(1) 棚瀬一代氏の「離婚で壊れる子どもたち」のp22には、次のように書かれています。「米国での報告では、離婚後に母親の年収は70%くらい減るのに対して、父親の年収は15%くらい増えると言われている」。出典は書かれていません。
離婚するだけで男性の年収が15%も増えるのなら、偽装離婚する人があるかもしれません。しかし、そんな話は聞いたことがありません。逆に扶養手当の分が減るはずです。
(2) また棚瀬一代氏は「離婚と子ども」の中で次のように述べています。「アメリカでは、離婚すると母親の年収は30%減少するのに対し、父親の年収は15%増えると言われている」。ここで棚瀬氏は根拠として(Furstenberg、Cherlin 1991)を挙げておられます。
(3) Furstenbergらの同年の本「Devided Families」(P50)では、次のように書かれています。「1970年代を通じて、別居してからの1年間では、女性の収入が30%減少するのに対して、男性の収入は15%増加する」。その根拠として(Duncan、Hoffman Demography 22 1985)が挙げられています。
(4) Duncan らはその論文で、以下のように述べています。(引用は白人のみです)。
(1969年から1975年の間に、離婚または別居した人が対象です)。
収入の変動 (離婚または別居した年を1.00とする)
1年後、3年後、5年後
・離婚または別居した女性 0.84 0.99 1.03
再婚しない女性 0.72 0.72 0.71
再婚した女性 - - 1.27
再婚しない女性 0.72 0.72 0.71
再婚した女性 - - 1.27
・離婚または別居した男性 0.91 1.11 1.17
・離婚も別居もしていない男女 1.18 1.17 1.27
・離婚も別居もしていない男女 1.18 1.17 1.27
1年後ではなく5年後の収入は、確かに、再婚しない女性では30%減少しており、離婚または別居した男性では約15%増加しています。しかし、5年後に増加したのは、離婚したからではなく、定期的な昇給によるものだろうと思われます。離婚も別居もしていなければ、5年後には27%増加するのです。
Duncanらは、再婚しない割合も調べています。女性の場合、5年後に再婚していない割合は、45.6%でした。また男性では、25.9%でした。
このDuncanらの研究の要旨だけをネットで読むことができます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4076480
このDuncanらの研究の要旨だけをネットで読むことができます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4076480
要旨の該当部分には、次のように書かれています。
「たいていの男たちは、別居や離婚をすると暮し向きは、ただちに良くなる。なぜなら、収入の大半は維持されるのに、妻を養う費用や、子どもを養う養育費は、妻へわずかしか支払われないからであり、それまで妻子を養うのに必要だった費用は、もはや不要になるのである」。
「たいていの男たちは、別居や離婚をすると暮し向きは、ただちに良くなる。なぜなら、収入の大半は維持されるのに、妻を養う費用や、子どもを養う養育費は、妻へわずかしか支払われないからであり、それまで妻子を養うのに必要だった費用は、もはや不要になるのである」。
つまり、収入が増えるのではなく、「養育費の支払いが少ないので、妻子を養っていた部分の費用が浮く」と述べているのです。(Duncan の他の論文もあります)。
1970年代前半の当時は、米国でも親子関係の維持には、充分の注意が払われていませんでした。父親と子どもの親子関係も、大半の場合で切れていました。Wallerstein らは、養育費が18歳を超えて支払われる例がほとんど無いことを報告しています。
この要旨の発言について、Duncan は、離婚に伴う出費や、離婚後に必要となる出費について、考慮していません。「一人扶持は食えない」のです。また離婚産業は、当事者を敵対させて「漁夫の利」を狙っています。
1970年代前半の当時は、米国でも親子関係の維持には、充分の注意が払われていませんでした。父親と子どもの親子関係も、大半の場合で切れていました。Wallerstein らは、養育費が18歳を超えて支払われる例がほとんど無いことを報告しています。
この要旨の発言について、Duncan は、離婚に伴う出費や、離婚後に必要となる出費について、考慮していません。「一人扶持は食えない」のです。また離婚産業は、当事者を敵対させて「漁夫の利」を狙っています。
(5) 「Father and children's reunion」という本において、Farrellは、次のように述べています。
(7章、離婚は女を貧しくし男を富ませるか、p160~168)
・1985年に Weitzman は、「離婚すると女は生活水準が73%悪くなり、男は42%良くなる」と述べた。
・1985年に Weitzman は、「離婚すると女は生活水準が73%悪くなり、男は42%良くなる」と述べた。
・ Weitzman の研究は、多くの人に引用された。
・しかし Weitzman は、最終的に、自分の計算が誤っていたことを認めた。
・経済学者のDuncan と Hoffman は、この問題を再検討した。
・彼らは「離婚すると女性は、生活水準は9%悪くなるが、5年後には元の水準に戻る」と述べた。
・彼らは「離婚すると女性は、生活水準は9%悪くなるが、5年後には元の水準に戻る」と述べた。
(改善は、主に再婚による)。
(StroupとPollock1994年、離婚1年後の経済状況を調査)
「女性も男性も、離婚後の収入減を経験している。彼らのデータによると、離婚後1年目の女性は平均して世帯収入が22パーセント減っている。(中略)、(離婚した男性では)平均して10パーセントの収入減をデータは示した」。
これは、上記の Duncan らのデータとほぼ同じです。
(7) 「離婚により男の年収が増加する」というのは、偽フェミニストや離婚産業による空騒ぎです。欧米や中国や韓国のように、離婚後にも共同で育児を行って、子どもと父親との親子関係をしっかり維持することが重要です。そうすれば、子どもの経済状況は良好に維持されます。 国連などの国際機関が言うように、子どもの権利を尊重することが重要です。離婚後にも、育児には、敵対ではなく協力が必要です。