「離婚の心理学」という本を読みました。
1.人間心理に関する本の中には、素人の感想文に過ぎないようなものもあります。この本はどうでしょうか。判断基準を満たしているでしょうか。
(1)著者はその問題で高等教育を受けているか
(2)引用は適切か
著者は、関西学院大学社会心理学科を卒業しておられます。また、この本は1000くらいの論文や本を引用していますが、Amato,P.R., Furstenberg,F.F., Wallerstein,J.S., 国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集など、適切に引用が行われています。
(1)著者はその問題で高等教育を受けているか
(2)引用は適切か
著者は、関西学院大学社会心理学科を卒業しておられます。また、この本は1000くらいの論文や本を引用していますが、Amato,P.R., Furstenberg,F.F., Wallerstein,J.S., 国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集など、適切に引用が行われています。
この本は、読むに値すると判断できます。
2.この本は、日本では唯一の「離婚の心理学」の本です。これまで、このような本は日本ではありませんでした。私は、この本の各章の各項目の内容の半分くらいを知っていますが、残りの半分を知りません。各文については、知っている内容が2割くらいです。だから、知識を学んで参考になる点が数多くあります。
3.この本には副題がついており、「パートナーを失う原因とその対処」です。この著者が勧めている対処法は、「問題解決を延期すること」です。すぐに問題が解決できない時に、それを延期するのは当然の技術です。例えばPREPにおいても、話し合いが白熱してきた場合には、どちらかからでも期限を付けて話し合いを延期することになっています。
著者は書いていませんが、問題解決延期には次のような効用があります。
①紛争状態というのは「売り言葉に買い言葉」の状態であって、報復が報復を呼ぶ状態で、傷つけ合いが続く状態です。これを中断させる効果があります。(ゲームの理論において最も優れた戦略は「仕返し戦略」です。しかし何かの拍子で攻撃が行われると、仕返しが永遠に続くことになります)。
②延期した時間に、情報収集を行って、相手の立場を理解することができます。
③延期した時間に、ブレーンストーミングを行って、解決策を模索することができます。
④日本が抱える3か所の領土問題でも、貿易の相手国として友好関係を続けたいなら、問題解決を当面は延期しておくしかありません。
確かに一定の効果はあるものの、誰でも知っているようなことであって、夫婦関係改善のプログラムでは既に採用されているような多くの技術の一つにすぎません。
「間近に迫って来た災害をどうするか」という問題は、延期できないでしょう。また、自分の苦痛は一刻も我慢できないかもしれません。
著者は、自説を実地に離婚しそうな夫婦で試したわけでもありません。著者のしたことは、その問題解決延期法を看護学生100人に行ってもらい、夫婦問題ではなく日常のストレス対策として効果があったということだけのようです。それだと英語の論文にはならないでしょう。実際、英語の論文は無いようです。
著者は「問題解決の延期」の他に、「受容」と「許し」とも述べていますが、その二つは同義反復の意味もあります。受容できず許せないから離婚するのです。「受容せよ、許せ」と言うだけでは「離婚するな」と言うのと大差ありません。操作的であるのは「問題解決の延期」だけです。「受容し許すために何をすればよいか」については、書かれていません。例えば、相手の事情をよく聞いて、相手の考えや感情をよく聞くなど、コミュニケーションの改善が必要です。
著者は書いていませんが、問題解決延期には次のような効用があります。
①紛争状態というのは「売り言葉に買い言葉」の状態であって、報復が報復を呼ぶ状態で、傷つけ合いが続く状態です。これを中断させる効果があります。(ゲームの理論において最も優れた戦略は「仕返し戦略」です。しかし何かの拍子で攻撃が行われると、仕返しが永遠に続くことになります)。
②延期した時間に、情報収集を行って、相手の立場を理解することができます。
③延期した時間に、ブレーンストーミングを行って、解決策を模索することができます。
④日本が抱える3か所の領土問題でも、貿易の相手国として友好関係を続けたいなら、問題解決を当面は延期しておくしかありません。
確かに一定の効果はあるものの、誰でも知っているようなことであって、夫婦関係改善のプログラムでは既に採用されているような多くの技術の一つにすぎません。
「間近に迫って来た災害をどうするか」という問題は、延期できないでしょう。また、自分の苦痛は一刻も我慢できないかもしれません。
著者は、自説を実地に離婚しそうな夫婦で試したわけでもありません。著者のしたことは、その問題解決延期法を看護学生100人に行ってもらい、夫婦問題ではなく日常のストレス対策として効果があったということだけのようです。それだと英語の論文にはならないでしょう。実際、英語の論文は無いようです。
著者は「問題解決の延期」の他に、「受容」と「許し」とも述べていますが、その二つは同義反復の意味もあります。受容できず許せないから離婚するのです。「受容せよ、許せ」と言うだけでは「離婚するな」と言うのと大差ありません。操作的であるのは「問題解決の延期」だけです。「受容し許すために何をすればよいか」については、書かれていません。例えば、相手の事情をよく聞いて、相手の考えや感情をよく聞くなど、コミュニケーションの改善が必要です。
4.著者は「相手が不倫しているのなら別れなさい」と述べて、それが科学の結論であるかのように述べています。しかし、その根拠を書いていません。他の研究者の主張とは異なっており、著者の非科学的な感想の一つに過ぎません。全体として軽薄過ぎます。重い問題を扱っている自覚が無いようです。離婚をストレスの一つとして捉えて、離婚の文献を集めたというだけで、重い問題として担っていないようです。
5.著者も述べていますが、効果のある確立されたプログラムはいろいろあります。p211の図にも書いてあるように、そうしたプログラムの実施直後から夫婦の関係は改善し、その効果は永続します。ゴットマンのプログラムもその一つです。PREPもその一つです。米国厚生省のHealthy Marriage Initiative、National Healthy marriage Resource Centerでは情報提供を行っています。
すでに確立されて実地に確かめられてアメリカ政府が後押ししておるようなプログラムを行えば確かな効果が得られます。プログラムに参加できない人のために、本も書かれています。それを読んで自分で実行すればよいのです。
この本の著者の言うこと(問題延期法)だけを行う必要はありません。どの程度の効果があるのかを著者自身も知りません。多くの人は、知識として離婚の真実の姿などを知る必要も無く、「具体的に何をすればよいか」が分ればよいのです。それは、一言で言えばコミュニケーションの正しい仕方ということです。
すでに確立されて実地に確かめられてアメリカ政府が後押ししておるようなプログラムを行えば確かな効果が得られます。プログラムに参加できない人のために、本も書かれています。それを読んで自分で実行すればよいのです。
この本の著者の言うこと(問題延期法)だけを行う必要はありません。どの程度の効果があるのかを著者自身も知りません。多くの人は、知識として離婚の真実の姿などを知る必要も無く、「具体的に何をすればよいか」が分ればよいのです。それは、一言で言えばコミュニケーションの正しい仕方ということです。
6.著者は、伝統ある理論を簡単に否定しています。例えば、別れの段階理論を「客観的データが無い」として簡単に否定しています。しかし、別れの段階理論は、「離婚で壊れるこどもたち」では、ゆるぎない主要な事実として扱われています。著者は、その他の主要理論も、簡単に否定しています。要するに著者が自分の研究テーマを決めるに際して、その他の理論を採用するのは、気が向かなかったというだけでしょう。
7.著者は、「満足感」を唯一の指標として論を進めています。満足感が少ないことと離婚とは、必ずしも同じではありません。同じ満足度でも、離婚に澄みきるのと踏み切らないのとでは、雲泥の違いがあります。同じ満足度でも、大きな満足と大きな不満を、同時に持っている人もいるでしょう。内容は、離婚の心理学というより「結婚における満足感の心理学」というべきものです。不満があっても、離婚に踏み切るには、子どものことを考えなければならず、離婚の制度を考えなければならず、周囲の状況を考えなければなりません。また、夫婦仲が悪くなって離婚寸前まで行っても、離婚せずにいると90%の夫婦では仲が改善します。
8.また著者は「問題解決を目指すとストレスが増える」と述べて問題解決を簡単に否定しています。コミュニケーションを充分に行うことにより、解がない場合でも、互いに納得することはできます。子どもを2人の親が奪い合う場合では、解決が無いように見えますが、子どもの時間を半分にして、半分ずつの時間を子どもと過ごすような方法もあります。また解決が無い問題を2つ組み合わせて、一勝一敗にする手もあります。こうして折り合って行くのです。
8.また著者は「問題解決を目指すとストレスが増える」と述べて問題解決を簡単に否定しています。コミュニケーションを充分に行うことにより、解がない場合でも、互いに納得することはできます。子どもを2人の親が奪い合う場合では、解決が無いように見えますが、子どもの時間を半分にして、半分ずつの時間を子どもと過ごすような方法もあります。また解決が無い問題を2つ組み合わせて、一勝一敗にする手もあります。こうして折り合って行くのです。
9.この本には、上記のようにいろいろな問題点がありますが、日本におけるこの方面の唯一の書です。いろいろな研究成果を日本語で知ることができます。