毎日新聞 2010年8月14日の記事によると、日本政府は来年にハーグ条約を批准する意向を固めたとのことです。ハーグ条約を批准するとどうなるでしょうか。サボイ氏は子どもに会えるでしょうか。
私は、日本がハーグ条約を批准しても、サボイ氏は子どもに会えないだろうと予想します。
日本はすでに子どもの権利条約を批准しています。子どもの権利条約によれば、別居が始まれば、子どもと別居親は、恒常的に交流を行うことになっています。子どもと別居親の親子関係を切らないためです。しかし、日本の裁判所は、この条約を完全に無視しています。日本で、子どもの権利条約が、判決に引用されることはありません。一般に条約は、政府の努力目標を示すものではあっても、裁判の規範であるとは考えられていないのです。個々の裁判官は、仲間集団の規範や先輩集団の規範に従っており、国会で正当に批准された条約を無視しても、特に違和感を感じていないのです。日本では、過去3回にわたって、国連の子どもの権利委員会から是正の勧告を受けています。しかし、何の罰則もないので関係者は気にしていません。
現在サボイ氏が、日本に住んでいると仮定して、どうなるかを予測すれば、他の多くの父親と同じように、月に3時間ほどの面会が認められるだけでしょう。サボイ氏は、子どもを誘拐しようとしたことがあるので、監視付きになるかもしれません。
ハーグ条約が批准されれば、遡及的に適用されるだろうと予想します。当然、サボイ氏は手続きを開始するでしょう。しかし日本の裁判官は、ハーグ条約を子どもの権利条約と同じように扱う可能性もあります。全く無視するということです。 (後日記入:ハーグ条約は遡及しません)
そうならずに、ハーグ条約に従って審理が開始された場合のことを考えてみます。その場合に何が起きるでしょうか。
元妻は、当然弁護士に依頼して、全力を尽くして子どもが取り上げられないようにするでしょう。依頼された弁護士は、対策を立てるでしょう。(日本の弁護士は、不和の家庭の母親に、連れ去り別居を指導しています。子どもの権利を無視しています)。
まず、サボイ氏がこれまで行った身体的暴力、言葉の暴力について、具体的な出来事を、元妻の証言として文章にするでしょう。元妻から見て、真実に思えるものなら、何でも良いのです。また、元妻の両親や友人から、サボイ氏の暴力についての証言を集めるでしょう。元妻が書いた手紙なども、証拠になります。元妻がケガをした診療記録があれば、完璧な証拠になります。
サボイ氏は、日本国内で日本の現行法規を無視して、子どもを誘拐しようとしました。これは、極めて有力で、決定的な証拠になるでしょう。
また、元妻は、子どもにも証言させるでしょう。「パパは怖い」、「パパはいつもママをいじめる」などと証言させて、そのビデオや録音を提出するでしょう。また、「父親の行動により、子どもが精神的に不安定になっている」という医師の診断書を付けるでしょう。(医師は求めに応じて診断書を書くでしょう)。
サボイ氏には、反論の機会もなく、反証の機会も与えられません。現状でも、上記の程度の主張が行われるならば、日本の裁判所にとっては充分です。サボイ氏の子どもをアメリカ合衆国へ送還することは、ほとんど不可能です。
万一送還することに決まっても、執行官が子どもを連行する際に、子どもが母親にしがみついて離れなければ、執行官は「連行不可能」という判定を下して帰るでしょう。
現状でも、子どもの権利条約を無視して、サボイ氏に充分な親子の交流を認めない日本の家庭裁判所が、外国からの圧力で批准させられたハーグ条約の精神を尊重するというのは考えにくいことです。「サボイ氏にはDVの疑いがあって、子どもの送還には懸念がある」という結論が予想されます。
ハーグ条約に従って子どもを送還するのは、そうしても問題が無いケースだけになるだろうと想像します。新しい恋人ができて、子どもの育児を元夫にお願いしたくなったような場合です。あるいは、弁護士を雇うお金が無くて有効な立証活動ができない人の子どもだけになるかもしれません。
米国が日本にハーグ条約の批准だけを求めても効果はありません。両方の親が協力して子どもを育てるような家族法の改正を要求することが必要です。