(1) 「子どもの連れ去り問題」(コリン・ジョーンズ氏)を読みました。
コリン・ジョーンズ氏は、立命館大学法科大学院の教授です。
これは非常に良い本で、内容が豊かであり、重要な指摘が多くあります。この本から学ぶことが多くあります。この本は多くの論拠を踏まえています。日本の家庭裁判所がどのような性質の組織であるかが分かります。
 
・「日本の裁判所は強制力を持たない」と述べておられます。しかし現状でも、母親が犯罪を行って拘留される場合には、自動的に子どもと引き離されるわけです。「引き離しの問題」は生じていません。裁判所が、「母親が子どもを父親に会わさなければ、それは子どもに対する虐待である」と認定すればよいわけです。

・日本の家庭裁判所の現状について、「忙しくて無力な家庭裁判所が、自己満足のために、裁判所にとって最も労力が少なくて済む判決を下している」と述べておられます。そういう面も確かにあるでしょう。しかし、面会交渉の裁判において、「月に3時間」の判決も「月に72時間」の判決も、裁判所の労力は、ほとんど変わらないと思います。「月に360時間」でも良いわけです。なぜ3時間なのかという問題については、私は次のように考えます。①子どもの奪い合いをさせれば、離婚に伴って争いになる。②争いになれば裁判沙汰が増える。③戦いが続く限り、弁護士の収入はいくらでも増える。アメリカの場合、裁判官は終身であるそうですが、日本の場合、裁判官は退職すれば、多くは雇われの弁護士になります。日本には、また、弁護士任官制度があり、弁護士が裁判官になれるのです。彼らが子どもの権利の侵害をするのは、お金のためです。
 
・この本の現状分析は、非常に正確です。だから役に立ちます。しかし、運動論としては、家庭裁判所を法律論で論破しても、しょうがないと思います。「日本の家庭裁判所は、子どもの権利条約を無視している」ということだけで証明としては充分です。犯罪者に対して「お前ら、間違ってるぞ」と言ったところで、しょうがないでしょう。欧米諸国が、単独親権から共同親権に移行したのは、裁判所を論破したからではありません。ただし、運動論としては、現状がどのようなものかを説明することは非常に重要です。この本の分析は正確であるので、一般の人々への広報として大きな価値があります。日本の家庭司法の問題点がよく分かり、何をどうすれば良いかが分かります。

・法律論は関係ありません。理屈は後からどのようにでも付きます。法律論は、法律家が、抽象的な法律を基にして、具体的な現実を理解するのに必要になるというだけです。全てを決めるのは、あくまでも国民の自由意志です。主権は在民であり、法律家の法律論にあるのではありません。この問題は、法律家と国民の利害の問題であり、パワーの問題であり、国民への宣伝の問題です。
 
・この本では、個人対策については、あまり触れられていません。司法改革が行われるのはずっと先かもしれません。子どもに会えない親は、それまで社会運動だけしていたら良いのでしょうか。自分の子どもを助けなくて良いのでしょうか。今できることは無いのでしょうか。

(2)週刊金曜日「時代遅れの戸籍制度」を読みました。
韓国の戸籍は、すでに近代化されており、家を中心とした戸籍から、個人を中心とした戸籍に移行しているそうです。韓国のマネをすれば日本も良くなるかもしれません。

コリン・ジョーンズ氏も、別の本で、日本の戸籍制度が時代錯誤(アナクロニスティック)であると指摘しておられました。

(3)子どもは放射線に弱いです。
これは、小児科医の常識です。小児科医は、子どもの放射線被曝を少しでも減らす意味で、子どもを何度も観察することがあります。高齢者の場合はCT撮影を多用しますが、子どもではなるべく使いません。
 
生殖細胞のDNAが放射線で傷つくと、(修復されなければ)、その傷は、子孫に遺伝して行きます。子どもは傷つきやすいので、特別の配慮を必要としています。

だから、「CT撮影1回分の被爆量だから心配ない」というのは誤りです。雑誌ネイチャーの編集部によれば、欧米では医療用放射線による発癌は、癌患者全体の1%であるが、日本では2~3%であるとのことです。
 
以前(2010.10.25)にも申し上げましたように、「坪野先生の紹介記事によれば、米国では、1年間に7200万件のCT撮影が行われ、将来2万9千件の癌ができると推計されています。単純に計算すると、CTを2500枚撮影すると癌が一つできる計算です。子どもの体は傷つきやすいので、小児では、もっと高い割合であろうと思います。」。人口当たりでみると、日本は世界で最もCT撮影を多く行う国です。

CT撮影1回分の被爆量であれば非常に心配なのです。ただし、病気の時にはCT撮影が必要な時もあります。主治医の先生を信頼して、よく相談して下さい。

(4)映画「チャイナシンドローム」を英語字幕で見ました。放射線防御の話は、あまり出てきませんでした。 星一つです。 ★