BBCの「ストックホルム症候群とは何か」を読みました。以下のようなことが書いてありました。
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-22447726

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1973年にストックホルムで銀行強盗があり、犯人グループは、人質4人を盾にしてして、6日間、立てこもった。6日間のこう着状態が終わった時には、人質は、犯人グループと友好的な関係を作り上げていた。

1974年にカリフォルニアで起きた人質事件では、人質となった19歳の女の子は、犯人グループに理解を示しただけでなく、犯人グループに加わり、後日、別の強盗事件に参加した。

これらの問題を調査したOchberg博士は、次のような報告を、FBIとイギリス警察に行った。(1)人は、突然に事件に巻き込まれて、人質となる。(2)死ぬかもしれないと覚悟する。(3)犯人の許可が無ければ、飲食も、トイレも、会話もできない状態になる。(4)犯人から食べ物をもらったり、トイレに行く許可をもらったりする。(5)犯人の小さな親切に対して、感謝の念が生じる。(6)犯人に対して、好意的な印象を持つようになる。(7)犯人も、人質に対する見方を変える。

被害者が、犯人に対して好意を示すような現象は、DVや児童虐待でも見られる。虐待を受けている子どもは、虐待している親をかばうことがある。

Kampuschという保護人は、次のように述べている。「被害者に、ストックホルム症候群という病名を付けることには反対する。これは病気ではなく、特殊な状況に陥った時の合理的な判断に由来する状態だ。自分を誘拐した犯人の主張に、自分を適合させるのは、むしろ自然である。特に犯人と多くの時間、一緒にいた場合はそうである。共感やコミュニケーションを行うのだ。犯罪の範疇の行為に、正当性を見い出そうとするのは、病気ではなく、生き残るための戦略である」。
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誘拐された子どもが、「会いたくない」などと言って、非同居親を冷たく扱ったとしても、それは生き延びるための戦略です。しかし、子どもが誘拐されて人質となっている状態は、永久には続きません。自立して、誘拐した犯人から離脱する日が来ます。

離婚毒」(青木訳、p273)によれば、「親と引き離された子どもが、大人になったとき、自分が失ったものや、自分が別居親に与えた傷の大きさに気付き、耐えられないほどの罪悪感と悲しみに苦しむ場合があ(る)」とのことです。そして「子どもは、洗脳した親に対して激しい怒りを抱(く)」場合があるとのことです。

子どもは、健全な発達のために、両方の親を必要としています。そして、両方の親から、なるべく多くの知識を受け取ることを望んでいます。また、双方の親と、同じくらいの時間を過ごすことを望んでいます。子どもを誘拐し、隔離し、心をコントロールするのは、子どものためではありません。子どもは一人では生きて行けず、親にすがって生きていくしかありません。子どもは、今を生き延びるために、一時的に誘拐を受け入れているのです。

(Wikipedia 「ストックホルム症候群」に、一部加筆しました)。