「父親の関与のハンドブック」Handbook of Father Involvementという本は、ハワイ大学図書館の推薦図書です。この本の9章「子どもの社会性の発達における父親の役割」を読みました 。著者は、多くの実証的研究に基づいて、次のように述べています。

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母親は、子どもの不快感に対処してそれを解消させる世話人であり、父親は子どもと競い合ったり子どもを励ましたりする遊び仲間である。

これまで、第二次世界大戦や遠洋航海などによって父親が不在となった家庭の子どもは、友人関係が貧弱であることが知られていた。また、アメリカ合衆国の若者縦断調査においても、父親が不在の家庭の子どもは、学校や友人について問題を抱えているリスクが、より高いことが判明している。なお研究により、義理の父親がいる家庭の子どもは、自己評価がより低く、他者に対する問題行動を、より起こしやすいことが判明している。

(1)父と子が直接対面して相互交流を行うことは、子どもが友人との関係に必要な技術を学ぶ機会を子どもに提供する。

父親が、子どもと遊ぶ中で、陽気で、忍耐強く、子どもの理解に努めるならば、子どもは友人との間で攻撃的行動を行うことが、より少なくなる。

遊び仲間から気持ちのシグナルを受け取ったり、自分の気持ちのシグナルを仲間に送ったりすることは、チームプレーをうまく行うために必要なことである。子どもは、これを父親から習う。

子どもが感情的につらいときには、父親はそれを受容し、力づける。これは、子どもが、よりポジティブな友人関係を作ることを容易にする。

父親とポジティブな交流をより多く行った子どもは、対人間のトラブルを解決する際に、ネガティブな到達目標を設定したり、ネガティブな戦略を行うことが、より少ない。この点については、母親より、父親の影響の方がずっと大きい。

(2)父親は、子どもに対して、インストラクター、教育者、助言者としての役割を持っている。非常に多くの研究が示しているのは、父親が子どもを監督して助言を与えることは、子どもの社会的な能力を顕著に高めるということである。

(3)学校外のスポーツチームや、カブスカウトや、宗教活動などの社会的活動の場がある方が、子どもの社会的能力は、より向上する。母親の方が、社会的活動は、子どもの社会性の発達のために重要であると考えており、母親は、子どもが社会的活動を行うことに、より多く関与する。

(4)子どもは、父と母の関係を見て学ぶ。

もし夫婦仲が悪ければ、父と母が協力して子どものために働く良い効果を減らしてしまうだけでなく、父子関係、母子関係にも悪い影響を及ぼす。

父母が意見の対立に際して敵意のある方法を用いるところを子どもが見ると、子どもは教師から反社会的な性格を持っていると評価される割合が、より高くなる。

父と母がしばしば争うと、子どもは、教師から「恥ずかしそうな表情や、悲しい表情を示し、自分自身を責める」と評価されやすく、同級生から「嫌なやつで、言葉と態度が攻撃的である」と評価されやすく、教師と同級生から「他人に対して問題行動を起こす」と評価されやすい。
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