞれの親と、少なくとも時間の30%以上を過ごす必要がある。30%以上の詳細は、裁判所が決める」というような、妥協が必要かもしれません。
(3)実際に、相当に離れて暮らしている場合には、子どもの時間の配分に、かなり困ります。子どもの時間を、文字通り半々に配分するのなら、学校をどうするのでしょうか。1週間ごとに転校するのでしょうか。その場合、教科書が異なると、勉強に支障をきたします。
なるべく近くに住むことは良いことです。同じ学区内に住むのがベストです。遠距離の引越しを裁判所の許可制にすることも必要です。しかし、やむを得ず離れて暮らす場合には、現実的な工夫が必要になります。長期休暇の全てを非同居親と過ごすとか、1年ごとに同居親を交代するとか、毎日夕食時にスカイプを30分間義務付けるとかです。
なお、共同養育(身体的共同親権)の定義は、「子どもが片親と過ごす時間が、30~40%以上であること」です。その数字は、国や州によって異なります。