砂糖と痛風について、いくつかの文献を読みました。
(1)「Pop goes the question of gout」NHS、2008年2月1日
http://www.nhs.uk/news/2007/January08/Pages/Sugarydrinksandgout.aspx
http://www.nhs.uk/news/2007/January08/Pages/Sugarydrinksandgout.aspx
英国政府の国民保健サービスNHSは、次のようにChoiらの論文を紹介しています。
「40歳から75歳までの男性5万1529人を12年間観察したところ、755人が痛風を発症した。炭酸飲料を多く飲む人は、少なく飲む人より痛風になる割合が大きかった」。
(2)「健診で発見された高尿酸血症の指導」日本医師会雑誌、140巻第2号、平成23年
兵庫医大教授の森脇優司先生は、次のように述べておられます。
兵庫医大教授の森脇優司先生は、次のように述べておられます。
「ショ糖は、αグルコシダーゼにより、ブドウ糖と果糖に分解されるが、果糖はその代謝に伴うアデニンヌクレオチドの分解亢進によって、血清尿酸値を上昇させる。また、疫学的にも、ショ糖の摂取量と比例して血清尿酸値が上昇することが報告されている。したがって、ショ糖や果糖の過剰摂取も控えるように指導したい」。
(3)「Fat Chance」2013年、Robert Lustig、p123
カリフォルニア大学教授のラスティグ教授は、次のように述べておられます。
カリフォルニア大学教授のラスティグ教授は、次のように述べておられます。
「ブドウ糖が全身で代謝されるのに対して、果糖はもっぱら肝臓で代謝される。肝臓で果糖が代謝される際に、ATPが消費される。それでATP消費の老廃物である尿酸が増える」。
(4)「Is fructose bad for you?」 Harvard Health Blog、2011年4月26日
ハーバード大学のハーバード健康ブログによれば、次のようです。
http://www.health.harvard.edu/blog/is-fructose-bad-for-you-201104262425
ハーバード大学のハーバード健康ブログによれば、次のようです。
http://www.health.harvard.edu/blog/is-fructose-bad-for-you-201104262425
「体中のほとんど全ての細胞は、エネルギー源としてブドウ糖を利用することができる。これとは対照的に、果糖を分解できるのは肝臓だけである。肝細胞の中で、果糖がどのように代謝されるかは複雑である。最終産物の一つは、トリグリセライド(脂肪の一つ)である。また、尿酸とフリーラジカルも産生される。この3つとも体に有害である。トリグリセライドは、肝細胞内に蓄積し、肝臓の機能に障害を与える。血液中に放出されたトリグリセライドは、動脈壁の中に、脂肪の多いプラークを成長させる。フリーラジカル(活性酸素とも呼ばれる)は、細胞構造や酵素や遺伝子に障害を引き起こす。尿酸は、一酸化窒素の産生を妨害し、一酸化窒素が細胞壁を障害から守る働きを妨害する」。
(5)「Potential role of sugar (fructose) in the epidemic of hypertention, obesity and metabolic syndrome, diabetes, kidney disease, and cardiovascular disease」 Richard Johnson、Ame J Clin Nutr 2007;86:899-906
http://ajcn.nutrition.org/content/86/4/899.full.pdf+html
フロリダ大学のRichard Johnson教授らは、次のように述べています。
http://ajcn.nutrition.org/content/86/4/899.full.pdf+html
フロリダ大学のRichard Johnson教授らは、次のように述べています。
「果糖がユニークであるのは、糖の中でも、尿酸の濃度を高める唯一の糖であることだ。これは、ヒトでもげっ歯類でも同様である。果糖は、肝細胞の中へ入ると、尿細管細胞や脂肪細胞や腸の上皮細胞に入った時と同様に、ATPを消費し、フルクトキナーゼにより完全に代謝される。この代謝過程は、ブドウ糖の代謝過程とは異なり、ATPの消費を減らす方向のネガティブ・フィードバックの仕組みを持っていない。その結果、この過程で、乳酸や尿酸が産生される。果糖の多い食品を消化吸収すれば、尿酸の濃度は1-4mg/dlほど上昇するであろう。
尿酸値の上昇は、以前は、単に痛風のリスクの一つに過ぎないと見なされて来たが、近年の研究は、尿酸値の上昇が、果糖が心臓病を引き起こすための鍵となり得ることを示唆している。
尿酸値が中等度上昇したラットは、緻密斑における一酸化窒素合成の阻害、腎臓内レニンによる刺激、内皮細胞での一酸化窒素の生物活性の減少などにより、高血圧を来たす。時間の経過と共に、尿酸値の高いラットは、腎動脈硬化症を来たし、食塩感受性のある高血圧を来たす。
尿酸は高血圧の独立した予測因子の一つであるとする最近の研究が、15編ほどある。フラミンガム心臓研究の最近の報告も、この見解を支持している。また尿酸は、肥満、高インスリン血症、腎臓病などの独立した予測因子であると考えられている。
新しく高血圧となった青年の大多数(89%)では、尿酸値が上昇していた。この研究で、その青年の尿酸値を下げたところ、血圧も低下した。
果糖と尿酸が障害を引き起こす仕組みは、メタボリック症候群が発現する最初の段階では重要な役割を演じるが、肥満や高血圧や腎臓病がひとたび成立すれば、その重要性は減る」。
(6)砂糖、果糖、高果糖液糖と痛風「Sugar,Fructose,High Fructose Corn Syrup and Gout」Gout and you
http://goutandyou.com/sugar-fructose-high-fructose-corn-syrup-and-gout/
http://goutandyou.com/sugar-fructose-high-fructose-corn-syrup-and-gout/
「Gary Taubes氏は、著書のGood Calories, Bad Calories で次のように述べている。『果糖は痛風の主な原因である。西側諸国では、何世紀にもわたって、砂糖の消費量が増えたが、それに伴って痛風が増加した。しかし、1960年代にアロプリノールという薬が作られてからは、研究者たちは砂糖と痛風について研究することをやめた。現在、痛風の患者達は、砂糖や果糖を制限せずに、好きなものを飲み食いしている』」。
(7)「Fructose-Rich Beverages and Risk of Gout in Women」 Hyon Choiら、JAMA Vol.304 No.20、2010年
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3058904/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3058904/
ブリティッシュ・コロンビア大学助教授のHyon Choi氏は、次のように述べておられます。
「7万8906人の看護師の女性を22年間追跡したところ、778人が痛風を発症した。果糖の多い飲料の消費は、痛風発症のリスクを高くする。ただし、女性では痛風の発症率は高くないので、その関連性は強くない」。
(8)「Sugary Drinks Linked to Gout」ABC news 2010年11月10日
http://abcnews.go.com/Health/WomensHealth/sugary-drinks-linked-gout/story?id=12100125
http://abcnews.go.com/Health/WomensHealth/sugary-drinks-linked-gout/story?id=12100125
ABCニュースは、上のHyon Choi氏の研究を紹介しています。「研究者たちは、果糖で甘くした炭酸水は、看護師健康研究において、新しく診断された痛風と、有意の関係があると報告した」。
(9)「A causal role for uric acid in fructose-induced metabolic syndrome」Takahiko Nahagawaら、Am J Physiol Renal Physiol 290: F625-F631、2006年
http://ajprenal.physiology.org/content/290/3/F625
http://ajprenal.physiology.org/content/290/3/F625
フロリダ大学助教授(現在は京都大学准教授)の仲川孝彦先生は、次のように述べておられます。
「果糖は、尿酸値を上げることにより、メタボリック症候群や肥満の蔓延に、中心的な役割を演じているかもしれない」。