交渉に関する本数冊によれば、人が対人関係を失敗する原因は、次のようであるとのことです。

(1)相手の行動の意図を邪推すること
相手の行動の意図を簡単に邪推するのですが、それが誤っているのです。

社会心理学の一つに帰属研究というのがあります。相手の行動に対して、その相手の意図を正しく認識できたかどうかを調べる研究です。その結論は、人には非常に低い能力しか無いということです。
帰属理論原因帰属理論

相手の行動の意図を、悪く受け取るということです。相手の行動の意図は、容易には分からないのですが、「相手のことは、分からない」とせずに、勝手に想像して判断してしまうのです。そして、相手は最低の人間として評価されてしまうのです。コミュニケーションが悪いのでこのように判断するわけですが、この判断は、さらに関係を疎遠にしてコミュニケーションを悪化させます。一つの悪循環です。

また、逆に言うなら、自分の行動の意図を相手に充分に伝えておかないと、最低の動機であると即断されてしまう恐れがあるということです。

(2)自分の行動は甘く、相手の行動は厳しく判断すること
自分がその行動を行った事情について、自分は良く知っています。例えば、自分が遅刻した場合、その「止むを得ない事情」を自分はよく知っているわけです。電車が動かなかったのかもしれません。

さらに、自分の行動については、共感的に判断します。自分の痛みはよく分かります。懸命に努力したが、体調が悪かったので仕方が無いと判断するようなことです。

ところが、相手が遅刻した場合は、「私を軽く見ているからだ」とか、「社会人としての基本的な常識に欠ける」などと判断するわけです。何か事情があるかもしれないのに、それを知らないので、簡単に相手の全責任にしてしまうのです。「分からないということが分からない」のです。

我々は、自分の器の大きさで、相手の器の大きさを判断します。それ以上のことは分からないからです。

(3)戦いでは何か攻撃されると仕返しをすること
ゲームの理論において、最も高得点を得るのは「仕返し戦略」です。繰り返してゲームが行われる場合には、1回目はまず友好的な態度に出て、後は相手の出方に対して仕返しをする戦術が、最も高得点を得ます。相手が友好的ならこちらも友好的に対応し、相手が敵対的ならこちらも敵対するという戦略です。この傾向は、私たちの遺伝子に強く焼きついているはずです。
ゲームの理論ゲームの理論と進化論ゲームの理論と経済

しかし、この戦略には欠点があります。両者共にこの戦略を採用する場合、なにかの拍子に敵対的な対応が始まると、報復は報復を呼んで、攻撃が永久に続きます。

相互に「相手が悪い」と思って攻撃し合うような状況を放置すると、それは永久に続くので、途中で報復を止めないといけないということです。不毛な報復の応酬を、意識的に止めることが必要です。

(4)戦いになれば、何としても勝とうとすること
戦いになった場合に、その戦いに何としても勝とうとする傾向があります。これも遺伝子に強く焼きついていることでしょう。

通常、勝者には栄誉が与えられます。勝者は、「すばらしい」と言われ、敗者は、「怠け者」、「身の程知らず」などと言われます。勝者は高揚し、敗者は落ち込みます。

二つの会社から同じような製品が売られている場合、わずかでも性能の良いほうがシェアを伸ばします。わずかな差でも結果には重大な差が出ます。わずかでも勝ったほうが、利益の全てを受け取るのです。ささいな事が元で、大きな喧嘩になるのは、そういう理由からです。

我々は、遺伝子の奴隷ではなく、頭を持った人間です。この傾向を自覚すれば、何かそれと違うことができるはずです。

ではどうすれば良いのか
敵対を協調に変えることです。そのための技術が下の本には書かれています。

<参考にした「交渉」の本>
・ハーバード流NOと言わせない交渉術
・言いにくいことをうまく伝える会話術
・交渉力
・言いたいことがなぜ言えないのか
・You Can Negotiate Anything

これらの本は、いずれも、コミュニケーションを適切に行って Win-Win の関係を樹立することを目指しています。