(1) Wikipedia の「離婚」に、「離婚に関係する心理学理論」を投稿しました。以下がその内容です。
 
離婚に関係する心理学理論
離婚に関係する心理学理論には以下のようなものがある。
  • (社会交換理論) 人は他者との人間関係を維持する得失と、断つ得失を比較評価して、その存廃を決めると考える。物質的得失だけでなく、精神的得失も評価される。この理論は、離婚に至るリスクを評価する際に役に立つ。
  • (進化心理学) 生物は、自分の遺伝子を子孫に増やすように行動すると主張する。離婚についても、遺伝子の繁栄の観点から説明する。
  • (離婚の過程モデル) 離婚は単一の出来事ではなく、一連の過程(プロセス)であると考える。離婚には以下のような側面があり、それらは必ずしも同時には起こらないと考える。(1)心の上での離婚、(2)法的な離婚、(3)経済的に2世帯になること、(4)子育てを分割すること、(5)地域社会において2世帯になること、(6)精神的な立ち直り。
  • (家族システム論) 離婚について、夫と妻の関係が途絶することだけに注目するのではなく、家族構成員個々の関係の変化や、家族をとりまく人々との関係の変化にも注目する。
  • (辛抱強さ、レジリエンス) ささいな出来事でも簡単に心が折れる人がいる一方で、困難な状況にもじっと耐える人がいる。この辛抱強さの程度から離婚しやすさを説明する。また、離婚後のストレスに対しても、辛抱強い人とそうでない人がいると主張する。
  • (愛着理論) 乳幼児において観察された対人関係の類型は、成人においても存続すると主張する。大人の愛着パターンは、安心型(50~60%の人)、不安-逃避型(25~30%の人)、不安-専心型(約15%の人)であり、このうち不安型の人は、離婚や再婚に至る可能性が高いと主張する。
(文献)Divorce : Causes and Consequences p20-28 (この本は Google books にもあります)
 
(2)「離婚後の共同子育て」という本を読みました。
著者2名は米国人であり、心理学を習得し、高葛藤の両親のために、「効果的な共同子育てを目指して対等に協力する両親のためのプログラム」を提供しています。訳者は、大正大学准教授の臨床心理の青木聡先生です。
 
これは要するに、「コミュニケーションが悪くて離婚した元夫婦が、子どもの受け渡しをしたりすると、コミュニケーションが悪いのですぐに喧嘩になってしまい子どもが悲しむ」ということです。
 
この本には、共同育児を実施する際に、どうすれば良いかが書いてあります。共同育児は、ゴールではなく、スタートであると分かります。また、子どもや離婚した人の気持ちが書かれています。この本を読むと、コミュニケーションの重要性が分かります。日本には、この方面の本がほとんど無いので、これは貴重な本です。この本には、以下のようなことが書かれています。

(1)、「コミュニケーション不足や失望が、争いを再燃させます」(p23)。
(2)、「争いには、関係性を活気づけるという側面があります。争いがつながりを保つ理由になっている場合があるのです」(p36)。
(3)、「子どもを愛し、子どもの将来を気遣っているならば、もう片方の親とちゃんとコミュニケーションをとる」(p93)。
(4)、「子どもに関するコミュニケーションの目的は、子どもの生活を守り、問題を解決し、離婚によるストレスをできるだけ減らすように調整することです」(p94)。
(5)、「子育てに関する電話連絡は、毎週1回、両者にとって都合のよい時間に予定されます」(p108)。
(6)、「私たちの経験では、長期的な成功を考えると、手紙や電子メールはあまり好ましいとは言えません」(p114)。
(7)、「高葛藤の両親は、不十分かつ不定期にしかコミュニケーションをとりません。そのため、情報の空白をマイナスの印象や思考で埋めやすいのです」(p144)。
(8)、「子どもは両親の争いに巻き込まれたくないために、伝達役を引き受けません」(p253)。
(9)、「(PASのケースに対して)裁判所は親権者/監護権者の再判定を指示しました」(p275)。
(10)、「片親疎外の罠にはまったら、専門家チームの支援が欠かせません。多くの場合、疎外親は個人セラピーを受ける必要があります。もう片方の親と子どもの関係に悪影響を与えている自分の問題について理解できるようになります」(p282)。