勝間氏は「高い本は良い本である」と書いておられます。「良い本でなければ、その値段では売れないから」だそうです。
 
The Role of the Father」 (父親の役割、第5版、2010年)という本は、8400円もしますから高い本です。この本は、確かに良い本です。 この本の6章は、Fathers, Children, and Divorce (父と子と離婚) という題です。この6章を読みました。6章を書いたのは、ペンシルバニア州立大学社会学の Paul Amato 教授 です。Amato教授は、多くの賞を獲得しておられます。この6章は、138の論文を引用した総説です。この方面の教科書として使用できます。6章のうち、いくつかの文を訳しました。
 
(1) 多くの研究が一致して示しているのは、非同居の父親が離婚後も子どもに積極的に関与すると、子どもの精神的・行動的なトラブルは減り、学校への適応も良くなることである。
 
(2) アメリカの離婚率は、1960年の2.2から、1980年には5.2まで増加し、2006年には3.6まで減少した。減少した第一の要因は、晩婚化である。晩婚化すれば、結婚している人の割合が低くなる。また、遅く結婚した人の離婚率は低い。
 
(3) 離婚の危険因子は、次のようである。10代での結婚、貧しいこと、十分な教育を受けていないこと、子どもができなかったこと、前の結婚からの子どもがいること、再婚や再々婚であること、結婚前に同棲していたこと、信仰心が薄いこと、違う宗教を信じていること、都市に住んでいること、離婚している親に育てられたことなどである。
 
(4) 争いが絶えず幸福が少ない結婚生活や、結婚生活への関与が少ない結婚は、離婚になりやすい。

(5) 離婚した男は、結婚を続けている男に比べて、収入が少ない( 36,900ドル 対 63,700ドル )。離婚した男は、結婚を続けている男に比べて資産が少ない( 140,500ドル 対 303,400ドル )。
 
(6) たいていの研究者が気が付いているのは、子どもにとって重要なのは、父と子が一緒に過ごす時間の長さではなく、父と子の関係の質であることだ。交流の回数は、子どもの予後とは関連しない。子どもの予後を改善させるのは、子どもを賞賛し、温かみをもって接し、子どもが困ることを話題にし、子どもの行動を見守ってアドバイスすることである。
 
(7) 離婚は、予防するのが良い。アメリカ合衆国連邦政府、州政府、各地域は、結婚生活を強化し、カップルが健全で安定した関係を深めるための努力を行っているが、それは適切で有用な社会政策の目標である。

138ある引用文献の大半は、2000年以後に出版されたものです。6章の文献の中に、日本人と思われる名前はありません。なお、この本の別の章を、千葉大の中澤潤教授、早稲田大の山本登志哉教授がお書きになっています。

(次の記事へ続く)