この本は、良書です。敵対関係を協調関係に変えるための知恵が書かれています。
(1) 「相手方を非難、攻撃する言葉を、仲直りする言葉に転換することが必要です」(p29)
これは、斎藤一人さんの「地獄言葉」、「天国言葉」と似ています。
(2) 「自分の主張は過不足なくすることが必要になります」。「和解するからといって言うべきことを言わないようでは、高いレベルの和解には到達できません」(p30)
これは、「アサーティブネス」の考え方と似ています。交渉において、自分の側が全部譲ってしまえば、交渉は簡単に妥結します。しかし、それでは自分の側に不満が残り、長続きしません。まずは、自分の側の主張を相手に伝えることが必要です。
(3)「その人が考えている正義にかなっていなければ、あるいは、全部がかなえられなくても、まずまずよかろうと思う程度にかなえられなくては、人は和解の握手をしないものなのです」(p32)
自分の正義と相手の正義を理解する必要があります。正義と邪悪との戦いではなく、正義と正義の妥協です。相手の正義を認めて、その分、相手に譲るということです。
(4)「話を正確に、偏見を持たずに聞くという段階から透視術の段階までを含めて、人の話をよく聞くと、たいていの紛争は、それだけで解決の道筋が見えてきます」(p128)
「聞き手と話し手の技法」The Speaker-Listener techniqueでは、話し手は話すだけで、聞き手は聞くだけです。聞き手は反論をしません。そして役割を交代します。この技法が、最も効果があるそうです。つまり、多くの場合は、相手の話を聞かずに、すぐに反論して相手を非難するのです。相手の話を聞かないことが、関係がうまく行かない主な原因です。「8割聞いて、2割話す」とか、「聞いて9割、話して1割」という標語があります。そのぐらいのつもりで、ちょうど5割になるのでしょう。
(5)「何かのきっかけをつかんで、相手方に『協調』の言葉を届けてみることが必要です」(p130)
武田鉄也さんの「贈る言葉」のようです。非難を贈るのではなく、協調を贈ります。
(6)(最終提案調停では)「当事者双方が最終的な提案をしたのちに、仲裁人が当事者の提案のいずれか一方を選択して、それをもって仲裁判断とします」(p192)
この「最終提案調停」では、中間値を採らないそうです。この本に、その実例が3つ載っていますが、双方の最終提案は、驚くほどよく似ています。双方の最終提案は、当事者の視点ではなく、調停人の視点で作られるということでしょう。
交渉理論においては、まず自分の主張を行い、次に相手の主張を聞きます。そして、協力して妥協点を探る努力を行います。
この本には、上記の他にも、和解のための知恵が満載されています。