この本の書評は、あまり良くないのもあります。書評の一つによれば「ブログの訪問者数を増やすにはどうすれば良いかが書いてあり、いつもの自慢話が書いてある」とのことです。
著者は、ブログを開設して記事を書く意義について、「ブログは自分を開示する立体名刺である」と述べておられます。そして「それにより新しい人と出会うことができる」と述べておられます。
ブログに記事を書きつづけるのは、なかなか大変です。ヒマとエネルギーが必要です。記事を書くことには、もっと別の意義もあります。
「 Publish or Perish 」(出版するのでなければ、消え失せよ)と言う標語があります。「研究をする人は、時々研究の成果を発表して、関係者の意見を聞かなければ、良い研究はできない」という意味だろうと思います。
医者の日常診療においても、自分の仕事内容を公表して、先輩や同僚の目を通しておく必要があります。医者は、非常に重い責任を負っています。熱心な医者は、たいてい研究活動を行って、その成果を公表しています。それにより自分の勉強・技術のレベルを示すことができます。患者さんから見れば、医者の頭の中が金儲けだけではないことをが分かります。
また、医者は患者さんに対して説明責任があります。日常診療では、1人に3分ほどしか時間が取れない場合もあります。充分に時間をかけて説明をしたいこともあります。
説明は必須であって、説明しないと事態が最悪であると疑われることがあります(その1、その2)。結果が良い場合は良いのですが、結果が悪いときはトラブルになることもあります。医師会の紛争委員の方も「医事紛争の半分は、説明不足が原因です」と述べておられました。悪い結果が起きてからの説明は、言い逃れだと受け取られかねません。
ネットには、匿名の情報も多くありますが、勝間氏は、本名を使うことを勧めておられます。私は、ご覧のように本名です。Wikipedia も、本名で書いています。これは情報に責任を持つためです。匿名の情報を真に受ける人は、損をすることもあるでしょう。
もちろん本名を出すリスクも有ります。いいかげんな情報を提供して、他の人に損害を与えれば、後で責任を問われることもあるでしょう。中西教授は正しい意見を書いても裁判になりました。他人の健康を害してもお金を得ようとしている人たちを批判するリスクもあります。
文章を公表しておけば、読んだ人がその真偽を確かめることができます。かつて私は、ビタミンAについて、小文を書きました。これを読んで「本当にそうなのか」と思った人も、掲げてある根拠を自分で確かめることができます。また、知り合いの薬剤師さんがいれば、意見を聞くこともできます。この記事の趣旨は、厚生労働省の文章を分かりやすく説明することであって、私の個人的な意見を述べることではありません。一般の人は、ビタミンAを過剰に摂取する危険についてあまり知らないようなので、この小文を書きました。貧血の妊婦さんが、治療のつもりでレバーをたくさん食べるのは危険です。
今日の治療薬(2006年)という本が手元にありますが、次のように書いてあります。「妊娠4週~7週末まで」(p1057)。「この時期は、中枢神経、心臓、消化器、四肢などの重要臓器の発生があり、薬剤などによる催奇形性が疑われる胎児が最も敏感な時期である。サリドマイドによる胎児奇形が起こったのもこの時期であり、この時期の薬剤服用には十分注意が必要である。特にホルモン剤、ワルファリン、向精神薬、脂溶性ビタミン(A、D)などが、気をつけなくてはならない薬剤の代表である」。
物作りは、古い産業です。情報提供は、新しい産業です。情報を提供することは、新しい産業に従事しようとする決意表明でもあります。もう物は充分にあります。低開発国の労働者と競争をして物を作る必要はありません。必要なのは情報です。
教えることは学ぶことである( To teach is to learn. )という言葉もあります。情報提供をすれば、大切な情報の獲得もうまくなると期待できます。自分自身が、善意のかたまりとなって重用な情報を惜しげも無く渾身の力でお伝え申し上げ続けているので、他にもそういうことをする人がいるだろうと思い当たり、巧みに探し当てて、それを享受しているということです。
本書のp58によれば、勝間氏は平成教育委員会という番組に解答者として出演し、平凡な成績に終わったそうです。しかし、パソコンとiPhon を持ち込めば、ぶっちぎりで1位を取る自信があるそうです。つまり、勝間氏は、良く情報提供を行うので、良く情報収集ができるのです。
一番の問題は、生きがいの問題です。何かを発表することは、生きがいの重要な部分であることがあります。私は体が動かなくなって施設へ入所しなくてはならなくなったときに、インターネットを使えない施設への入所は考えられません。