修正すべき点
(1)連れ去られた子どもの意見を必ず聞くべきだ
「中間とりまとめ」の「子どもの意思を把握するように努める」とある所を、「子どもの意見を聞かなければならない」と改めるべきだ。
日本の現状では、離婚時に子どもの処遇を決める際に、子どもが15歳未満であれば、子どもの意見を聞くことは、ほとんど行われていない。意見を聞く場合でも、調査官が1回だけ1~2時間をかけて話を聞くだけである。そうして「どちらの親と暮らしたいか」などと、本来選べないものを無理に選ばせる。これは、子どもの心を引き裂く。両方の親を持つことは、子どもの権利である。子どもに自由に話をさせるべきだ。そして同居親からの強制を、慎重に排除すべきだ。
子どもに意見を聞く理由は、「主役が子どもであって、こうした手続き全体が子どもの利益を尊重するために行うものであること」を、関係者が確認するためである。この作業を実際に行って、子どもの利益を本当に尊重しなければならない。「中間とりまとめ」では、この点が認識されていない。
なお、子どもの権利条約では、子どもの処遇を決めるに際しては、子どもの意見を聞くことになっているが、それは聞くだけである。もし、意見の内容を尊重するならば、同居親は、自分に有利なように証言するように、子どもに強制するであろう。子どもは親に強制されて、本心に反して同居親の利益に沿った意見を言うだろう。意見の強制は、虐待である。この法律案は、そうした虐待を促している。
生まれて間もない子どもは、言語的に自分の気持ちを説明することはできない。けれども、父親の声を聞くと、新しい刺激や楽しいことを期待して喜ぶ。それは、脈拍数や呼吸数の変化に現れる。父親へのこうした反応は、胎児のうちから現れる。父親が話しかけた時の子どもの喜ぶ反応を観察することは可能である。
(2)この法律を作るに際しても、子どもの意見を聞くべきである
この法律案は、子どもの処遇を決めるものである。子どもの処遇を決めるに際しては、子どもの意見を聞かなければならない。そうでないと、ハーグ条約受け入れの法律制定の手続き自体が、子どもの権利条約に違反することになる。
この法律を制定するに際しても、可能な限り、子どもの意見を聞くべきだ。親が離婚する不安、知らない土地へ行く心細さ、片親と会えない寂しさ、親が対立するショックなどを、子どもの口から聞くべきだ。親が離婚した子どもたちが作ったグループがある。ネットにそうしたサイトがある。外国から連れ去られた子どもにも、可能な範囲で意見を聞くべきだ。もう成人している人から聞いても良い。そうして、聞いたことを可能な範囲で公表すべきだ。この法律を作るに際しても、「子どもが主役であり、子どもの利益のために行うこと」を確認すべきである。
意見(関係者の利害関係)で決めるのではなく、子どもの精神的な予後を良くするかどうかで決めるべきだ。法律関係者だけで、この法律を作るべきでない。法律とは、国民の意思を文章化したものである。弁護士や裁判官などの法律関係者だけで法律を作ると、彼らの利益が優先されて、子どもの利益が軽視される。子どもの処遇は、子どもの利益で決めるべきだ。
弁護士は、離婚しそうな男女を円満に解決しても金にならないが、離婚させると金になる。紛争が激化するほど、長く金が入る。それには、子どもの奪い合いをさせるのが一番である。日本の裁判官は、中途退職すると多くは弁護士になる。また、定年退職後も多くは弁護士になる。利害関係は、弁護士と同じである。
(3)親子の交流(面会)について、ハーグ条約21条の規定を守るべきだ
この法律案では、親子の交流(面会)については、現行の国内法の制度を使うことになっている。しかし、国内法による交流の決定は、時間がかかりすぎる。調停は、6週間に1回しか開かれない。調停、審判、抗告、特別抗告まで行うと2年以上かかって、その間は、ほとんど子どもに会えない。同居親は、子どもに会わせないことによって親子関係が切れてしまうことを、交渉の有力な武器にする。日本の弁護士は、裁判の結論が出るまで、子どもを非同居親に会わせないように指導する。
返還の審理に要する時間は、目標の6週間以内ではなく、現実には平均286日もかかる。長く会わせないのなら、ハーグ条約の手続き自体が、親子関係を切ってしまうことになる。特に小さい子どもでは、記憶の範囲が狭い。一晩寝ると約束を忘れてしまう年齢の子どももいる。子どもの権利条約は、別居が始まれば、恒常的に親子の交流を行うことを要求している。
日本では、親が離婚した子どもたちの精神的な予後についての調査は、行われていない。それで、Wallerstein や Hetherington が観察したような、子どもに精神的なトラブルが起きるとは認識されていない。日本の裁判官は、月にわずか3時間の親子の交流でも、何の問題も無いと考えている。それが、親子交流に関する判決の平均値であり、裁判官は、それが最も適切であると考えている。
充分な親子の交流を保証すれば、返還自体が不要となる場合もある。インターネットのテレビ会議システムを使えば、どんなに離れていても、無料で毎日子どもの顔を見ることができる。現状では、大半のケースではそういう努力をしておらず、逆に、会わせないことにより父親と子どもの関係を切ろうとしている。単独親権制の下では、相手を完全に切っておかないと、逆に自分が切られる恐れがある。
(4)強制的な返還方法を明記せよ
「中間とりまとめ」では、間接強制だけが書かれている。それなら、連れ去った親は無一文になればよい。子どもの祖父母が借りたアパートに住み、働かず、祖父母からもらった食物を食べればよい。そうして時間を稼げばよい。
違法な連れ去りに対しては、強制手段が必要である。同居親は、子どもの権利に反して違法に連れ去ったのである。有無を言わさずに子どもを連れ去ったのである。強制的に元の状態に戻さなければならない。収監や補導の手続きに準じて行えば良い。
この手続きの途中で、当事者が子どもの処遇について合意することがあり得る。子どもをアメリカに返還する代わりに、充分な親子の交流を認めることは、ありそうなことである。強制がなければ、そうした交渉も行われないだろう。
(5)公示送達の制度を採用せよ
中央当局が居場所を探しても不明な場合に、公示送達をしないのなら、1年間も隠れていればよいことになる。小さい子どもは、英語を完全に忘れて、親の顔も忘れるであろう。公示送達の制度があれば、多くの場合は、関係する者が連れ去った親に知らせるであろう。この制度があれば、隠れている利益が無くなる。
(6)DVを簡単に認定するな
「中間とりまとめ」では、DVが簡単に認定されてしまう。返還拒否は、grave な危険がある場合に限定すべきだ。それが、ハーグ条約の規定である。
返還拒否は、一見して審理する必要もないような、明白な危険のあるケースに限るべきである。返還した後に常住国で詳しい審議をして、DVについて判断すればよい。常住国なら証言も集めやすい。ハーグ条約の「重大な危険」とは、戦争か、飢饉か、危険な病気の流行のような状況に限るべきだという意見がある(Friedrich v. Friedrich)。
日本の現状では、DVは、極めて簡単に認定される。米国から子どもを連れ去られた父親の多くは、子どもの居場所を知らないだろう。警察に言っても捜査してくれないし、裁判所に言っても探してくれないだろう。その他にも、親としての不利な取り扱いを、いろいろ受けているだろう。それは、連れ去った母親の申し出により、父親にDVの疑いがあると認定されているからである。欧米諸国は、こうした日本の現状をよく知らないのであろう。
法律案の通りだと、日本の担当弁護士は、総力をあげてDVの証明をしようとするだろう。精神的DVでも良いのだ。連れ去った親自身の証言、身内や友人の証言を作成するであろう。子どもに働きかけて、子どもに返還を望まないように言わせるであろう。「DVの危険性」を強調することは、日本の弁護士にとっては打出の小槌である。望んでいる結論が得られる。
申立人もそれに対抗して、いろいろな証言を用意するだろう。親子で平和に暮らしていた証明を用意するであろう。連れ去った親が、違法に連れ去ったことを証明するであろう。また連れ去った親の問題点を証明しようとするだろう。
これは、子どもの奪い合いそのものである。法律家が、父親と母親に子どもの奪い合いをさせるという構図が、これまでと全く変わっていない。弁護士が得をするだけだ。
離婚に関する司法手続きの目的は、離婚後も、両方の親が協力して子どもを育てるということである。その目的から、どんどん遠くなってゆく。
国際結婚した夫婦が不仲になれば、母親は、子どもの権利条約を守らずしかもDVを簡単に認定してくれる日本に、これまで通り、子どもを連れ去るであろう。
対策
(1) 欧米からのもっと強い外交措置が必要である
法律案のようになれば、米国人の父親の多くがDVと認定されるか、子ども自身が返還を望んでいないと認定されるかのいずれかであろう。
子どもの拉致問題を解決するには、高率の関税をかけるなどして、もっと強い外交圧力をかけることが必要である。
どうせ内政干渉をするのなら、日本でも共同養育を行うように圧力をかけて欲しい。そうすれば、夫婦は戦わなくて済む。母親は子どもを誘拐しなくて済むのである。
離婚に際して、片親が自分に有利な国に逃げ込む事態を、欧米ではハーグ条約により一応解決した。しかし、日本では、条約自体が守られない。例えば子どもの権利条約は、全く守られていない。子どもの権利条約が、日本の裁判官によって裁判規範だと考えられたことはなく、判決文に判断の根拠として登場したこともない。日本の弁護士と裁判官は、子どもの権利条約を全く無視しているのである。
日本の指導者はリーダーシップに欠ける。Wolferenによれば、日本は浮動している。水面に浮かんだ枯葉のように、風が吹けば浮動するのである。今は、弁護士らの離婚産業からの圧力により、ハーグ条約が無力化されつつある。
去年、中国の漁船が日本の領海を侵して船長が逮捕されたことがあったが、中国政府が「釈放しないのなら、レアアースの日本への輸出を停止する」と述べると、日本政府は直ちに船長を釈放した。強い風があれば、日本は容易に浮動するのである。
共同養育を促すような欧米諸国の圧力を望む。具体的な関税措置などを決めて、日本政府と交渉することを望む。ハーグ条約は効果が無い。
(2) 欧米諸国は、日本政府と日本国民にもっと説明すべきだ
ハーグ条約がなぜ必要なのかを、もっと日本国民に説明する必要がある。言葉の壁が厚いので、日本国民の多くは、その事を充分には理解していない。
日本人の多くは、親が離婚した子どもの精神的なダメージについて知らない。父親の存在が、子どもの発育や発達に重要であることを知らない。離婚した後も、父親と母親で協力して子どもを育てることが可能であることを知らない。離婚のデメリットもあまり知られていない。欧米における研究の蓄積が、日本ではほとんど紹介されていない。
現状では、子どもをどちらの親が育てるかの問題に、国家が介入して、半分日本人である子どもを、アメリカ人が奪い取ろうとしているように見える。家庭内の問題に国家が介入し、国の力の差で子どもを奪い取ろうとしているように見える。
日本の裁判官は、日本の国益を代表しており、か弱い日本女性の味方である。返還について、どのような決定を行うかは、目に見えている。日本の裁判官は、日本の家族法の現状を正しいと思っている。現状が最も正しいと思っているのである。
欧米諸国は、子どもを奪い返そうとするのではなく、子どもの利益のために日本に働きかけて欲しい。子どもの利益のためにハーグ条約が必要であることを日本国民に説明して欲しい。子どもには離婚後も両方の親が必要であることを説明して欲しい。そのために子どもの連れ去りを許さないのであることを、説明して欲しい。
(1)連れ去られた子どもの意見を必ず聞くべきだ
「中間とりまとめ」の「子どもの意思を把握するように努める」とある所を、「子どもの意見を聞かなければならない」と改めるべきだ。
日本の現状では、離婚時に子どもの処遇を決める際に、子どもが15歳未満であれば、子どもの意見を聞くことは、ほとんど行われていない。意見を聞く場合でも、調査官が1回だけ1~2時間をかけて話を聞くだけである。そうして「どちらの親と暮らしたいか」などと、本来選べないものを無理に選ばせる。これは、子どもの心を引き裂く。両方の親を持つことは、子どもの権利である。子どもに自由に話をさせるべきだ。そして同居親からの強制を、慎重に排除すべきだ。
子どもに意見を聞く理由は、「主役が子どもであって、こうした手続き全体が子どもの利益を尊重するために行うものであること」を、関係者が確認するためである。この作業を実際に行って、子どもの利益を本当に尊重しなければならない。「中間とりまとめ」では、この点が認識されていない。
なお、子どもの権利条約では、子どもの処遇を決めるに際しては、子どもの意見を聞くことになっているが、それは聞くだけである。もし、意見の内容を尊重するならば、同居親は、自分に有利なように証言するように、子どもに強制するであろう。子どもは親に強制されて、本心に反して同居親の利益に沿った意見を言うだろう。意見の強制は、虐待である。この法律案は、そうした虐待を促している。
生まれて間もない子どもは、言語的に自分の気持ちを説明することはできない。けれども、父親の声を聞くと、新しい刺激や楽しいことを期待して喜ぶ。それは、脈拍数や呼吸数の変化に現れる。父親へのこうした反応は、胎児のうちから現れる。父親が話しかけた時の子どもの喜ぶ反応を観察することは可能である。
(2)この法律を作るに際しても、子どもの意見を聞くべきである
この法律案は、子どもの処遇を決めるものである。子どもの処遇を決めるに際しては、子どもの意見を聞かなければならない。そうでないと、ハーグ条約受け入れの法律制定の手続き自体が、子どもの権利条約に違反することになる。
この法律を制定するに際しても、可能な限り、子どもの意見を聞くべきだ。親が離婚する不安、知らない土地へ行く心細さ、片親と会えない寂しさ、親が対立するショックなどを、子どもの口から聞くべきだ。親が離婚した子どもたちが作ったグループがある。ネットにそうしたサイトがある。外国から連れ去られた子どもにも、可能な範囲で意見を聞くべきだ。もう成人している人から聞いても良い。そうして、聞いたことを可能な範囲で公表すべきだ。この法律を作るに際しても、「子どもが主役であり、子どもの利益のために行うこと」を確認すべきである。
意見(関係者の利害関係)で決めるのではなく、子どもの精神的な予後を良くするかどうかで決めるべきだ。法律関係者だけで、この法律を作るべきでない。法律とは、国民の意思を文章化したものである。弁護士や裁判官などの法律関係者だけで法律を作ると、彼らの利益が優先されて、子どもの利益が軽視される。子どもの処遇は、子どもの利益で決めるべきだ。
弁護士は、離婚しそうな男女を円満に解決しても金にならないが、離婚させると金になる。紛争が激化するほど、長く金が入る。それには、子どもの奪い合いをさせるのが一番である。日本の裁判官は、中途退職すると多くは弁護士になる。また、定年退職後も多くは弁護士になる。利害関係は、弁護士と同じである。
(3)親子の交流(面会)について、ハーグ条約21条の規定を守るべきだ
この法律案では、親子の交流(面会)については、現行の国内法の制度を使うことになっている。しかし、国内法による交流の決定は、時間がかかりすぎる。調停は、6週間に1回しか開かれない。調停、審判、抗告、特別抗告まで行うと2年以上かかって、その間は、ほとんど子どもに会えない。同居親は、子どもに会わせないことによって親子関係が切れてしまうことを、交渉の有力な武器にする。日本の弁護士は、裁判の結論が出るまで、子どもを非同居親に会わせないように指導する。
返還の審理に要する時間は、目標の6週間以内ではなく、現実には平均286日もかかる。長く会わせないのなら、ハーグ条約の手続き自体が、親子関係を切ってしまうことになる。特に小さい子どもでは、記憶の範囲が狭い。一晩寝ると約束を忘れてしまう年齢の子どももいる。子どもの権利条約は、別居が始まれば、恒常的に親子の交流を行うことを要求している。
日本では、親が離婚した子どもたちの精神的な予後についての調査は、行われていない。それで、Wallerstein や Hetherington が観察したような、子どもに精神的なトラブルが起きるとは認識されていない。日本の裁判官は、月にわずか3時間の親子の交流でも、何の問題も無いと考えている。それが、親子交流に関する判決の平均値であり、裁判官は、それが最も適切であると考えている。
充分な親子の交流を保証すれば、返還自体が不要となる場合もある。インターネットのテレビ会議システムを使えば、どんなに離れていても、無料で毎日子どもの顔を見ることができる。現状では、大半のケースではそういう努力をしておらず、逆に、会わせないことにより父親と子どもの関係を切ろうとしている。単独親権制の下では、相手を完全に切っておかないと、逆に自分が切られる恐れがある。
(4)強制的な返還方法を明記せよ
「中間とりまとめ」では、間接強制だけが書かれている。それなら、連れ去った親は無一文になればよい。子どもの祖父母が借りたアパートに住み、働かず、祖父母からもらった食物を食べればよい。そうして時間を稼げばよい。
違法な連れ去りに対しては、強制手段が必要である。同居親は、子どもの権利に反して違法に連れ去ったのである。有無を言わさずに子どもを連れ去ったのである。強制的に元の状態に戻さなければならない。収監や補導の手続きに準じて行えば良い。
この手続きの途中で、当事者が子どもの処遇について合意することがあり得る。子どもをアメリカに返還する代わりに、充分な親子の交流を認めることは、ありそうなことである。強制がなければ、そうした交渉も行われないだろう。
(5)公示送達の制度を採用せよ
中央当局が居場所を探しても不明な場合に、公示送達をしないのなら、1年間も隠れていればよいことになる。小さい子どもは、英語を完全に忘れて、親の顔も忘れるであろう。公示送達の制度があれば、多くの場合は、関係する者が連れ去った親に知らせるであろう。この制度があれば、隠れている利益が無くなる。
(6)DVを簡単に認定するな
「中間とりまとめ」では、DVが簡単に認定されてしまう。返還拒否は、grave な危険がある場合に限定すべきだ。それが、ハーグ条約の規定である。
返還拒否は、一見して審理する必要もないような、明白な危険のあるケースに限るべきである。返還した後に常住国で詳しい審議をして、DVについて判断すればよい。常住国なら証言も集めやすい。ハーグ条約の「重大な危険」とは、戦争か、飢饉か、危険な病気の流行のような状況に限るべきだという意見がある(Friedrich v. Friedrich)。
日本の現状では、DVは、極めて簡単に認定される。米国から子どもを連れ去られた父親の多くは、子どもの居場所を知らないだろう。警察に言っても捜査してくれないし、裁判所に言っても探してくれないだろう。その他にも、親としての不利な取り扱いを、いろいろ受けているだろう。それは、連れ去った母親の申し出により、父親にDVの疑いがあると認定されているからである。欧米諸国は、こうした日本の現状をよく知らないのであろう。
法律案の通りだと、日本の担当弁護士は、総力をあげてDVの証明をしようとするだろう。精神的DVでも良いのだ。連れ去った親自身の証言、身内や友人の証言を作成するであろう。子どもに働きかけて、子どもに返還を望まないように言わせるであろう。「DVの危険性」を強調することは、日本の弁護士にとっては打出の小槌である。望んでいる結論が得られる。
申立人もそれに対抗して、いろいろな証言を用意するだろう。親子で平和に暮らしていた証明を用意するであろう。連れ去った親が、違法に連れ去ったことを証明するであろう。また連れ去った親の問題点を証明しようとするだろう。
これは、子どもの奪い合いそのものである。法律家が、父親と母親に子どもの奪い合いをさせるという構図が、これまでと全く変わっていない。弁護士が得をするだけだ。
離婚に関する司法手続きの目的は、離婚後も、両方の親が協力して子どもを育てるということである。その目的から、どんどん遠くなってゆく。
国際結婚した夫婦が不仲になれば、母親は、子どもの権利条約を守らずしかもDVを簡単に認定してくれる日本に、これまで通り、子どもを連れ去るであろう。
対策
(1) 欧米からのもっと強い外交措置が必要である
法律案のようになれば、米国人の父親の多くがDVと認定されるか、子ども自身が返還を望んでいないと認定されるかのいずれかであろう。
子どもの拉致問題を解決するには、高率の関税をかけるなどして、もっと強い外交圧力をかけることが必要である。
どうせ内政干渉をするのなら、日本でも共同養育を行うように圧力をかけて欲しい。そうすれば、夫婦は戦わなくて済む。母親は子どもを誘拐しなくて済むのである。
離婚に際して、片親が自分に有利な国に逃げ込む事態を、欧米ではハーグ条約により一応解決した。しかし、日本では、条約自体が守られない。例えば子どもの権利条約は、全く守られていない。子どもの権利条約が、日本の裁判官によって裁判規範だと考えられたことはなく、判決文に判断の根拠として登場したこともない。日本の弁護士と裁判官は、子どもの権利条約を全く無視しているのである。
日本の指導者はリーダーシップに欠ける。Wolferenによれば、日本は浮動している。水面に浮かんだ枯葉のように、風が吹けば浮動するのである。今は、弁護士らの離婚産業からの圧力により、ハーグ条約が無力化されつつある。
去年、中国の漁船が日本の領海を侵して船長が逮捕されたことがあったが、中国政府が「釈放しないのなら、レアアースの日本への輸出を停止する」と述べると、日本政府は直ちに船長を釈放した。強い風があれば、日本は容易に浮動するのである。
共同養育を促すような欧米諸国の圧力を望む。具体的な関税措置などを決めて、日本政府と交渉することを望む。ハーグ条約は効果が無い。
(2) 欧米諸国は、日本政府と日本国民にもっと説明すべきだ
ハーグ条約がなぜ必要なのかを、もっと日本国民に説明する必要がある。言葉の壁が厚いので、日本国民の多くは、その事を充分には理解していない。
日本人の多くは、親が離婚した子どもの精神的なダメージについて知らない。父親の存在が、子どもの発育や発達に重要であることを知らない。離婚した後も、父親と母親で協力して子どもを育てることが可能であることを知らない。離婚のデメリットもあまり知られていない。欧米における研究の蓄積が、日本ではほとんど紹介されていない。
現状では、子どもをどちらの親が育てるかの問題に、国家が介入して、半分日本人である子どもを、アメリカ人が奪い取ろうとしているように見える。家庭内の問題に国家が介入し、国の力の差で子どもを奪い取ろうとしているように見える。
日本の裁判官は、日本の国益を代表しており、か弱い日本女性の味方である。返還について、どのような決定を行うかは、目に見えている。日本の裁判官は、日本の家族法の現状を正しいと思っている。現状が最も正しいと思っているのである。
欧米諸国は、子どもを奪い返そうとするのではなく、子どもの利益のために日本に働きかけて欲しい。子どもの利益のためにハーグ条約が必要であることを日本国民に説明して欲しい。子どもには離婚後も両方の親が必要であることを説明して欲しい。そのために子どもの連れ去りを許さないのであることを、説明して欲しい。