Wikipedia 英語版の記事 gender role (性役割)のうち Communication (コミュニケーション)の項目を、以下のように日本語に訳しました。これを日本語版の Wikipedia 「コミュニケーションの男女差」に投稿しました。
以下はその前半です。
 
 
コミュニケーションの男女差
男性と女性とでは、人とコミュニケーションをする時の仕方が大きく異なっている。例えば、女性は自分のことを述べる頻度が男性よりも多い。女性は、自分の個人的なことを詳しく述べる。そして、女性は男性よりも、相手と親しい話をしながら相手との信頼を深める。一般的に言えば、女性は男性よりも、コミュニケーションを重要視している。

伝統的に、男性は男性とコミュニケーションを行い、女性は女性とコミュニケーションを行ってきたが、その方式は異なっている。男性は、利害が共通することにより、他の男性と親しくなる。女性は、相互支持に基づいて、他の女性と親しくなる。しかし、男性も女性も、異性と親しくなるのは、共通の要因による。共通の要因とは、近くにいること、受容、努力、コミュニケーション、共通の利益、愛情、新奇さなどである。

他の人とどのようにコミュニケーションを行うかを決める時に、状況というのは非常に重要である。個々の人間関係において、どのような伝え方をするのが適切かを理解することは重要である。特に、与えられた状況で、親しさや愛情がどのように伝えられるかを理解するのは、極めて重要である。例えば、男性は、親しい関係においても、競争を念頭に置いている。男性は、自分の弱さや傷つきやすさを述べることを避ける。男性は、コミュニケーションにおいて、自分の個人的なことや感情に関することを話したがらない。男性は、友人と一緒に活動をして友情を交換しながら親しさを伝える。男性は、テレビでスポーツを見る時のように、互いに肩を並べて親しさのコミュニケーションを行うことが多い。

これに対して、女性は自分の弱さや傷つきやすさを述べることを気にしない。実際、女性はそれを述べる時に友情を深めることが多い。女性は、友人を身近に感じる。女性にとって友人とは、相互に批判しない関係、支持し合う関係、自己評価を高め合う関係、正当であると認め合う関係、快適さを提供し合って人間的成長に貢献し合う関係であり、女性は友人の価値を重んじている。女性は、昼食を共にする時のように、顔を向かい合わせて親しさのコミュニケーションを行うことが多い。

異性の友人とコミュニケーションを行うことは、しばしば困難である。なぜならば、男性と女性が、友人関係において使用する表現方法は、根本的に異なっているからである。また、男性は女性よりも、身体的な接触を性的な欲求と結びつけるので、異性間のコミュニケーションはさらに困難となる。また、男性は女性よりも、異性関係においてセックスを求めるが多い。こうしたことにより、異性間のコミュニケーションは、非常に困難なものになる。こうした困難を乗り越えるために、両者ともに、男性の領域と女性の領域について、オープンに話し合うことが必要である。

コミュニケーションと男女の文化
コミュニケーション文化が存在するとは、人々の集団において、互いにコミュニケーションを行う際の標準的なやり方が存在しているということである。

コミュニケーション文化は、男性のものと女性のものに分けることができる。その他のコミュニケーション文化としては、アフリカ出身のアメリカ人のもの、老人のもの、アメリカ原住インディアンのもの、ゲイの男のもの、レスビアンの女のもの、障害者のものなどがある。男女のコミュニケーション文化は、まず最初に形成され、他の文化との相互作用により維持されている。我々はコミュニケーションを通じて、我々の文化が、我々の性にどんな質でどのような活動をするように命じているかを学ぶのである。

「性が差異の根源であり、我々が他者に関与する仕方や他者とコミュニケーションを行う仕方を、性が規定している。」 と広く考えられているが、実際、性は重要な役割を果たしている。全ての文化は、男性の文化と女性の文化に分けることができる。男性の文化と女性の文化は、コミュニケーションの方式が異なっており、また、他者とどのように折り合って行くかという点で異なっている。Julia T. Wood は、研究により「コミュニケーションは、男性であることと女性であることの文化的定義を提供している。」 と述べている。男性文化と女性文化とでは、コミュニケーションを行う理由と、その仕方が、全く異なっている。

コミュニケーションの方式
Deborah Tannen デボラ・タネン教授の研究は、コミュニケーションの様式における男女の違いを明らかにした。以下に列挙するように、男性は他の男性と広く関係するのに対して、女性は他の女性と協調的に関係する。 

*男性は公的な状況で話す傾向がある。女性は私的な状況で話す傾向がある。
*女性は対面して視線を合わせながら話すことが多い。男性は視線をそらして話すことが多い。
*男性は、話題から話題へと飛び移るが、女性は一つの話題にある程度の時間をかける。
*人の話を聞く時に、女性は「うん」とか「そうね」などと声を出しながら聞くことが多いが、男性は黙って聞くことが多い。
*女性は、賛同と支持を表現することが多いが、男性は、論議することが多い。

男性も女性も、一般的には同じ方法でコミュニケーションを行っているという研究結果もある。Suzette Haden Elgin らは、「タネンの研究は、ある特定の文化の、ある特定の経済的状況の女性にだけ当てはまる。」と批判している。女性は男性よりずっと多くの単語を話すと広く信じられているが、それは事実ではない。

Wood, J. T. (1998). Gender Communication, and Culture. In Samovar, L. A., & Porter, R. E., Intercultural communication: A reader. Stamford, CT: Wadsworth.

Tannen, Deborah (1990) Sex, Lies and Conversation; Why Is It So Hard for Men and Women to Talk to Each Other? The Washington Post, June 24, 1990

Maltz, D., & Borker, R. (1982). A cultural approach to male-female miscommunication. In J. Gumperz (Ed.), Language and social identity (pp. 196-216). Cambridge, UK: Cambridge University Press.

コミュニケーションの男女差(2)へ続く)