1.小保方晴子博士と野口英世博士には、以下のような類似点があります。両者共に有名な方ですから、「似ている」と思われる方も多いでしょう。

(1)両者とも、超一流の研究所に潜り込んでいること。
小保方博士は、理研に潜り込み、野口博士は伝染病研究所やロックフェラー研究所に潜り込んでいます。理科系の人は、それがどんなに難しいことかを知っているでしょう。大学の博士課程には、オーバー・ドクター(職が無い人)が大勢います。超一流の研究所に職を得るのは、夢のまた夢です。
 
(2)両者とも精力的に実験を多く行っていること
理論家というより実験家です。事実を探策しています。
 
(3)両者ともにお金を作るのが上手であること
小保方博士は「実験を200回した」と言っておられますが、実験材料や実験動物は、非常に高価です。野口博士も、勉強費用や渡航費用を工面しました。「自分の能力が優れていて、研究には確かな見通しがあること」を、お金を持っている人に納得させる必要がありますが、両者は、それが出来るのです。研究者の能力は、獲得した研究費の額で測定されます。
 
(4)渡米が自分の研究に大きな意味を持っていること
野口博士も、研究を遂行する上で、渡米が大きな意味を持っています。小保方博士も、アメリカ人の師匠の学説を発展させています。両者は、アメリカ人の師匠と良好な関係にあります。通常は留学しても、なかなかそのようにはならないと思われます。
 
(5)関係者の協力を得ていること
小保方博士は、超一流の研究者の協力を得ています。超一流の研究者は忙しくて、なかなか力を貸してくれません。野口博士も、多くの人の協力を得ています。
 
(6)一流紙に研究成果を載せていること
「インチキでも良いから載せてみろ」と言われても、まず載らないです。超一流誌は、専門家による厳しい査読があります。「科学雑誌は性善説だ。不存在の証明はできない」などと言う人は、いくらでも載せることができるはずですが、実際には困難です。
 
小保方さんの実験は、今のところ再現されていませんが、野口博士の研究「スピロヘータの純粋培養」も今のところ再現されていません。
 
Yahoo知恵袋の「小保方晴子さんは平成の野口英世さんですか」という問いに対する答えによれば、「(野口博士の)研究資料に、培養法や培養の性質についての記載が見つからない」とのことです。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12122285637
 
野口博士は、進行麻痺という神経疾患が、梅毒スピロヘータによるものであることを発見しました。野口博士には、こうしたホームランもありますが、凡打もあります。凡打を恐れる人は、打席には立てません。ヒットは3割あれば充分です。未知の原野に足を踏み入れる人が、誤った方向に進むことは避けられません。
 
上記の(1)~(6)のように、小保方博士は、他の研究者ができないことを達成できる要素をたくさん持っています。勝てるチャンスがあります。
 
2.外国で再現に成功しても「成功した」と言わないかもしれません。
今なら、アメリカの研究所で再現実験に成功しても「成功した」と言わない可能性があります。極秘裏に、その研究所の総力を挙げて、ヒトで可能かどうかを突き止めるでしょう。そして、ヒトに関しての特許を取るでしょう。その後は、この研究所に特許料を支払うことになります。今は、日本でも、この件に人とお金をつぎ込んで、全力で研究をすべき時です。
 
3.研究にはそれを可能とする環境が必要です。
これまで理研では、優秀な研究者が多くの業績を挙げてきました。それは、資金に恵まれていたことと、人材の登用が柔軟に出来たことが要因です。優れた研究をするには、十分なお金と、優れた人々の協力が必要です。

米国の研究環境と比較すれば、日本の研究環境は劣悪です。米国の健康関連の研究予算は、4兆9000億円くらいです。日本のそれは、1700億円くらいです。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/sanyokaigou/dai2/sanyo04.pdf
 
山中教授は、アメリカから日本に戻ると、あまりの研究環境の悪さに、落ち込んでしまったそうです。山中教授の研究を可能にしたのは、奈良先端技術大学院大学に職があったことと、科学技術振興機構の研究費が獲得できたことの2つが重要でした。若くて生産的な研究者に職を提供し、必要な研究費を与えることが必要です。
 
青色発光ダイオードを発明した中村教授は、会社から報奨金として2万円をもらいました。しかし、中村教授が会社にもたらした利益は1200億円以上でした。日本で研究しても、研究者は損をするだけです。研究者は、努力が報われるアメリカで研究を行いたいと思うでしょう。金の卵を産む研究者は、アメリカに渡ります。
http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/200408/jpaapatent200408_041-049.pdf
 
実際、米国で研究をしておられる先生もいます。ノーベル賞を受賞された下村脩先生や、南部陽一郎先生は、米国で研究をしておられます。また優秀な高校生の中には、アメリカの大学を受験する人もいます。
 
「STAP細胞が実在する可能性は100分の1以下だ」と評価するブログがありました(4月)。もしそうだとすれば、小保方博士やバカンティ氏がノーベル賞を取る可能性が、今でも(100分の1以下ですが)有るということです。ノーベル賞を取る可能性が100分の1もある人は、現在の日本には100人より少ないのではないでしょうか。小保方博士は、人類の恩人であるかもしれないのです。そういう研究者を、糾弾するのは間違っています。優遇すべきです。優秀な研究者は、日本に嫌気がさすでしょう。
 
今は、糾弾している場合ではなく、STAP細胞の研究を支援すべき時です。若くて生産的な研究者に、充分な研究環境を提供すべき時です。努力が報われる環境を作るべき時です。日本が現状のままなら、小保方博士は、野口博士と同じように、アメリカへ渡るでしょう。