「砂糖は毒か」(Is Sugar Toxic? The New York Times、2011年4月13日)という文書を読みました。
--------------------------------------------------------------------------
(糖尿病の大家の)ジョスリンは次のように考えた。「日本人は米をたくさん食べている。米は消化されて糖になる。しかし日本人には糖尿病は少ない。ゆえに、糖は糖尿病を作らない。砂糖も糖尿病を作らない」。しかし、この考えは誤りである。確かに米のような炭水化物は糖尿病を作らない。しかし、米が消化されてできるのはブドウ糖だけであるのに対して、砂糖は消化されてブドウ糖と果糖になる。
朝鮮戦争のときに、病理医が、死亡した兵隊の解剖を行ったところ、アメリカ兵の動脈には、かなりのプラークが詰まっていた。未成年のアメリカ兵の動脈にもプラークがあった。しかし、韓国兵の動脈にはプラークは無かった。当時、アメリカ兵は高脂肪の食事を摂っており、韓国兵は日本食に近い低脂肪食を摂っていた。それで、脂肪がプラークの原因と考えたわけであるが、実はアメリカ兵は、砂糖も多く摂取していたのだった。
カリフォルニア大学のLustig教授は、「砂糖が脂肪肝を作る」と述べている。またエール大学医学部でインシュリン抵抗性を研究しているVarman Samuelは、「脂肪肝がインシュリン抵抗性を生じさせる」と述べている。
メタボリック・シンドロームでは、体の細胞にインシュリン抵抗性が生じる。食べた食事に反応して膵臓からインシュリンが分泌されるのであるが、 そのインシュリンに、体の細胞があまり反応しなくなる。それで、膵臓は分泌するインシュリンの量を増やすのであるが、やがて追いつかなくなり、膵臓は疲弊した状態になる。そうして血糖値がコントロールできなくなる。この状態が、糖尿病である。インシュリンが血中に増えた状態は、生体にとって危険な状態である。心臓病、高TG血症、高血圧、低HDLコレステロール血症などが起きて、インシュリン抵抗性はさらに悪化する。
コロラド州立大学のMichael Pagliassottiは、実験動物の摂取エネルギー量の20%分を、砂糖で飼育したところ、実験動物には、数ヶ月で脂肪肝が生じて、インシュリン抵抗性が生じた。砂糖をやめたところ、脂肪肝は速やかに消失し、インシュリン抵抗性も消失した。なお「摂取エネルギー量の20%の砂糖」とは、平均的なアメリカ人が実際に摂取している砂糖の分量である。
腫瘍は、ブドウ糖を、成長や分裂のエネルギー源にしている。インシュリン抵抗性があると、膵臓から分泌されるインシュリンの量は増えるが、インシュリンは、腫瘍が増大する速度を大きくする。それで、インシュリン抵抗性があると、腫瘍が増大する速度が大きくなる。
ニューヨークにあるSloan-Kettering記念がんセンターのセンター長のCrag Thompsonは、次のように述べている。「多くの前がん病変の細胞は、もし、過剰のインシュリンによって、成長や分裂を強いられるのでなければ、決してがんへの突然変異を起こさないであろう」。
--------------------------------------------------------------------------