「 Out of Touch 」は、本の題名です。Google Books で、大部分を無料で読むことができます。
この本は、学術的な本です。メリーランド大学の Greif 準教授とテキサス大学の Hegar 準教授の共著です。
この本は、学術的な本です。メリーランド大学の Greif 準教授とテキサス大学の Hegar 準教授の共著です。
親が離婚した場合に、同居していない親子の関係が切れてしまう場合があります。Wallerstein は、親が離婚した子どもを長期に観察して、同居していない親子の間では、裁判所が決めた養育費の支払い期間が過ぎると、殆どの場合に、送金が止まってしまうことを報告しています。
この本は、同居していない親と子の関係を維持するための方策を、科学的な調査研究の成果に基づいて検証し対策を提案しています。以下は、この本の第9章「予防と解決」に書かれていることです。
(1)親子関係を維持させるためには、子どもとの距離が非常に重要であると述べています。以前は歩いて5分で子どもに会えていたものが、乗り物を使って2時間もかかるようになると、親子関係の維持に重大な影響が及ぼされると述べています。事情が許す限り近いほど良いということです(p191)。
(2)年少の子どもでは、短時間で頻回の交流を必要としていると述べています(p199)。1週間は、子どもにとっては長い時間です。成長するにつれて、交流1回の時間を長くして、その間隔をあけることができます。
(3)離婚後に起きるトラブルを避けるにはコミュニケーションが重要であると述べています。それでなくてもコミュニケーションが悪くて離婚したのですから、喧嘩別れした後でコミュニーションを改善させるのは、なかなか大変です。著者は、コミュニケーションをしようとする意思を持つことと、協調して努力することが重要であると述べています(p199、p207)。
(4)子どもが、親子の交流を嫌がる場合があるので、その場合には、子どもに理由を聞く必要があると述べています。「思春期の理由」や、「好きなテレビを見ることができない」や、「しつけが厳しすぎる」などがあるかもしれません。そうした場合に、親として拒絶されたなどと重大に受け取る必要はない、と述べています(p198)。
(5)著者らは、非常に多くのケースで、非同居親が親子の交流から離れてゆくことを観察しています。感情の問題、離婚したときの怒り、交流時のトラブル、コミュニケーションの欠落、金銭的義務の回避などが原因で、親子の交流をしなくなる、と著者は述べています(p200)。
私は、それを「親子関係が切れた」という末期症状の一つであると見ています。親子関係が存続していれば、子どもに会いたくない親は、いないでしょう。
また何か原因があって、非同居親が子どもから離れたいと思う場合があります。例えば、自分に何か欠点があるという理由で、子どもから身を引こうとする人がいます。その人は、子どもにとっての自分の価値に気がつくべきだ、と著者は述べています。そして子どもとよく話し合う必要があると述べています。子どもは、親から離れたくないかもしれません(p200)。また、自分から人間関係を絶ってしまうと、今後、二度と修復できないかもしれません(p202)。
また、多くの非同居親は、子どもの愛し方を知らず、また愛情の表現法を知らない、と述べています。ある別の本には「子どもに愛情を示すには、エネルギーと時間が必要である」と書いてありました。
(6)非同居親が再婚すると、新しい配偶者は、意識的にも無意識的にも、親子の交流が減ることを望む場合があるとのことです(p202)。特に、交流にかかる費用を減らそうとすることがあるそうです。
(7)また、交流がうまく行かない場合には、外部の援助を利用することを勧めています。サポートシステムとして、友人などの第三者、カウンセリング、調停、裁判などがあります。私は、「子どもの権利条約」も、理念としてサポートシステムに含まれると思います。
(8)切れていた親子関係の改善は、次の4つを契機として起きると述べています。①子どもが次第に成熟してゆくこと。②家族の状況に変化が起きて、協力関係が生じること。③相互の悪い感情に変化が起きること。④住んでいる状況に変化が起きて、協力関係になること(p208)。
また、親子関係の改善は、ゆっくりとしか起こらないと述べています(p213)。あせって性急に試みても、うまく行かないそうです。