(1)Building Blocks for Father Involvment 「父親から子どもへの関与を増やすために」という文章のうち、1章を読みました。これは、米国厚生省が作成した文章です。1章は、A4で16枚の文章です。1章では、これまでに行われた主要な研究成果を要約しています。
次のような文章がありました。
①約30年前に、卓越した児童心理学者である Michael Lamb は、父親が子どもの発達に貢献していることを我々に思い出させてくれた。その時以来、父親が独特の方式で子どもの健全な発育に貢献していることを報告する数多くの調査研究が行われてきた。学者たちが現在知っているのは、次のようなことである。母親と同じように父親も充分に子どもに関与して育てると、子どもは、認識能力や身体能力により優れ、身体的・精神的により健康となり、困難を乗り越え、自信を持ち、好奇心により富み、同情心がより厚くなり、倫理観がより強くなり、自己コントロールにより優れるようになる。

②父親というのは、アメリカの子どもたちにとって、最も大きな未開発の資源である。父親は、自然であり、復活できて、毒性がない。アメリカの子ども達は、父親がいなければ、今よりさらに健康になることはできないだろう。

③社会的な問題のうち、最も影響が大きいのは、子どもの住む場所から父親がいなくなることであり、またそれが増えることである。なぜなら、父親の不在は、他の多くの社会的問題を引き起こすからである。子どものガイドとなる父親がいなくなり、子どもの世話をする父親がいなくなり、少年に大人の男になるとはどういうことかを教える父親がいなくなり、少女に男性から何を期待できるかを教える父親がいなくなれば、子どもはうまく行かないのである。

④一般的に言えば、父親は子どもをくすぐり、子どもとレスリングをし、子どもを空中に放り投げる(母親はそんなに高くしてはダメと言う)。父親は、陽気で恐ろしい怪獣の役で、子どもたちを追いかける。父親は子どもと遊ぶ時、母親より大きな声を出す。母親は赤ちゃんのゆりかごをゆっくり揺するが、父親はゆりかごを揺さぶる。母親はしとやかだが、父親はばか騒ぎする。父親は競争を奨励するが、母親は平等を求める。父親は自主独立を奨励するが、母親は安全を求める。

⑤教育心理学者の Carol Giligan は次のように述べている。父親は、正義、公正、義務(正しいルールに基づくもの)を重んじるが、母親は、共感、ケア、援助(良好な人間関係に基づくもの)を重んじる。父親は、子どもを観察し、ルールを一貫して厳格に子どもに強制する。これにより父親は、子どもに客観的な判断について教え、正しい行動と誤った行動の結末を教える。母親は、不服従でありながら、上品であり、共感的である。それにより母親は、前途有望な気持ちを子どもに与える。父親も母親も、単独では必ずしも善ではないが、共に協力すれば、健全で適切なバランスを作り出すことができる。

⑥一般的に言えば、父親は、世界を中心として子どもを位置づけるが、母親は子どもを中心として世界を位置づける。例えば、母親は、外界にあって子どもを傷つけるものに神経を尖らせる(暴力、落雷、事故、病気、見知らぬ人、犬や猫など)。父親は、それらに無関心であるわけではないが、子どもが現実世界で遭遇する事物に対して、子どもにその準備ができているかどうかに関心を持つ。

⑦一般的に言えば、父親は、現実世界の厳しさに対して子どもが準備をするのを助ける。母親は、現実世界の厳しさから子どもを守る。子どもが大人になって行くためには、両者が共に必要である。 
上記の文章の第1章は、米国厚生省の同じサイトで動画を見ることができます。
辞書によれば、Head Start という語は、「さい先の良いスタート」という意味であるそうです。
米国厚生省の Head Start 局のホームページによれば、この Head Start プログラムの主な対象者は、貧しい家庭の4歳以下の子どもであるとのことです。このプログラムに年間72億ドルが使われています(1ドル100円なら7200億円です)。Wikipedia 日本語版にも「ヘッドスタート」の解説があります。

(2)Why Fathers Count 「なぜ父親は重要か」という本の1章を読みました。
1章はB5で12枚くらいの文章です。

エモリー大学の John Snarey 教授の仕事が紹介されていました(p13)。父親が子どもに多く関与すると、子どもの発達を助けるだけでなく、父親自身の仕事にも良い影響を与えるという研究です。

別のサイトによれば、同教授の研究は以下のようです。父親が子どもに関与する程度を3つに分けました。「関与する」「ある程度関与する」「関与しない」の3つのグループです。従来の研究では、この3つのグループで、子どもの発達の違いを調べると、子どもが最も良く発達するのが「関与する」のグループであり、最も悪く発達するのが「関与しない」のグループということでした。こうした研究は数多くあります。同教授は、その3つのグループを長期に観察し、父親の仕事の出来を比較したのです。子どもに関与する父親は、短期的には書類書きやプロジェクトの進行で遅れることがあるが、長期的に見ると、その他のグループの父親と比較して劣らぬ成果を挙げているのです。父親が、子どもの精神的発達や青年の社会性の発達に関与するならば、その父親は、自分自身のキャリアの点でも、そうでない父親を上回るのです。