坪野先生の論文解説に、「結婚すると総死亡率が下がる」という文章が登場しました。私はコメントを書きました。
結婚の状態は、死亡率を大きく左右するので、公衆衛生上の大問題であると思いますが、これまで日本の疫学系の論文にはあまり見かけませんでした。検索にもひっかかりませんでした。
坪野先生がいつも読んでおられる医学雑誌は、権威のある有名な雑誌です。また、読んでおられる論文も、科学的観点から正確であり信頼できるものばかりです。
私は、以前、結婚の利益について、Wikipedia 「離婚」の「結婚の利益の喪失」の項に書いたことがあります。
実際に日本の統計を見ると、結婚している男性と離婚した男性を、単純に比較すると、寿命が10年も違っています(40歳の男性)。
タバコで縮む寿命が10年であるので、男性の場合は、タバコに匹敵するリスクであることになります。つまり、公衆衛生上の大問題であるということです。
「The case for Marriage: Why married People are Hppier, Healthier and Better of Finantially」 という本の紹介文にも、「男性が離婚すると、タバコを毎日1箱吸うのと同じだけ寿命が短くなる」と書いてあります。
離婚や未婚は、公衆衛生上の大問題です。タバコの害に匹敵するほどの大問題です。
「結婚状態と死亡率」という論文(産科と婦人科、75巻1号、2008年、廣井正彦先生)は、「健康な人だけが結婚できて、不健康な者は結婚できない」のではなく、「結婚は、経済的、社会的、身体的な利益をもたらす」のであるとする論文を紹介しておられます。
また、廣井先生の文章には「 Schwartz らは、両親が離婚した子は、離婚しない子に比し、平均4年早く死ぬとしている」とあります。
Schwartz らの論文は、子ども時代の心理社会的状況が、大人になってからの死亡率に及ぼす影響を調べたものです。American Journal of Public Health、85巻9号、1995年、p1237-1245、「Sociodemographic and Psychosocial Factors in Childfood as Predictors of Adult Mortality」
この Schwartz らの論文には、下図のようなグラフがあります。確かに、男性も女性も、約4年ほど、寿命が短くなっています。
また、廣井先生の論文には、下図のようなMartin らのグラフが載っています。親が離婚した子どものうち、自分の人生に満足している人では寿命の短縮は起きないが、不満な人では寿命が短縮するというグラフです。なお、いずれのグラフも、青字は、私が書き込んだものです。

